第17話 猟奇的殺人

東京が百鬼夜行により大打撃を受けて3年の月日が流れた。東京都民の一部は長野県軽井沢に避難しそこで生活をしている。その軽井沢の別荘に、豪華な洋館がある。

大きな門扉があり、そこに1台のハイエースが停車する。自動で門扉が開門し、綺麗な庭をハイエースが通過する。

ハイエースが玄関近くまで止まると眼鏡をかけた20代の男性が降りてくる。

風貌はいわゆるマッシュルームヘアと言うのだろうか、ズレた眼鏡をクイっとあげると、玄関のライオンの取っ手のついた部分でノックを鳴らす。


「僕だ。開けてくれ。」


と言った。中からはガラの悪い男達が出迎えた。


「坊っちゃん、おかえりなさい。」


ガタイの良いソフトモヒカンの男が出迎える。身長は180センチ以上ある強面の男である。


「ただいま。権田。ポチは?」


「ええ、元気です。坊っちゃんの帰りを待っていましたよ。」


そう言って犬ならぬ、黒マスクと黒ボンテージを着た女性が四つん這いで駆け寄ってきた。

マッシュルームヘアの男は両手を広げて出迎える。


「おお!ポチ!元気だったかー!?」


「ぼ、坊っちゃん。おかえりなさい……。」


黒マスクの女は怯えた様子でマッシュルームの男に挨拶する。


「いい子にしてたか?お手!」


ニコニコしながら自分の右手を黒マスクの女の顔の前に差し出す。怯えたように四つん這いの女は自身の左手をマッシュルームの男の手のひらに置いた。


「はい!よくできました!次は靴ペロ!」


黒マスクの女は躊躇することなく、マッシュルームヘアの男の靴を舐める。


「で、他の犬はどうしてる?」


権田と呼ばれた男は


「地下にいますよ。こないだ拉致った女がもううるさくて。何発か蹴りを入れてやったんですがね。黙らんのですわ。」


「あれー?躾が足りなかったかな?うるさくて生意気だから僕が保護犬として引き取ったのに。恩を仇で返す!後ろ足で砂かけるとは正にこのこと!」


マッシュルームの男は少し興奮したように言う。


「てか、いつまで舐めてんだよ!」


マッシュルームの男は黒マスクの女の顔面を蹴り上げる。ギャッと声を上げた後、女はその場に倒れる。


「全くです。坊っちゃんの愛情が分からないとは愚の骨頂です。」


権田は後ろで手を組みながら直立し返答した。


「いいかい…?ポチ。」


マッシュルームの男はポチと呼ばれた黒マスクの女を抱き起こし両肩をそえる。


「今の世の中はね。女が威張りくさってるダメな世の中になっちまったんだ。SNSで知りたくもない居場所を言ったり、如何にも承認欲求を満たしたいような自撮りを投稿したり。誰がお前の事を知りたいんだつーの!言わば世の中は至る所で野良犬がクソをしているようなもんなんだ。わかるね?」


「ぼ、坊っちゃんの言う通りです!」


黒マスクの女がコクコクと頷く。


「いいかい…?誰かが野良犬を保護しなくちゃならない。じゃないと世の中は野良犬のクソだらけになってしまうんだ。そんな汚い街に住みたくないだろ?俺は住みたくない。」


「は、はい!私も住みたくないです!」


「でしょ?だーから僕がね、野良犬の保護活動をしてるわけ。お前らみたいな出来損ないの!出しゃばりで!世の中が自分中心と勘違いしてるバカ女をさ!」


「……。も、申し訳ございません……。」


「よしポチ!わかったならいいんだ!地下室に行こう!お利口さんにできないワンちゃんに躾をするとこ見ててよ。」


マッシュルームの男は黒マスクの女に鎖のついた首輪を付け、地下に向かう。洋館の扉が不気味に開く。


地下には石造りの壁に沢山の拷問器具、ノコギリなどが置かれ無機質な空間に、4つの牢獄が設けられている。机の上にはコードレスの電話が置かれ、手術に使う器具、血の着いた包帯も散乱している。


地下には権田と同じくガラの悪い男達が手前の牢獄で女を犯している。


「やめてぇ!いやぁああああ!」


その隣の牢獄では包帯でグルグル巻にされ、四肢を切られた女が呻いている。


「お父さん……お母さん……助けて……苦しいよ……悲しいよ。」


更に隣の牢獄は空室となっている。その隣突き当たりの牢獄は顔にも包帯を巻かれ、同じく四肢を切られた状態ではあるが、ピクリとも動かない。ヒュー、ヒューと僅かに呼吸している。


