ひかりかがやくたね
@hikaru0583
第1話
あるひ
とつぜん、そらからたねがふってきました
そのたねはぴかぴかとひかり、
かがやいていました
たねは、だれにもきづかれませんでした
ただ、ぴかぴかとかがやきつづけました
あめがふりました
かぜがふいてたねはすこしだけ、
ころころところがりました
きりかぶのよこにこつんと、ぶつかりました
きりかぶはいいます
「なんだい?」
たねはこたえます
「ごめんなさい、きがついたらここにいました」
きりかぶは、ふしぎそうにたねをみます
「はじめてみたよ、どうしてひかってるんだい?」
たねはこたえます
「わかりません」
「なるほど、なるほど」
きりかぶはすこしうれしそうにつづけます
「きみがどんな、みになるか…わたしはたのしみだよ」
たねはいいます
「ぼくもたのしみです」
しばらくはなしをしたあと
たねはすんとだまってしまいました
きりかぶはどうしたのかと、
じっとたねをみつめます
たねはぽつりといいました
「みになるためには、どうしたらよいのでしょう」
「ああ、それならつちのなかにはいればいい」
きりかぶはにっこりわらいます
「あめがふったらみずをのんで、じっとしていればいいさ」
たねはあわてていいます
「いやです!ぼくはいろんなけしきがみたいんです!」
きりかぶはこまってしまいました。
うまれてこのかた、このばしょからうごいたことがないからです
「さようなら、きりかぶさん!」
たねはそういうとまたかぜにのり、どこかへとんでいってしまいました
たのはかぜにのってころころところがっていきました
かがやいていたひかりは、すこしだけよわまっているようでした
たねはあまいかおりがして、ふとそらをみあげました
そこにはたくさんのはなびらがまっていました
「こんにちははなびらさん!」
はなびらたちはにこにこしながらこたえます
「こんにちは!」
たねははなびらがひらひらとまい、おちるようすをながめているとふしぎなきぶんになりました。
じぶんもそらからおちてきたのかな?
そう、おもったからです。
はなびらはじめんのうえでもわらっています。
「なにがそんなにたのしいの?」
たねはますますふしぎなきぶんになりました
「あなたをみてわらってるんじゃないの」
「じゃあ、なにをみているの?」
「そらよ」
はなびらたちはつづけます
「もう、あそこにはかえれないから」
そのしゅんかん、たねはすべてをおもいだしたのです
たねははなびらにいいました
「きっといつか、かえれるよ」
はなびらはわらうのをやめました
「どうしてわかるの?」
たねはにっこりわらっていいました
「ぼくもね、あそこにかえるためにここにいるんだよ」
はなびらはいいます
「あなたは、いなかったわ」
たねはすこしさびしそうにいいました
「きみはわすれてしまっているだけだよ」
はなびらたちはざわざわと、こえをあげます
「いなかったわ」
「あなたみた?」
「いなかったとおもうけど…」
「きみなんかしらないよ」
たねはまたにっこりわらい、ささやくようにいいました
「じゃあ、またね」
ふわりとかぜがまいあがり、じめんにいたはなびらたちはどこかにはこばれていきました
たねはそのようすをずっとみていました
「さよなら」
たねはぽつりとつぶやくと、ころころとじぶんでころがりはじめました
たねは、いきたいばしょがあったことをおもいだしたのです
ころころころがってはやすみ、やすんではころがってをくりかえしながら
たねはとあるばしょにたどりつきました
ちいさないずみのほとりです
きぎのすきまからひかりがこぼれ、みなもはきらきらとかがやいています
「こんにちは!」
たねはおおきなこえで、あいさつをしました
すると、ゆっくりいずみからようせいがすがたをあらわしました
すきとおるようにうつくしいすがたをしています
『どうしました?』
いずみのようせいはやさしくかたりかけます
『なにか、わたしにたのみごとがあるのですか?』
たねはげんきよくこたえます
「たのみごとはありません!ただ…」
たねは、すこしちいさなこえでつづけます
「あなたにあいにきたんです」
いずみのせいはすこしくびをかしげて、いいました
『わたしに?』
たねはみるみるうちにひかり、かがやいてひかりをはなちました
そして、いずみのようせいのようなすがたをあらわしたのです
『まさか、あなたは…』
いずみのようせいはくちもとにてをあて、おどろきました
たねは、いいました
「あなたにおくりものをとどけにきました」
『…』
いずみのようせいのてはすっとうごき、たねにむかいひとりでにのびていきます
「ありがとう」
たねはそういいながら、きらきらかがやくなにかをいずみのようせいにわたします
『ありがとう』
いずみのようせいはなみだをながし、かがやくなにかをだきしめました
そしていずみのなかにしずかにきえていきました
