夢を見ていた

『話がある』。

そう伝えてから学校に来るまで

不安で不安でしかたがなくて

何度か短い睡眠を挟んだ。

夢は神社に行った日を最後に

見ることはなくなっていた。

あの場所がゴールだったらしい。

終わったは終わったが、

私が選択した事実は残ったままだった。


全日制の授業が終わる時間に合わせて

早め早めに登校する。

どこで待っていようかと迷っていると、

首をあちらこちらに振って

挙動不審な私を見つけた彼女が

手をあげて走り寄ってくれた。


湊「おっはよー!」


詩柚「おはよお。」


湊「ごめんよー早く来てもらっちゃって。」


詩柚「ううん。この後部活でしょ?」


湊「そう!でも少しぐらい遅れちゃっても平気だよん。」


詩柚「できるだけ長くならないようにするから。」


湊「うえん。お気遣いありがとねん。」


湊ちゃんは普段と変わらず

明るい声の調子で話しかけてくれた。

けれど、些か緊張しているように見えたのは

私が事前に連絡していたせいか、

それともまた別の理由なのだろうか。


湊ちゃんから見て私は

不安定で、多くはわからないような

人だったのかもしれないけれど、

私から見ても湊ちゃんは

もうわからない人間になってしまった。

お互い、離れた時間を持つことが多くなって

引っ越して社会が広がってしまって。

もう昔のようにはいれない。

けれど、この3年間で

一緒にいなくとも湊ちゃんは

やっていけるってことがわかった。

きちんと生きていけるし、

それに、隠し事が誰かから

話されている様子もない。

なら、私の手の中に収めておく理由がない。

守るなんて言葉で

盾を作る必要もない。


そんな踏み込んだ話をしようと思い、

できるだけ人がいない場所へと伝えると

校舎裏の自転車置き場から

少し離れた場所へ向かってくれた。

日陰だから冷えるけれど、

手をセーターの袖へと縮める。


湊ちゃんが「ここでいいかな!」と振り返る。

伸びた髪が、背が

彼女を大人のように仕立て上げていた。

イチョウが散る。

そんな中で、彼女は安心させるように

明るい笑顔を浮かべた。


湊「それで、お話って何かな。急だったから大切なことだろうなとは思って心構えはしてきたよん!」


詩柚「…ありがとう。」


湊「いやいや、まだ話聞いてないからね!?」


詩柚「…。」


湊「…まー、こういうテンション感じゃあないよねー。ゆうちゃんの顔見てたらなんとなくわかるよ。」


詩柚「まず、この前のお泊まり会の時、傷つけちゃってごめんなさい。」


湊「ううん。前も言ったけど、そんなふうに感じてないから大丈夫だよ!」


詩柚「…それと、今みたいな…優しい言葉をたくさんありがとう。」


湊「いーえ!少しでも楽になったならいいな。」


詩柚「今日もだし、先週も…この十何年間、ずっとずっと隣にいて、欲しい言葉をくれてありがとう。」


湊「…ゆうちゃん?」


詩柚「…あと、話してなかったことがあって。」


湊「…?」


詩柚「湊ちゃんの家の合鍵、無くしちゃって。…本当にごめんなさい。」


湊「あら、そーだったの!無くしたのは家の中…?」


詩柚「多分そう。家に帰ってから無くしてる。でも、もう出てこないと思う。」


湊「一緒に探すよ?」


詩柚「ううん。…鍵は変える。その費用はもちろん私が負担する。でも、そこまでにしよう。」


湊「…ねぇ、話が見えてこないよ……?」


詩柚「……。」


ありがとうをたくさん伝えたあたりから

彼女の雲行きが怪しかった。

それもそうだろう。

こんな言葉を並べるなんて、

まるで死ぬ前の人の言葉だ。

この人生しょうもなかったけど

悔いがなかったと信じたい時の言葉に

そっくりなのだ。


