第一章 魔術師は塔に降り立つ FAIR,_Occasionally_GIRL. 1
一月二〇日から二月十八日生まれの
「……いや、こんなモンだってなァ分かってんだけど、分かってんだけどさあ」
七月二〇日、夏休み初日。
エアコンが壊れてうだるような熱気が支配する『学園都市』の学生寮の一室で上条
天気予報みたいに流れるテレビの星占いなんてこんなモンだとは思うが、ここまで来るともはや笑いも起こらない。
「……分かってんだよ。分かってんだけど独り言にしねーと消化できねーんだよう」
占いは必ず外れ、おまじないは成功した
結論を言うと、上条当麻は不幸だった。
なんていうか、もうギャグとして消化しても大丈夫なレベルの。
とはいえ、いつまでもウダウダしているつもりもない。
上条は運に頼らない。それはつまり行動力が高いという事を意味していた。
「……さて、っと。目下の問題はカードと冷蔵庫か」
バリボリと頭をかきながら上条は部屋を見回す。カードは通帳さえあれば再発行は難しくない。問題は冷蔵庫──というか朝ご飯だった。夏休みの補習、なんて言ってもどうせ能力開発の補習なんて
学校行く途中にコンビニ寄るかー、と上条はパジャマ代わりのTシャツを脱いで夏服に着替える。バカ学生の例に
「いーい天気だし、
思わずそんな事を
と。七階のベランダ、そこから二メートルもない先に隣のビル壁が迫っていた。
「空はこんなに青いのにお先は真っ暗♪」
激しく
ツッコミを入れてくれる人がいない孤独感に
「……つか、いきなり夕立とか降ったりしねーだろーな」
そこはかとなく嫌な予感を口に出しつつ、上条は開いた網戸からベランダに向かい、
と、すでに白い布団が干してあるのが見えた。
「?」
学生寮と言っても造りはまんまワンルームマンションなので、
なので、よくよく見れば布団なんて干してなかった。
干してあったのは白い服を着た女の子だった。
「はぁ!?」
両手で抱えていた布団がばさりと落ちた。
そして服装は、
「うわ、本物のシスターさんだ……、いや妹ではなく」
修道服? とでも言うのか。教会のシスターが着てそうなアレだ。足首まである長いワンピースに見えなくもない服に、頭には帽子とはちょっと違う、一枚布のフード。ただし、一般の修道服が『漆黒』であるのに対し、女の子のそれは『純白』だった。おそらくシルクじゃないだろうか? さらに衣服の要所要所には
ピクン、と女の子の
だらりと下がった首が、ゆらりと上がる。絹糸のような銀髪がサラリと左右に別れ、上条の方を向いた少女の顔が長い長い髪の
(うわっうわっ……ッ!)
女の子は割と
だが、上条がうろたえてるのはそんな事ではない。
そもそも『外国人』だ。英語教師に『お前は一生
「ォ、───────」
女の子の、可愛らしいけどちょっと乾いた唇がゆっくりと動いた。
思わず
「おなかへった」
「…………………………………………………………………………………………………………」
一瞬。上条は自分があまりにバカだから外国語を勝手に日本語に置き換えたのかと思った。歌詞を知らない歌にトンデモない歌詞をつけてしまうバカ小学生のごとく。
「おなかへった」
「……、」
「おなかへった」
「…………、」
「おなかへった、って言ってるんだよ?」
いつまでも固まっている上条に、ちょっぴりムッとしたように銀髪の少女は言った。
もうダメだ。ダメに決まってる。こんなの、こんなのは日本語以外に聞こえない。
「ぁぅ、えっと?」ベランダに干してある女の子を眺めながら、「ナニ? ひょっとして、アナタはこの状況で自分は行き倒れですとかおっしゃりやがるつもりでせう?」
「倒れ死に、とも言う」
「……」超日本語ぺらぺら少女だった。
「おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると
上条は足元でぐにゅぐにゅ言ってる、ラップでくるんだすっぱそうなヤキソバパンを見る。
コレが一体何なのかは分からないが、何にしてもお
「ありがとう、そしていただきます」
がっつりラップごと
こうして、今日も上条の一日は悲鳴と共に不幸から始まっていく。
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