たねはまた、ゆっくりとたねのすがたにもどりました
そしてまたころがっていきました
しばらくすると
たねはゆっくりととまり、そらをみあげました
ぽつりぽつりとあめがふってきました
たねはころりころりとこかげであまやどりすることにしました
そこへ
おおきなはねをひろげた、ふくろうがやってきました
「こんにちは、ふくろうさん」
たねはげんきなこえであいさつしました
「こんにちは、きみはなんのたねだい?」
ふくろうはきのえだから、たねをみおろしています
「ぼくはしあわせのたねです」
ふくろうははっとめをまるくしました
「なんだって?しあわせのたね?」
たねはにっこりわらっていいました
「ぼくはそらから、しあわせをはこびにきたんです」
ふくろうはこくびをかしげます
「わたしはうまれてこのかた、しあわせだなんてかんじたことがないなぁ」
たねはふうっとためいきをつきました
「みなさん、そうおっしゃられますよ」
そしてたねはきらきらとかがやきながら、
ようせいのようなすがたになりました
ふくろうはまるいめをさらにまるくして、おどろきながらいいました
「きみはようせいなのかい?」
たねはくびをふりながら、そっとてをのばしふくろうのはねにふれました
ふくろうはびくっとからだをふるわせてだまっています
みるみるうちに、きずついていたふくろうのはねがいえていきました
「いたくない…」
不思議そうにふくろうはつぶやきました
ひかりはそっとかがやきをうしないながら、もとのなんのへんてつもないたねにもどりました
「しあわせかい?」
たねはすこしおとなびたこえでといかけました
ふくろうはまじまじとはねをみたり、ぱたぱたとうごかしたりしながらこたえます
「しあわせかはわからない。でも、きずがなおってうれしいよ」
はねをふわりとつかい、きのねもとたねのよこにまいおりるとぺこりとあたまをさげた
「ありがとうたねくん」
たねはまたげんきなこえでいいました
「どういたしまして、ふくろうさん」
たねをなかまにしょうたいしたい、そうふくろうがおもっているとさえぎるようにたねはいいました
「さようなら、ふくろうさん」
ふくろうはざんねんそうにたねをみつめます
「ぼくね、どうしてもいきたい場所があるんだ」
たねはまたころがりはじめました
「きみならきっと、たどりつけるよ」
ふくろうはうつくしいはねをふり、たねをやさしくみおくりました
たねはいちどもふりかえらず、
すすんでいきました
そしてガーベラがさいている
おはなばたけにつきました
たねはいいました
「やっとついた」
たねはころりころりとはなのみちをすすんでいきます
「おかえり」
「おかえりなさい」
ガーベラたちはいいました
「ありがとう」
たねはこたえながら、さきへすすみます
はなばたけのまんなかあたりでたねはとまりました
そして、ふわりとそらにうかびあがります
「もう、かえってもいいですか?」
なにもこたえてくれません
「ぼくは、ここにいたほうがいいですか?」
ぶわっとかぜがまいあがりました
たねはばらんすをくずし、ぽとんとだいちのうえにおちました
「このたわけものが!」
おおきなこえがきこえました
「かえってくるな!」
どなっているようです
たねは、びっくりしていいかえします
「どうしてですか?」
おおきなこえはだまってしまいました
たねはおおきなこえでいいました
「わたしは、そらへかえりたいのです!」
とたんに、そらがまっくらになりあついくもがぐるぐるとたねのうえにあつまってきました
たねはそらをみつめています
くものまわりにはびかびかとかみなりがひかり、ごろごろとおとをたてています
そしていなびかりがだいちにずどんとつきささり、いくつもいくつもおちていきます
まるでたねをおこっているようです
そして、おおつぶのあめがだいちにふりそそぎました
たねはあめにぬれながら、そらをみあげています
ながいじかんそうしていると、かみなりはおさまりあめはやみました
まっくろだったそらはあかるくなりはじめ、そらにはにじがかかりました
たねだったものは、にじにちかづきます
にじはまるではしのように、そらにかかっています
ゆっくりにじのはしをわたります
ひのひかりがさし、まるでかいだんのようにみえました
つぎはひかりのかいだんをのぼります
そしておおきなとびらのまえにつきました
たねだったものはとびらにふれられません
どのようにひらけばよいのかわからないのです
おもいだせないのです
とびらねまえでながいじかんをすごしました
みつめてみたり
こえをかけてみたり
こしかけて、かんがえこんでみたり
ながいじかん、ねむっていたこともあります
「とびらさんとびらさん、どうしたらそちらがわにいけるのかな?」
あるひ、たねだったものがいつものようにはなしかけるととびらははじめてこたえました
「かぎがあればひらきますよ」
かぎ?なにかもっていたかな?