私にとってはそのくらい大きくて、

ひとつの終わりなんだ。


息を吸う喉が震えた。

風も今だけは

気をつかうようにぴたりと止んだ。

声が、通ってしまった。


詩柚「…別れよう。」


湊「…っ!」


詩柚「別れて、それで…それで、少し離れたところにいようよ。」


これまでのいつとも違って

湊ちゃんの目を見続けていた。

目を合わせ続けている。

やっと、自信を持って

目を合わせられるような感覚に陥る。

けれど、湊ちゃんは言葉を失い、

目を丸くして束の間固まっていた。

は、と短く息が溢れる。

ただの呼吸の音。

次に、やっと言葉が流れてくれた。


湊「……ご飯はどうするの。1人じゃ…買い物も危ないよ。お料理だって、怪我しちゃうかも、だし。」


詩柚「ネットショップを頼ったり、直前で眠ってから近場のスーパーに行ったり…何とかするよ。」


湊「学校は。学校で話しかけるのは」


詩柚「それも…私からはしない。部活も見に行かない。」


湊「…話に行くのも……駄目…なの…?」


詩柚「湊ちゃんとは…そう。」


湊「…そんなの、何で急に……。少しくらい…たまにでも、遊びに行こうよ。家の中でも…映画みたり…一緒に…。」


詩柚「ずっと家でもいいよお。元々インドアだし。」


湊「そういう話じゃないよ。…それに、ずっとお家でも飽きちゃうよ。」


詩柚「飽きないようにするよお。将来のため、在宅のお仕事探してもいいしね。」


湊「……っ。」


どうして。

何で、急にこんなこと。

突き放すようなことを。

答えてよ、ねぇ。


そう言いたげに揺れる瞳にさせたのは

私のせいだと思うと心苦しい。

けど、これで湊ちゃんは

普通になれるのだろう。

私から離れて、普通に恋愛して。

留年をさせてしまうけれど、

勉強して、受験して。

湊ちゃんならきっと

そうするだろうって思うから。


全て私のエゴだった。

こうなって欲しいだらけ。

それから解き放たれるというのに、

湊ちゃんは今にも泣き出しそうな目で

らしくもなく欲しい声をあげる。


湊「…うち、何か悪いこと…した…?」


詩柚「ううん。何にも。」


湊「じゃあ何でっ。」


詩柚「私が湊ちゃんに悪いことばかりしたんだ。何年もの間ずっと。」


湊「……そんなこと…。」


詩柚「だから、離れるの。」


湊「…。」


詩柚「もっと長く…この冬が終わったとしてもあと10年くらいは守ってあげられればいいなと思ってた。でも、そんなの湊ちゃんからしてみればおせっかいでしかないよね。」


湊「…。」


湊ちゃんはふるふると

力なく首を振った。

それがあなたの優しさで、

嘘だというのもわかっている。


守る、という言葉を盾に、

湊ちゃんを追い回すようなことをしてきた。

けれど、ようやくわかった。

選択肢を通して、留年させることになって

本当にやっと。

遅すぎだよね。

傷つけてばかりで、馬鹿でごめんなさい。

もう私の勝手で傷つけないよう、

あなたからは離れることにするよ。

それが湊ちゃんが

本当の意味で自由になる1歩だと思うから。


詩柚「湊ちゃんの考えも自由も普通も…奪って無かったことにするなんて、本望じゃない。なのに、私はそうする方を選んでた。」


湊「何の話かわからないよ。この前のお泊まり会の時…話したじゃん。それでも伝わらなかったの。」


詩柚「伝わったよ。でも、みんな普通じゃなくても、多数派、少数派はあると思うんだ。」


湊「うちとゆうちゃん、それでいいって話したじゃん。私たち2人の話なら、他の人なんてどうでもいいでしょ…!」


詩柚「でも、もう決めたんだ。」


湊「…本当に、本当にゆうちゃんはそうしたいの?うちのことをちゃんと考えた上で、そう決めたの?」


こんなにもあなたが

止めようとしてくれるなんて思わなかった。

けれど、これも今となっては

お泊まり会の夜や

私たちが付き合い始めた時と同じ、

言わせてしまっている言葉にしか

聞こえなくなってしまった。


私はあなたをいつからか

信用できなくなってしまったみたい。

だから、監視していたのかもね。

信用するために手放すの。

信用するために離れることを

どうにかわかって欲しい。


湊ちゃんがいつからか

自分のスカートを握りしめていた手に触れる。

力が抜け、はっとした顔をした。

その手をとって、

握手をするように勝手に小指を結ぶ。


詩柚「…そうだよ。」


湊「…っ!」


詩柚「ごめんね。」


彼女の手に力が入る。

まるで逃がさないようにしているみたい。

これまで縛るためだった小指だけれど、

これからはちゃんと、

湊ちゃんの未来が守られることを祈って。


詩柚「今までずっと…ごめんなさい。」


湊「……やだって言っても…。」


詩柚「…。」


小指を離そうと力を緩める。

昔は結んだままで

離すのが嫌で家に着くまで繋いだ小指を。

けれど、咄嗟に湊ちゃんが

ぎゅうと強く小指を握った。


湊「うちは納得してないよ。」


詩柚「…。」


湊「どうしていつもそうなの。相談もしないで、ぜーんぶ勝手に決めて、1人でどっか行くの。」


詩柚「…。」


湊「うちは…うちは、そんなに頼りない?」


詩柚「違うよ。頼りなかったなら、ご飯も何もお願いしてない。」


湊「…っ……重要な決断はいつも1人でするよね。そのことを話してるんだ。」


詩柚「なら、湊ちゃんはどうなの。」


湊「うちは」


詩柚「本当に悩んでたこと、話してくれた?」


湊「…!」


詩柚「一昨年留年する時の話とか、今年度何かに巻き込まれてたなら、その話とか。」


湊「……それは…。」


詩柚「心配をかけたくなかったとか、いろいろあるのかもしれない。でもね。」


反対の手を彼女の手に重ね、

今度こそ小指をそっと離した。


詩柚「…お互い、話せないことや話さないことだらけの関係になっちゃったんだ。昔のままじゃなくなったの。」


湊「…。」


詩柚「私も、湊ちゃんも変わった。」


湊「…っ。」


詩柚「大好きだよ。これからもずっと、湊ちゃんが幸せに過ごすことを願ってる。」


湊「…。」


この願いだけはずっと変わらないから。

湊ちゃんは歯を食いしばり、

酷く俯いてから「うん」と

小石を蹴るほどの小さな声を落とした。





***





今日、期末テストが返却された。

テスト勉強はきちんとした。

2週間前からは

さらにきっちり本腰を入れて勉強した。

全教科最低でも

70点は超えるようにと思って頑張った。

当日もちゃんと手応えがあった。

これなら一部教科は

80、90点以上も狙えるだろうと

思うほどには。

けれど。


湊「…。」


部活から帰ってきて

自分の学校用のリュックを開き、

戻されたテスト用紙を眺める。

点数は10点台。

ものによってはそれ以下で。

全部埋めたはずの解答用紙は

空白が目立つものになっている。

筆跡は確かにうちのものらしいし

消しゴムで消したような跡もない。

まっさらの紙に

誰かがうちの真似をして

解答を仕上げたかのよう。


湊「……あはは。」


テストを食卓の上に置き、

それを目の前に

深く椅子に腰掛けた。

背もたれに頭を傾げ天井を仰ぐ。

早く電気つけなきゃ

真っ暗なままなのに、

どうしても動く気持ちになれなかった。


1度、留年した。

高校1年生の頃留年して、

去年は何故か進級できた。

いや、進級できるのが普通なのだろう。


高校1年生の頃も、

