第7話 ハリネズミのジレンマ
それから彼女とは、何箇所かのお店を回った。
スイーツやコスメ、レディース用の服やであったり、今まで自分が見てきた世界とは少し違いとても楽しかった。
「なんだか少し喉が乾いちゃったな」
確かに今日はずっと歩いたり、話したりばっかりでずっと動きっぱなしだった。
「じゃあ俺が何か買ってくるよ」
「そんな悪いよ」
「結局食べ物ほとんど奢ってもらったし、これくらいはかっこつけさせろ」
なんだかんだ言って彼女は今日ほとんどの支払いをしてくれていた
そのために出そうとするのだが、後輩に怒られる。先輩は格好悪いからと言ってなかなか出させてもらえなかった
「じゃあそれだけお願いしようかな」
「任せろ」
自販機はすぐそこに見えていたので、彼女は待たせ自販機に買いに行く。
最近はスマートフォンを渡すだけですぐに支払いができてしまうので便利だ。
彼女の分のお茶を買い、自分の分はコーヒーを買う。今日1日甘いものばかりで少し苦いのが欲しかった。
彼女の前でカッコつけたくてブラックコーヒーを選ぶ。
これあるあるだあよね?俺だけじゃないよね?
彼女の元に戻ろうとすると、チャラい遊びなれていそうな2人の男と話をしている。
片方は金髪でピアスをつけていてラフな服装で、もう一人は今風のセンター分けに丸眼鏡でゆったりとした服装をしていた。
知り合いだろうか。ただその割には、彼女の笑顔が引き攣っていて、男性たちから少し距離を取ろうとしているように見える。
ナンパだろうか。そう思い小走りで急いで彼女の元に戻る。
「僕を見つけると見つけるとじゃあ彼氏が戻ってきたので、私たちは行きますね」
そう言って、貼り付けたような笑顔を浮かべ2人のから離れようとする。
「おいおいそんな冴えないのより、俺らといたほうが楽しいって」
「一緒に行こう?」
「もっと面白くて刺激的なことを俺らが教えてあげるよ」
あざ笑うような笑みを浮かべる感じの悪い2人にムッとするが、僕は大して喧嘩も強くないし口が立つわけでもない。
「僕たちこの後予定あるんで」
強引に会話を切り上げてこの場を去ろうとし、近づいてくる彼女と一緒に歩き出そうとしたが彼女は予想に反して振り2人に歩みを進める。
「あら、そうなのそれは楽しそうね」
声のトーンをスッ落とす。
「俺らが忘れられない刺激的な思い出を作ってあげるよ」
「行きつけのクラブがあるんだ。そこで酒飲んでパーティしちゃおうぜ」
「忘れられない夜にしてやるよ」
「あらいいわね。ちなみにどこのお店?」
彼女は、男性たち2人の元にドントン近づき、1歩2歩手を伸ばせば触れれるような距離まで詰めていく。
男性たちも少し驚いたようで少したじろぎながら答える。
「港区にある クラウン東京って店だよ」
「ふーん」
「いい趣味してるじゃん、ただね?」
そう言うと男2人の耳元まで近づき、小さくドスの聞いた声でなにかを呟いた。
「火遊びする相手は選びな」
「このままアイツに舐めた真似するなら、お前らのナニを使い物にならないようにしてやるよ」
すっと2人から離れるとにこやかな笑みを浮かべ、軽い足取りで一歩距離を取る。
「そういうことで、ナンパもほどほどにね」
「じゃあ行こっか」
振り返って、笑顔を浮かべる彼女はまるで何事も、無かったかのようにいつもの明るくて元気な様子に戻っていた。
「え、ああ行こうか」
予想外の行動に生返事を返す。
何か呟いたのかは聞こえなかったし後ろ姿しか見えなかったけど、さっきの椿はまるで知らない別の女性のように見えたな。
男性2人組は𠮟られた子供のように、さっきまでの威勢とは打って変わって少しオドオドしていた。
「さっきは2人になんて言ったんだ?」
「近くに交番あるからあんまりしつこいと大変なことになるよって」
「確かにあいつらもそこまで言われたら絡んで来ないか」
「にしても急に近づいて行くからびっくりしたよ」
「ふふ、ホントにあの二人についていくかと思って妬いちゃった?」
「妬いてねえよ!」
小悪魔のような笑みを浮かべる彼女に顔を赤くして答える。
「あんなのは慣れっこだしまだ可愛い方かな」
「あれが可愛い方か」
「うん、まだまだひよっこ」
いったいひどい奴らがどんなレベルなのかは気になったが、これ以上この話題をひきづるのはデートではあまり良くない話題だろうし、そして何より自分で何も言い返すことが出来ず椿に助けて貰った自分が恥ずかしくて仕方なかった。
気持ちを切り替えるようにして話題を振る。
「次どこ行こうか」
「んーそうだね…」
そういえば前日ネットてして見てやってみたいことがあった。
「観覧車とかどうかな」
ドラマに映画、アニメに漫画など様々なデートシーンで有名な観覧車デートであまりにもデートと言えばといった感じでベタ中のベタだが一度やってみたかった。
「いいね、早速行こっか」
「つく頃にはちょうど夜景がきれいな時間だね」
そう言う彼女の浮かべる笑みは、夜の街すらも飲み込んでしまいそうな魅力的で魅惑的だった。
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