第6話 個別面談

 私こと、「純喫茶ボタニカル」のオーナー、サボテンのサボンは悩んでいた。これまでの下りで紹介された通り、私は喫茶店を経営しているのだが、最近、クマのバイトの子たちの人間関係が微妙で、仕事に支障をきたすのではないかと心配している。クマの事はクマに相談した方がいいだろうと思い、常連客の熊子ゆうこさんに相談したところ、熊子さんの家族のクマが来てくれて相談に乗ってくれた。


 結局、まずはオーナーで責任者である私が話を聞いてみるべきだ、と言う熊子さんの正論に従って一人一人相談に乗ってみようと思っている。しかし、いきなりこんな話を切り出すのも難しく、どう切り出したものやら考えてしまった。


 サボテンらしく太陽を浴びたように明るい性格で、その割にトゲが無いと言われる私だが、やはり悩むときは悩む。だが、一人で悩んでいても仕方がないので、例の経営コンサルのクロイさんに電話してみることにした。


「もしもし、『純喫茶ボタニカル』のサボンですが、クロイさんのお電話でよろしいでしょうか?」

「はい、ああ、クロイだぜ!」

「どうもいつもお世話になります」

「そんなかしこまらなくても大丈夫だぜ!」

「ありがとうございます!いや、とりあえずバイトくんたちに話を聞いてみる腹は決まったんですが、どう切り出していいものやら悩んでいて……」

「そうか、どうするかな。そうだ、なんならおれをダシに使えばいいんじゃねえか?」

「どういうことでしょう?」

「いや、経営改善のためにコンサルを入れることになったんだが、そのクマに現場のバイトから一人一人話を聞けと言われたって言えばいいんじゃねえかな」

「それは不自然さがなくていいですね!ありがとうございます!」

「まあ、このくらいは全然大丈夫だぜ、またな!」

「ありがとうございます」


 クロイさんは面倒見がいいし、なかなか頼りになる。これならバイトの人間関係だけじゃなくて、本格的にこの店の経営改善も依頼しようかなと私は思い始めた。


 ともあれ、まずはとっかかりのバイト問題を解決しなければならないので、わたしはバイトたちに話をする事にした。


「おーい、みんな、ちょっと集まってくれるかい?」

「はい!」

「うぃっす!」

「……はい」


 察しの良い読者諸氏にはお判りと思うが、丁寧で元気な返事がシータさん、若者言葉なのがベータくん、若干暗いのがチータくんである。


「実は、うちの店ももう少し売り上げを伸ばしたいなと思って、経営コンサルの方に入っていただくことにしたんです」

「怪しい奴じゃねーの?」

「いや、そんなことはないよ。常連の熊子さんの家族で、異世界なんかで幾つか経営を成功させてるクマ集団がいて、そのクマたちに依頼することにしたんだ!」

「すごいんですね!」

「…………」


「で、いろいろとやっていく積りなんだけど、うちで夕方以降、主力で働いてくれているのは君たちだから、個別にいろいろと意見を聞きたいと思ってるんだ。なので、できれば都合のいい日にいつもより1時間くらい前に出勤してもらって、そこでお話を聞かせてほしいんだ」

「わかりました!」

「うい~っす!」

「……はい」


 とりあえず、来週あたりからシフトと合わせて日程を調整するんで、申し訳ないけど宜しくね。あ、もちろん1時間分は時給が出るからね!」


 そんなこんなで、一応は個別に話を聞けることになった。さて、ここからどうするか……だ。


「もしもし、クロイさんですか?」

「おう!サボンさんか!」

「お陰様で、教えていただいた通りにして、なんとか一人一人、個別に面接するまでこぎつけました!」

「良かったじゃねえか!」

「で……、どうやって面接を勧めるか、相談させて頂こうと思いまして」

「そうだな、まずはバイトたちの感想をきいて、あとは適当に改善点みたいなのを上げてもらって、その後で『そういえば、人間関係とかはどう?』とか言う感じで切り込んでいくのがいいんじゃねぇかな」

「わかりました!ありがとうございます!」

「じゃあ、頑張れよ!」


 とりあえず、個別面談の方針はきまった。どうもこういうのが苦手で緊張するが、持ち前の太陽をたっぷりあびたような明るさでなんとか頑張っていこうと決意し、夜も遅くなり、光合成もできなくなったので寝ることにした。


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