ちゃんとテストを受けていた。

解答用紙は全部埋め、

自信もそれなりにあった。

成山は成績のいい人が多いから

流石に上位層は難しいだろうけど、

授業にはそれなりについていけてた。

なのに。

返却されたテストは空欄ばかり。

おかしいと思った。

明らかに誰かの手で

解答用紙を過ぎ去り変えられたと思って

先生にだって伝えた。

けれど、テストの日回収してから

先生以外触れていないと言われ、

次の小テストでも同じような

出来事が起こったから抗議すると、

職員室で対策を取ってくれることになった。

テストの解答用紙や成績表を閉まっている

大切な保管庫の部分に

簡易的だがカメラを設置してくれたらしい。

実際に確認したわけじゃないけれど、

もう大丈夫だと安心した。


が、次の定期テストで

また同じようなことが起こった。

カメラの映像を見ても

先生以外触れていないらしい。

なら先生が犯人だとも思ったが、

全教科ですり替えが起きているのは

明らかにおかしかった。

それ以上は「またこいつか」と

思われるのが嫌になって、

何も言わなくなった。

勉強はしたよ。

でも、テストは点数が与えられなかった。


湊「…。」


留年したんだ。

みんなにそう言った。

できるだけ明るく。

サボりすぎちゃった。

バイトと部活もしてたから。

遊びに行くのが楽しくて。

上京したてだから。

勉強してなくて。


みんなに適当に嘘をついた。

多くの人は1歩引いて、

本当に大丈夫かと、

普通は授業受けてれば留年しないよ、

マジでやばいよ、と

気まずそうな顔で言う。

けれど数人は笑い飛ばして

「やっちまったな」って

言ってくれる友達もいた。

その方が楽だった。

そっか。

やっちまったなだけなんだって。

別にここからもう1年

頑張れば大丈夫だしって。


でも。


湊「…大丈夫、なわけあるか。」


天井に向かって呟く。

思っている以上に不条理で

黒く蝕まれた声が漏れた。

真っ暗なせいでどこを見ているかわからない。

電球か、何もないところか。

首の裏が痛い。


また、1年頑張れば。

高校2年生ももう1度やれば

進級できるのかも知れない。

だって高校1年生の時

そうだったのだから。

大丈夫。

また、やればいいよ。

もう1年くらい。

だって大学に入ったらきっと浪人生もいて、

年齢なんて多少上の人もざらにいるし、

おじいちゃんやおばあちゃんだって

通ってたりもする。

社会人の人ももちろんいる。

何歳になってから入ったって良いじゃん。

高校生で同い年じゃない人は

限りなく少ないだろうけれど…

それでも、今頑張れば。

頑張れば。


…。

頑張れば、進級できる?

3年生になれる?

留年して、進級して。

その時私はもう20歳だよ?

大学、もし推薦で

行きたいところがあればどうするの。

絶対通してもらえないよ。

だってただの怠惰で

留年しているだけだから。

そういうことにされているから。

入試できたとして、

大学内では浮かなかったとしても

じゃあ就職は?

どうして留年したのっていわれたら?

同じスペックの人が並んでいたら、

2度も留年した人を採用する?


そもそも、2度で済む保証はある?

今後、高校3年生で

また人の手が加えられて留年したら?

高校3年の時じゃなくとも、

2回、3回留年したら?

卒業、できなかったら?

入試で同じようなことが起こったら?

大学には入れないとしたら

何故高校生を続ける必要があるの?

学校に通う意味はあるの?


学費もただじゃない。

学費は全てお母さんが

負担してくれていた。

卒業できるかもわからない中

賭けで通学し続けることに意味はあるの?


