第540話

「やるぞー! 刀を使う側としては、すごく興味がある!」

「わたしもです! 自分が使う事になりそうですし、自分でも製作にも参加したいです!」

「私もです!」


 リッカとアリスとメープルちゃんが、激しく手を挙げた。

 しばらくして、いよいよ日が暮れてくると、


「おーやってんねぇ!」

「この辺り、もうすっごい熱いですね」


 上流の方から、リあンさんとコハクさんが来た。

 二人共髪の毛を拭いている。色っぺぇ。


「ここなら洗濯物がすぐに乾きそうですね」


 言いながらコハクさんが水車を作った余りの麻ロープを木に結びつけて、そこに洗濯物を干していく。


「湿気とかで鋼の品質が変わったら嫌なんで、遠目にしときますね」

「おう、頼む」


 リあンさんが草を持ってオックスさんの方へ行く。


「あと、コハクが豆を見つけて持ってきたよ。これを探すのに時間掛かったんだよ。――洗剤に使えるか試して。これ多分大豆だと思うんだけど」

「確かに見た目は、完全に大豆だな」


 オックスさんが火に照らしながら、植物をよく観察する。


「恐らく潰すだけで、洗剤になるだろうな。後でやってみよう」

「おっ、ラッキー」


 リあンさんが指を鳴らすと、オックスさんが一粒口に入れて咀嚼して飲み込んだ。

 私はビックリする。


「えっ、生大豆って結構ヤバイって訊きますよ?」

「まあ俺達には、スウがくれた〖強靭な胃袋〗があるから問題ない」

「それは、そうですけども」


 相変わらず豪快だなあ。

 その後、私はとりあえず大きなタライに山盛りの砂鉄を作って、ダウンした。

 土の地面の冷たさを頬に感じながら、オックスさんに尋ねる。


「とりあえず、この位あれば・・・ゼーゼー・・・良いでしょうか」

「おお・・・大丈夫か? そのくらい有れば十分だ。小屋で休んでてくれ」

「そ、そうします」


 オックスさんに言われ、私がフラフラしながら拠点に行くと、コハクさん、リあンさん、星ノ空さん、綺雪ちゃんが夕食の準備をしていた。

 魚とイノシシと、お芋のスープらしい。

 お芋、どこに有ったんだろう。


「て、手伝いますか?」


 私が尋ねると。4人が首を振って、小屋を指さした。


「すみません、休みます~」


 笹のベッドにふらりと倒れ、


❝おお、寝顔配。――画面が真っ暗になった!❞

❝ちくしょー(血涙)❞

❝お疲れー、おスウかれー❞


 なんて文字が、配信ドローンの下の画面に浮かんでいた。

 そのまま私は眠りに就いた。


「スウ姉ちゃん、御飯できたってー」


 揺り起こされて、覚醒。

 起こしてくれたのは、綺怜くん。

 お風呂上がりなのか、水も滴るいい男だった。

 上半身ハダカで、小学生なのに空手をやってるせいか筋肉が引き締まってて芸術的。

 ちょっとビックリして、意識が一気に覚醒した。


「分かった、今行くから出て出て」


 お姉ちゃん、ちょっとハナヂ出そうだから。

 私は綺怜くんを追い出した。

 ――しかし覚醒したものの、まだダルい身体をモゾモゾ持ち上げる。

 すると私の隣で丸まっていたリイムも身を起こした。


 リイムを連れて小屋を出る。


 夕食に集まっているみんなに、私は手を挙げて挨拶。


「おそよーございます」

「コケー」

「はいはい座って」


 座るとなんか、陶器みたいな器に星ノ空さんがスープをよそった。


「あれ? 陶器?」

「さっきの白い粘土使って焼いてみたんだ。まあまあの出来っしょ」


 空さんがニヤリと笑った。


 空さんの背後を見れば、焼いた後にすぐに壊したらしい焼き窯。

 うん確かにこの器、いい出来。

 ――流石に売ってるヤツみたいに綺麗な器じゃないけど、空さんらしいワイルドさを感じる一品。

 みんなの手元に、空さんが作ったらしい器が配られていた。

 私は器を持ち上げて観察する。


「この飾らない自然な感じが、『いい仕事してますね』」

「どこの鑑定士(笑)」


 竹で作ったお箸を持って、みんなで「頂きます」。


「あ、美味しい! お肉と魚の旨味がでてて、塩もちゃんと効いてて。一日目の味気ない食事から一気にランクアップしたね!」

「たった1日だけど、色々揃ってきたし。――そっちの焼いた魚と肉も食べてみてよ、なんたって備長炭で焼いたんだよ!」

「おおっ、どれどれ」


 わたしは櫛にさされた魚を、横から はむっ。


「おおお! カリカリふわふわ!」


 凄く美味しい。

 すると綺雪ちゃんが嬉しそうに微笑む。


「私が作ったんです! 前にスウさんに魚は遠火の強火って教わったから、実践してみました!」

「なるほど。この焼き加減、完璧だよ、綺雪ちゃん!」

「師匠であるスウさんにそう言ってもらえると、凄く嬉しいです!」


 綺雪ちゃん大喜び、コッチまで嬉しくなる。

 私が綺雪ちゃんをなでなでしていると、オックスさんがひょうたんを取り出した。


「オックスさん、それってまさか」

「おう、さっき地球に戻った時、ブランデーを入れてきた。天然のスキットルよ。こんな旨い焼き魚を酒無しで呑むなんて、冒涜だぜ」

「スキットルって、ハードボイルドな男の人がお酒をクイっと呑むやつですか?」

「そうそう。このブランデーも度数40%だ」


 私が飲んだら倒れる自信がある。


「昔から気になってたんですが、ひょうたんとかスキットルとか、どうやって洗うんですか?」

「アルコールを入れる」

「すごく明快」


 存在がマッシブすぎる。


 オックスさんは呑んで食べてしているのに、度々炉の方に飛んで、炭と砂鉄を投入して戻って来る。

 あんな強いお酒を呑んでも全然酔わないし、凄いなあ。


 こうして二日目は終了した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る