【#11】淫魔の魔法
(うわわわ!? どうしよ!? どうしよ!?)
と、とにかく本人に聞いてみない事にはどうしようもない。
悪魔の姿になってしまったティーシャへ、俺は震えた声で質問する。
「ティーシャ!? その姿は一体どういうコトですか!?」
「そ、それは……!!」
小悪魔の姿をしたティーシャはそっと目を背けたが、急に俺の身体から離れてこんな事を言ってくる。
「ごめん!! アヤカちゃん!! 今見たことは全部忘れて!! ──【ラヴ・ハート】!!」
「!?」
ティーシャの両手で作った
(ティーシャが俺に魔法を……!?)
しかも、突然の不意打ちのせいで回避するヒマすら与えられなかった。つまり、俺はこの魔法に直撃するしかない。
そのはずだった。
キィン!!
「「!?」」
空中で鳴り響く斬撃音。
ふと右手を見ると、俺の手にはいつのまにか妖刀が握られている。無意識に身体が動いてしまったのだろう。
さらに妖刀から伝わる何かを斬った感覚。それは今まで斬ったことのないもの──つまり、"魔法"だ。
どうやら妖刀はその斬撃により、撃たれた魔法を跳ね返してしまったらしい。
そして、向こうを見ると──。
「……ティーシャ!?」
ティーシャが
「大丈夫ですか!? しっかり!?」
「ん……んん……」
良かった!! とりあえず意識はある!!
そんな喜びも
「ふふふ♡ アヤカちゃ~~ん♡」
「??」
急にニヤリと微笑むティーシャ。なんだか俺に
(……な、なんだ? 明らかにおかしい……!?)
試しに俺は冗談っぽく聞いてみる。
「あー。もしかして、まだ酔ってるんですか? そりゃわたしを魔法で攻撃してくるなんて、普段のティーシャじゃありえないですからね!! ──さぁ、このままじゃ
「うん、わかった~♡」
そう言って、ティーシャは素直にベッドの方へと歩き出す。
……ふぅ、流石に酔っ払いは手がかかるな。(俺が言うな、という話だが)
そうやって肩の荷が下りた気分になっていたのだが。
「え?」
ティーシャが前から俺の手を握ってきた。嫌な予感がする中、俺は恐る恐る聞き返した。
「アヤカちゃん、一緒に行こう♡?」
「どこにっ!?」
背中に冷や汗を流しながら聞き返す俺。
心臓の鼓動がドキドキと頭の中で死ぬほど鳴り響く中、ティーシャは俺の片腕を引っ張りながら言う。
「もちろん”ベッド”だよ〜♡ 今夜はあたしと一緒に寝るんだよぉぉ〜〜♡?」
「はいぃぃっ!?」
やっぱおかしい……絶対におかしい!!
俺がパニックで固まっている間、ティーシャは快楽に
「はやくはやくぅ~~♡ 待ちきれないよぉ~~♡♡ 一緒のお布団に入ってぇ……いっぱい楽しいコトしよ♡?」
「ま、待ってください!? ダメですよ!? 知ってるでしょう!? わたし、元は男なんですよ!? ねぇ!?」
「ダ~メ♡ 待てなぁ~~い♡」
そして、彼女は俺の顔にグッと距離を近づけて──。
「……好き♡」
チュッ。ほっぺたにキスしてきた。そして、キスした後の小悪魔めいた笑み。
「え……?」
え? え? え? ……えぇえええええええええええええ!?!?!?!?
(ティーシャが……俺にキスを!? やばいやばいやばいやばい!?!? どうなってんだよ、これ!?!?!?)
……今ので確信した!! これは"酔っている"のレベル超えている!! とにかく止めなければ!!
「ティーシャ!? これ以上はファンとしてライン超えられないですよ~~~~~!?!?!?」
「ふふ♡ 別にアヤカちゃんとなら超えてもいいよ~~、その”ライン”♡? ほら、早く一緒に寝るのぉ〜〜♡」
「うわーーーーー!?!? 早く元に戻ってくださいぃぃぃ!?!?」
そうしてティーシャの誘惑にしばらく耐えていると、彼女は突然糸が切れたように停止した。そして──。
「……ハッ!?」
いつもの表情に戻った!! よ、よかった……!! これでまともに話せる!!
やがて、ティーシャは自分の両手を見ながらパニックになったように呟く。
「今、しばらく意識がなかった……!! もしかしてあたしが魅了されたってコト!? 【ラヴ・ハート】が跳ね返されて……!?」
「???」
魅了? さっきのは魅了状態だったのか。確か魅了魔法によって、術者に操られる状態異常だよな。
だが、おかしい。魅了魔法なんて普通の魔法使いは使えない。いくらティーシャがSランクの魔法使いでも、純粋な
部屋内に息苦しい緊張感がはしる中、ティーシャが俺の目をまっすぐ見つめて言ってくる。
「アヤカちゃん……」
「は、はい!?」
「ごめんなさぁ~~~~~~~~~~~~~~い!!!!!」
「えぇ!?」
ティーシャが泣きながら土下座してきた!? あまりにも意外過ぎる……!!
「まずは魅了魔法をかけようとした事を謝罪させて!! ……正直に言うと、アヤカちゃんを魅了して”酔って見た幻覚”って事にしようとしたの~~!! うわ〜〜〜、ごめんなさい〜〜〜〜!!」
彼女のそんな姿が見てられなくて、俺は慌てて身を低くして必死に言う。
「ティーシャ、頭を上げてくださーーい!? わたしは全然気にしてませんから〜〜!?」
そのままティーシャはしばらく泣いていたが、ようやく落ち着いてきたらしい。
俺はそのタイミングを狙って、話を振ってみる。これは確かめねばならない。ティーシャ本人の口から。
「ティーシャ、あなたは一体何者なんですか?」
「……そうだね。こうなった以上、アヤカちゃんには言っておこうか」
すると、ティーシャは背中の黒い翼を大きく広げ、胸の上に右手を乗せながら告白してくる。
「あたし、本当は”ハーフサキュバス”なの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます