海を見る。
辛いことがあったとき、海を見に行きたくなったり、見に行くと気持ちが楽になったり。そんな経験はあるでしょうか。
これには科学的な根拠があることでしょう。
それとは別に、自然という人間には大きすぎるものを前にしたときの恐怖感。
畏怖を感じることも影響しているのだと思います。
そのこわさから、人は繋がりを求めてしまうし、自然の雄大さを知り、自分の悩みが小さなものだと感じるのではないでしょうか。
楽しみにしていた君とのお出かけを豪雨によって中止に追い込まれた私。悲しみに暮れているとチャイムが鳴る。乱れた髪も泣き顔も君じゃないのならどうだっていい。玄関のドアを開けると家から慌てて飛び出してきたであろう姿の君が……。
本作は3つの場面により構成されています。その場面を追うことで「私」と「君」の関係性を知ることになります。
私の一人称視点で語られる、感情の描写が魅力的でした。読んでいて、一緒に感情を共有することができる、自然で直球な言葉の数々が物語への没入感を高めているのだと思います。
是非、「私」という等身大の主人公が放つ感情を受け取ってみて下さい。
素晴らしい作品をありがとうございました。