たねだったものはかぎをさがしますが、なにももっていません
「とびらさんとびらさん、かぎってなに?」
「あなたがもう、もっているものですよ」
たねだったものはとびらにふれていいました
「ぼく、なにももってないよ!」
きぃーとおとをたてて、とびらがすこしひらきました
「さぁ、どうぞ」
とびらをおし、たねだったものはさきへすすみます
そこはほしぞらにつつまれたくらくあかるいせかいでした
あれ?ぼく、ここをしっているきがする
「まっすぐ、まっすぐ」
「はやくきて」
ちいさなほしたちがはなしかけます
ゆっくりゆっくり、まっすぐすすんでいきます
おおきなまっしろなトンネルのいりぐちのようなものがみえます
「こっちこっち」
「みんながまってるよ」
そのこえが、きこえたしゅんかん
たねだったものはここがどこかをおもいだしました
そして、ぴたりとあしをとめました
ほしぼしはいいます
「おかえり」
「まっていたよ」
たねだったものはいいました
「わすれものしちゃったから、またくるね」
ほしぼしはあわてています
「だめだめ、とおれなくなるよ」
「まってまって、いかないで」
たねだったものはわらいました
「だいじょうぶ、ぼくはぜんぜんこまらないから」
そういって、たねだったものはくるりとうしろをむきずんずんとすすんでいきます
ほしぼしはくちぐちにいいます
「はやくかえってきて」
「いかないで、いかないで」
とびらはたねだったものにはなしかけます
「かえらなくていいのかな?」
たねだったものはいいます
「わすれもの、やっとおもいだしたから」
そしてとびらにふれると、
ふわりとそらをとびあるばしょへむかいました
そこはちいさなちいさなきのいえでした
ちいさなおんなのこがぼんやりといすにすわっていました
おとなのすがたはありません
たねだったものはこんこんとノックをしました
「こんにちは、だれかいますか?」
しんとしていて、へんじはありません
「おじゃまします」
たねだったものはどあもあけずに、すっとへやのなかにはいりました
おんなのこのめにはなにもうつっていません
やさしくおんなのこをだきしめると、たねはふわりとそらをとびました
おんなのこはびくりとからだをふるわせて、こわがっています
「だいじょうぶ、もうなにもこわくないよ」
おんなのこをよしよししながら、たねはきりかぶさんのところにいきました
「きりかぶさんきりかぶさん、このこをすわらせてあげてくれない?」
きりかぶはふっとわらいながらいいました
「おやすいごようさ」
ふるえていたおんなのこのからだは、ぽかぽかとあたたまってきました。
「ちょっとまっててね」
たねだったものは、はなびらたちのところへとんでいきました
「ねぇねぇ、きみたちにおねがいがあるんだけど」
はなびらたちはうなづいて、みんなふわりとまいあがりました
おんなのこはあったかいばしょで、ふしぎなこえをききました
うたっているような
たのしいおはなしをしているような
わらいごえにつられて、おんなのこもくすりとわらいました
「ありがとう!きりかぶさんはなびらさん」
みんなはにこしながらいいました
「どういたしまして、きをつけてね」
おんなのこをやさしくだきあげると、こんどはいずみのせいのところへむかいました
たねだったものは、またげんきよくあいさつをしました
いずみのせいはにっこりほほえみました
そしてこういいました
「いいですよ」
たねだったものはおんなのこにみずをのませました
するとおんなのこはかわいいこえでいいました
「おいしい」
つぎにいずみのみずでめをあらってあげました
「まぶしい」
おんなのこのめは、いずみのみなものようにきらきらかがやいていました
たねだったものはおおきなこえでいいました
「ありがとうございます」
おんなのこも、ちいさなこえでいいました
「ありがとう」
いずみのせいはにっこりほほえみました
「またね」
たねだったものはぺこりとあたまをさげました
そして、ふくろうをさがしてとびたちました
いずみのせいはおくりものをながめながらいいました
「ほんとうに、ありがとう」
ふくろうがぼんやりそらをながめていると、ひかりがどんどんちかづいてきました
そのひかりはたねだったものと、おんなのこでした
「おやおや、まあまあ」
ふくろうはいいました
「ふくろうさんふくろうさん、
このこにことばをおしえてあげてくれない?」
たねだったものはいいました
「あぁ、もちろん。かまわないよ」
