夢の中の恋が、現実を動かす

眠るたびに会える恋人。
けれどそれは、目覚めと同時にすべて消えてしまう。

十年にわたり、夢の中でだけ続いた恋。
日々の現実は孤独で、空虚で、
ただ『彼女に再び会うため』に夜を待つだけの生活。

けれどその『夢の恋』にも、別れのときが近づいていた。

そして、もう一人の語り手が現れる。
その女性は『夢の中で誰かの姉だった』と語る。

夢の中の恋人たちを見守りながら、
彼らの悲しい結末を、止めたくて、伝えたくて、
やがて自ら『誰かの夢の中』へと歩み出していく。

夢は現実に勝てない? 本当にそうだろうか?

夢の中で育まれた愛、
失ってもなお心に残り続ける誰か、
現実で再び巡り会う可能性。

そんなはずはないと思いながら、
それでも『信じたくなる』物語がここにある。

夢を見たすべての人に贈る、
喪失と再会を巡る、静かで切実な『記憶の物語』。

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