第561話 水中都市はロマンですます

「イカダも無用か?」


 オックスさんも〖飛行〗で飛んだ。

 私は首をふる。


「いえ、飛べない人が多いですし、物資もイカダに乗せて〖念動力〗で引っぱった方が楽かもです。あとで竹とか粘土とか大量の物資も纏めて運びたいですし。〖念動力〗だと竹とか八本ずつとかしか運べません」

「なるほど、重い物は船で運ぶほうがいいしな」

「そういえば、重い物を運ぶのは水運が楽って言いますね」

「だな――お。あっちに島が見えるぞ」


 上空のオックスさんが指を指した。


「じゃあ急ぎましょうか」


 私が飛行で飛ぼうとすると、英雄の二人がイカダに降りてきた。

 リイムが私に体を擦り付けてくる――まって、君は今トゲの着いた鎧を着てるんだよ。あとパイナップルも地味に痛い。


「コケー」(ママ、ほめて~)


 もちろん褒めてあげる、トゲが痛いけど。

 兜を外してあげて、頬をナデナデ。


「ほめろ~」


 リッカまで兜を脱いで、私に頭を持ってきた。


「え、偉い偉い」


 私が撫でると、リッカが芸術点の高いドヤ顔を向けてきた。

 やっぱりこのチビっ子、可愛いな。


「そうだ、リッカの印石が出たよ」

「まじで!?」

「うんうん」


 私が青いジルコンに星空が籠もったような印石を、リッカに渡す。


「取っといてくれてありがと!」


 リッカは、早速印石を砕く。


「おおお!? このスキルこういうのが欲しかった!」


 リッカが眼を見開いた。


「何だったの?」

「〖水操作〗!」

「え、リッカにピッタリじゃん!」

「作った水の単純な操作なら〖水作成〗でも出来たけど、これは相当複雑な操作ができそう――うおおお! 〖水作成〗〖水操作〗!」


 リッカがイカダの上に水球を作って、――また何する気だこの子!

 さっきのシードラゴンの形にして、上空へ昇らせる。

 そして、


「爆ぜろ!」


 リッカが拳を握ると、シードラゴンが上空で爆発して、辺りに大雨を降らせた。


「リッカ・・・あんたねえ」


 星ノ空さんが、髪を乾かしていたのに、またずぶ濡れになったのでご立腹。


「あははは! 私は強い!」


 星ノ空さんに、パコーンとチョップで殴られるリッカでした。


 その後、私は〖飛行〗で飛んで、イカダを〖念動力〗で引っ張ってとんぼ返り。

 みんなは〖飛行〗で先に島に行ってもらった。


 東の大陸に残ってる人のところへ戻って、飛べる人は飛んで貰って、飛べない人と物資はイカダで運んだ。


 日焼けした男性が、私達を羨ましそうに見上げた。


「うわ・・・飛ぶとか、アンタ等ズリィ・・・・」

「あ、でも。もうシードラゴンは居ませんから、みんなさんも安全に海峡を渡れますよ」

「マジで――!? それは助かるわ―――! 渡る人が来たら、クレイジーギークスがシードラゴン退治してくれたって言っとく!!」

「リッカが倒したって言ってあげてください。あの子、そういうの喜ぶんで」

「合点承知!」

「ではまたどこかでー」

「おう、攻略頑張ってくれー。俺達、シードラゴンがいたから渡れなかっただけで、既に船は作ってあるから、すぐに追いつくと思う」

「というか、渡るなら言ってくれたら運びますよ」

「む、それはありがたいが・・・準備が」

「しばらく私は物資を運ぶんで、準備ができたら教えて下さい」

「ありがてぇ、ありがてぇ」


 その後、コメントも盛り上がって「やっと海峡を渡れる」とか「お礼に、リッカちゃんになんか買ってあげてくれ」と、コメントが色とりどりになった。




 私がみんなに遅れて小さな島に上陸すると、もうみんなが拠点づくりを始めていた。でも、小屋とかを建てていない。


「お帰りなさい、スウさん」

「竹持ってきたけど、小屋建てないの?」

「それが、難破船が見つかったんですよ」

「難破船!?」

「そこを拠点にしようか。って話になりました」

「なるほどお」

「こっちです」


 私がアリスに手を引かれ小高い丘を越えると、本当に見えてきた難破船。

 現代の大型船みたいなのが、浅瀬に座礁している。


「あと、こっちに来てください」


 アリスが崖の上に私を導く。


「下を見てください」


 なんだろう? と思って海の中を見ると、ターコイズブルーの海の中に無数のビルが封じ込められていた。


「うわっ、都市が海の中に!」

「そうなんですよ! 凄いですよね」


 本当に凄い、壮大ですらある。


「あの都市から使えそうなもの見つけられるかな?」

「どうでしょう、探索するなら酸素ボンベが欲しいところですね」

「いや。袋とか用意して〖空気砲〗の発生弱めにして、口から袋に放てば、酸素が得られるよ」

「え―――!?」

「前にやったんだよね――手以外からも放てるから――」


 私は革袋を取り出して、〖空気砲〗を口で発生させてみる。

 うん、行ける。


「ほ、本当です! これなら体力が続く限り、幾らでも潜ってられますね!」

「うんうん。私が輝けとか使えば、暗いところも見えるかもだし」

「あとで一緒に探索しませんか?」

「『ゆこうゆこう!』」

「『そういう事になりました!』」

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