「ありがとう、ふくろうさん」
しばらくのあいだ、ふくろうさんといっしょにすごしました
おんなのこはおしゃべりがじょうずなよくわらうおんなのこから
たねだったもののようなすがたかたちにかわっていきました
ふくろうはいいました
「もう、おしえることはないよ」
ふたりはにっこりわらって、いいました
『ありがとう』
そしてガーベラのはなばたけにつきました
にじのはしをわたり、ひかりのかいだんをのぼりました
とびらのまえでふたりはてをつなぎました
ほしのみちでいろんなこえがきこえます
ふたりはうたをうたいました
そしてしろくおおきなトンネルのいりぐちにつきました
ほしぼしも、いっしよにうたいおわりました
「まっすぐ、いっしょにすすめばいいからね」
「どこにいくの?」
「とってもたのしくて、しあわせなところ」
「いまも、たのしいよ」
たねだったものは、ぎゅっとおんなのこだったものをだきしめました
「まだまだ、これからだよ」
そうして、たねだったものはすこししさきをあるき、おんなのこだったものはゆっくりとてをつなぎながらあるくと、ふしぎなばしょにたどりつきました
おおきなきにたくさんのかがやくきのみがなっていました
「きれい」
おんなのこだったものは、おもわずそうくちにしたしゅんかんすべてをおもいだしたのです
ぽろぽろとなみだをながしてしゃがみこみました
たねだったものは、すこしこまってしまいました
「だいじょうぶ、もうだいじょうぶだからね」
おんなのこだったものは、なきながらあやまりました
きのみのだいじなたねだったのです
それをあるひおとしてしまった
たねのゆくえをさがしにおりて
きがついたらすべてをわすれてしまっていました
たねだったものはいいました
「ずっと、さがしてくれてありがとう」
「ありがとうではありません、ありがとうではありません」
おんなのこだったものは、くびをふりなきじゃくった
たねだったものは、よしよししながらいった
「ぼくね、じぶんでおちたの」
「えっ?」
「そとのせかいをみてみたくて、じぶんでおちたの」
おんなのこだったものは、おどろきすぎてなきやんでいた
「だから、ごめんなさい」
たねだったものは、あたまをさげた
おんなのこだったものは、なみだがこみあげた
「よ、よかった」
たねだったものはてをつないだまま、さらにさきのへやにずんずんすすんでいった
とおりすぎたひとはあいさつし、ふしぎそうなかおをしていた
おんなのこだったものは、どこへいくのかわからなかった
そしておおきなとびらのまえについた
おんなのこだったものは、からだをふるわせてくびをふった
たねだったものはにっこりわらってこういった
「ぜったい、だいじょうぶだから」
そういって、しっかりてをにぎった。
たねだったものは、おおきなこえであいさつをした
そしてさっそうと、とびらをくぐった
かみさまのまえにたちこういった
「ただいま、もどりました」
かみさまたちは、くちぐちにたぬだったものをしかった
たねだったものは、しっかりすべてのはなしをきいた
そしてさいごにこういった
「かえってくるのがおそくなり、もうしわけなかった」
おおきなこえがひびきわたった
かみさまたちはみちをゆずった
たねだったものはまっすぐすすんだ
そのさきには、りっぱなふたつのいすがあった
おんなのこだったものはとまどいながら、そっとすわった
たねだったものも、ゆっくりしっかりとすわった
かみさまたちはよろこんだ
ふたりはゆっくりたちあがり
たねだったものはこう言った
「ながいあいだ、またせてすまなかった」
たねだったものは、かみさまだった
かみさまはいった
「いままで、できなかったことをしよう」
かみさまはつづけた
「そのために、かえってきた」
さいごにこういった
「まっていてくれて、ありがとう」
あたりいちめんがひかりにつつまれた
そのひかりはちじょうにもふりそそいだ
くさきはめをだし
かぜはやさしくなぎ
あめはやさしくだいちにふりそそいだ
すこし、せかいがあたたかいひかりにつつまれた
そのようすをみたかみさまは、にっこりほほえんだ
おんなのこだったものにかみさまはいった
「いっしょに、てつだってくれない?」
おんなのこだったものも、かみさまだった
「いいよ」
ふたりはとてもしあわせそうにわらった。
おしまい
ひかりかがやくたね @hikaru0583
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