「ほんとだ。確かにうるさいね。」


マッシュルーム男は女を犯してる男達に声をかけ、どかせる。


「なんでそんなにうるさいの?」


「はぁ……はぁ……。あなた!私たちにこんなことしてタダじゃすまないわよ!警察が黙ってないよ?!捕まるわよ!?」


乱れた衣服を直しながら女はマッシュルームヘアの男を睨みつける。20代の茶色髪の美人である。どこにでもいる今風の若い女だ。


「警察?あーね。ところで君、今の警視総監って誰だか知ってる?」



「知らないわよ!解放して!」



「まぁ聞けよ。片桐保って言うんだ。で、僕が息子の片桐誠一ってわけ。」



「え?」


「なので警察は君たちのことでは動きません。もちろん親父は俺の慈善活動を知ってるし、後処理もして貰ってる。」



「そ、そんな……。」

女はガクりと肩を落とす。



男達は下卑た笑い声をあげる。


「さぁ、種明かしも終わりましたんで、君の右足を切ろうかと思います。」


「嫌だ!ちょっと!や、やめて!」


男達が女を押さえつける。


「大丈夫!僕は医学部なんだ!ここには点滴もあるし!心配ない!」


「な、なんでこんなことすんのよ!?」


「理由?小学校の時だったかな。僕は勉強をいっぱいしてたんだけどね。もちろん1番になりたくてさ。でも勉強ばっかしてるとさ。息つまるじゃん?でも妹は毎日さママゴトばっかしてるわけ。ムカついたね~~~。あいつ危機感が足りないんだよなー。だからさ、妹の人形取り上げてさ。ハサミでバラバラにしてやったのよ。そしたらさ、わんわん泣きやがるの!スカッとしたねー!ついでに勃起したよ!女を痛めつけるとこうも気分が晴れやかになるんだってね!」


「あなた……頭おかしいんじゃないの!?」


「頭はおかしくはないよ?おかしいのはお前らだよ。男尊女卑。女が調子ぶっこくから世の中がおかしくなるんだよ。昔からの格言を破るとこうなる。バカ女がSNSで人を不愉快にさせる公害を振りまいてんだ。教えてやらなきゃ。先人を敬うってことを。世の中の秩序ってやつを。」


片桐誠一はノコギリを構える。女は暴れるが4人の男達に取り押さえられている。


「本日オペを担当する片桐誠一です。いざ!執刀!!」


女の右足にノコギリを引く。女の絶叫が洋館に響く。


「この骨が毎回硬いんだよな…でも切り落とした時の充実感……!オラッ!頑張りますよ!私、片桐誠一!頑張るマンです!」


「ぎゃああああああああ!」


「えっし。切れた!」


切り落とした右足を持ち上げ高らかに、まるでトロフィーでも取ったかのようなポーズを決める。片桐誠一は返り血で血まみれである。


「よっしゃ!右足でバーベキューすんぞ!海行くぞ!車出せ!」


男達の1人がギョッとする。


「あの……坊っちゃん……人間の足ですよ?その……食うんですか?」


「ん?なに?ビビってんの?」


「人間の肉なんて食ったら脳がスポンジみてぇになるって……。」



「バカだなー。タンパク質を異常に摂取した場合だろ。5人で食ったら適量だよ。」


「い、いや俺は大丈夫です。坊っちゃん達でお召し上がりください。」


「は?お前、僕に口答えすんの?半グレの分際で?」


「いや口答えしてません!」


地面から影が現れ巨大な手裏剣が出現し、半グレの男の四肢をあっという間に切断した。男は絶叫して倒れ血飛沫が舞う。手裏剣の中央は円になっており鎖が付いている。手裏剣は回転し鎖を引かれて手元に戻る。


手元の先にはもう1人、片桐誠一がいる。


「ビビりの半グレはいりません!半グレがいも引いたらダメでしょ。」


再び手裏剣が投げられる。倒れた男の頭の上の地面に突き刺さり、片桐誠一は鎖を思いっきり引っ張る。手裏剣は火花を散らし半グレの男を頭から下半身にかけ、縦に真っ二つにした。


「さすが坊っちゃんの生霊はすごい!お見事です!」


権田が拍手をする。男達も怯えながら拍手をする。


「あっ。そうだ。あとあっちのはバーベキューの炭にしよう。そこのお父さん、お母さんってうるさい犬は海に投げ込んで何分生きてるか賭けしようぜ。」


動かない女は精一杯の声を出して叫ぶ。


「神様!助けて!お父さん!お母さん!誰か!助けて!」


片桐誠一はため息をついて呟く。


「親離れしろよな。田舎の女はこれだから……。ちょっと飽きたな。そうだ!いいことを思い付いた!バーベキュー終わったら京都に遊びに行こう!京都で!」






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