第13話 明美は考える

 誰も居ない校庭で静かな叫び声が響いていた。

 私は負けたんだ。


 私こと村上明美、このたび負けたことをここで発表する。


 てへ。


 可愛い仕草をするが誰もないも言わない、それもそのはず誰も居ない学校でやっているからだ。


 別に負けたくて負けたわけじゃないよ? 誰にだって得意不得意があるじゃん、そんなとこだよ多分。


 指で自分の顔を撫でる。


 私結構可愛いと思うのにな、それに体をしっかり引き締まってるし。

 なにが悪いのよ。


 うす暗い廊下をコツコツ足音が響く。


 明美は現実逃避するためスマホを取り出す。


 誰から連絡来てないかな。


 スマホを眺める。


 何も来てない、ふん、知ってるもん。私だって馬鹿じゃないよ? 世界は私の存在を忘れていることだって知ってるもん。


 口を尖らしながら歩く。


 なんか寒いな今日。


 春を迎えたばかりなのに寒さを感じていた。


 きっと地球温暖化のせいだよね、私の隣が空いてるから寒いわけではないよね? そうだね。


 うん、きっとそうだ。


 てか、私のどこがいけないのよ。


 今日で二度振られた明美は心に浅い傷を背負っていた。


 だって、可愛い、引き締まっている。どこが駄目なんですか? 別に性格だって悪くない。


 もしかして、神様が悪戯してるのかな? 私の可愛さに気付かない呪いをかけたんだ。よくもやってくれたな神様。


 鞄から水筒を取り出し、ミルクティーをすする。


 明美の水筒は次元が違ことはまだ誰も知らない。


 学校を出て、暗い道を歩く。


 今日はあの人と歩く予定だったのに。


『お前と別れたい』


 いつも別れは突然だ。準備をしても、しても、意味なんてない。


 だって傷つくもん。


 視線を下に向け歩く。


 私何してるんだろう、時々自分が嫌になる。


 狂ったことを言ったり、狂ったことをしたり。


 「自分が嫌いだよ」


 明美の独り言は車の走る音でかき消される。

 






 昨日の出来事を思い出しながら乗るバスは、とても憂鬱だった。


 昨日のあれは夢だ、全部夢だ。


 裕也はバスの奥側に座り、窓から見える景色を眺め始める。


 でも、今日は楽しみだな、なんせ麻衣と放課後遊ぶことになっている。


 どこに行くかは聞いてないが多分センスがあるから大丈夫だろう。大丈夫だよな。


 いつもと変わらない景色にはもう飽きてしまった。


 数週間でこの景色も飽きたな。


 いつもと変わらない景色、いつもと、変わらない。


 え?


 外には、靴下のまま歩いてる人に目が行く。


 あれって昨日のあの人だよな。


 ボタンを押し、バスはバス停に止まる。


「おい、何してるんだよ」


 裕也の声に明美は驚く。


 そして砂漠の中で水を見つけたかのように俺に近付く。


 おぼつかない足で。


 ゆっくりと。


「怖かったよー」


 突然意味の分からないことを言い、俺に抱き付く。

 力を込めて。


 明美を俺を見て、さらに泣く。


 靴を履いて居なく、制服も乱れている状況で俺に抱き付きずっと泣く。


 明美は安心する中、裕也は何も感じていなかった。いや感じることが出来なかった。


 奥側の交差点で俺たちを見ている、彩音と麻衣に目が行く。


 すぅぅぅ。


 言い訳を考えよう、この状況になってしまった原因はを考えるんだ、えーと。

 なんでこうなっているんだ?


 確か、何故か彼女が裸足で歩いていて俺は驚いてバスを降りて声をかけた。そしたら今ハグされている。


 それで、奥側の交差点では彩音と麻衣が歩いてこっちに向かってきている。


 えーと。


 冤罪です!!!!

 

 

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