湊「…………。」


首を戻し、足元に転がった鞄から

スマホを取り出す。

アプリを開いて、

親に内緒で作った銀行口座の貯金を眺めた。

一応扶養内でぎりぎりまでやってきて

遊びにもたくさん行ったもので

思っている以上に少ない。


湊「……はぁ…。」


スマホを伏せる。

また、真っ暗になった。

机に体を伏せて、

腕を枕にうつぶせる。

手の先にテスト用紙が当たった。


前期はずっと成績は良かった。

ちゃんとテストも受けられた。

今回だけかもよ。

今回、たまたま、また…

こうなっちゃっただけで。

もしかしたら、次からは元通りで。

……。

元通り、で。

…。

もう、だって…後期に入って少ししたし…。

留年になることは。

……。

…。

後のテストが全て白紙に近いなら、

留年したっておかしくない。


……。

そ、っか。


湊「……もう、いいや。」


歯を食いしばる。

泣いてたってどうこうなる問題じゃない。

泣いてたって時間の無駄で、

感情の整理と命名する時間は

不安を不安で検索する時間でしかない。

意味がない。

すっきりなんてしない。

ただの無駄だよ。

それくらいなら、

動きっぱなしの方がマシだ。

何も考えずに済む。

何かをし続けていれば、

ずっと忙しい状態にしておけば

余念など入る余地もない。

学業、部活、バイト、

これまでもそうしてきた。


だから、そうすれば良い。


湊「…よし。」


それなら、やることは

驚くほどに明確で、

視界が開けていくような気分だった。

少なくとも前向きではない。

けれど、前に光がないのだ。

なら、後ろに下がって

光を探しにいくしかない。


顔を上げる。

触れたテストをらしくもなく

ぐしゃぐしゃにして

ゴミ箱に捨てた。


湊「退学しよう。」


高校の学費の納付時期を見てみると

期限が12月の中旬になっていた。

もう既に納付しているのなら

せめて年内までいても良いかも知れないが、

年度末までいる理由がない。

払い戻しが可能なのかも聞いてみよう。

年が変わると同時に

扶養も外れてしまおう。

掛け持ちして働き詰めにしよう。

保険も変わるだろうし、

知らないことばかりだけれど、

これ以上高校に留まる理由がない。

学校のみんなには黙っておこう。

どうせすぐにバレるけれど、

最後までいい高校生活にしたい。

笑って、話して、楽しい時間を過ごしたい。


実質中卒になってしまうけれど、

気になったり不便になったりしたら

高卒認定試験を受けよう。

それも理不尽で駄目になったら、

その時はもう。


湊「……帰るのもいいかもな。」


最近、お母さんに

帰ってこないかと言われた。

ゆうちゃんには…最大限

うちの伝えられる言葉を伝えたけれど

それでも拒絶されてしまった。

内緒で成山を受験して

一緒に上京してきて

怖かったし鬱陶しさを感じつ時もあったけど

それでも幼馴染で

うちのことを1番わかっていて

大切にしてくれている人。

きっと強引に話を聞いてと

扉を叩けば応じてくれる。

そう思っていた。

でも、今日の話ぶりを見るに

相当な覚悟をしているようで、

もう私とゆうちゃんは少なくとも数日は

まともに話し合えそうにない。

もう、強引に話をしなおそうと

言い始める気力もない。


あの田舎なら知り合いばかりだし

中卒だとしても変な目も少ない。

みんな顔見知りだし、いい人ではある。

働けるには働ける。

選択肢はたくさんある。


たくさん。

本当にたくさん。


湊「……っ。」


なんでもできるよ。

うちなら、大丈夫だよ。

周りの人と助け合って

生きることができる人間だから。

退学したって、帰郷したって大丈夫。

やっていけるよ。


…。





°°°°°





いろは「信じたいものを信じればいいのにねって言いたいんだよ。」


湊「信じたいものかぁ。」


いろは「うん。物事にはさ、昨日湊ちゃんが言ってたみたいに白と黒みたいな、2面からそれ以上の面があると思うんだよ。」


湊「だね。それはよくわかる。」


いろは「どこを見てどう信用してどの判断をするか。自分の信じたものでいいと思うんだ。」


湊「…。」


いろは「片方が悪くったってきっともう片方はよかったり、いつかはよかったって思える面はあるはずだから。」





°°°°°





湊「……いつか…よかったって…………。」


そう、思えるよ。

信じたいものを信じようよ。

信じられるよ。


……。

…。


信じ、たかったな。

自分のことも、周りのことも。


…。


…。

…。


でも、せめてみんなの前では

うんととびきり明るくいようね。

高田湊はそういう人間なんだから。










化け物のワルツ 終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

化け物のワルツ PROJECT:DATE 公式 @PROJECTDATE2021

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