第4話 判定者
嫌な予感というものは当たるのだろうか。
ちりん、ちりん、と。
玄関で客人の訪問を知らせる鈴の音がした。
ちりんちりん、ちりんと。
無視をしようかどうしようか悩んでいる間も、急かすわけでもなく、規則正しく鳴らす鈴の音が聞こえる。
ドッゴンバッゴンドジャジャジャジャ。
少年がまだ風呂で格闘している間も、明確に鈴の音を届けてくる。
(しょうがないなあもう)
脱衣所の扉に背中を預けて膝を抱えて座っていた
「
「楓さんならこちらに御在宅ですが」
取次から式台、さらに三和土に置いてある千両下駄を履いて進み、ガラガラと年季の入った玄関の扉を音を立てながら横に引いて開けると、丸眼鏡に七三分け、白いシャツの上から紺色の着物をビッチシカッチシひどく窮屈そうに着付けている長身の男性が尋ねてきたので、楓はそう返した。
「申し訳ありません。名前を言っただけでは分かりませんでしたね。血塗れの十歳前後の少年がこちらに来ませんでしたか?」
「いいえ。来ていませんね」
「隠し立てをすると面倒な事になりますよ」
「隠し立てなんてしてませんので面倒な事にはなりませんねえ」
鸚鵡返しを繰り返す楓に、けれど、男性の硬い表情は微塵も動かなかった。
「そうですか。分かりました。では、今挙げた特徴を持った少年が迷い込んできたら、こちらにご連絡ください」
「その少年は迷い子ですか?お宅さんの?」
男性から名刺を受け取りながら楓が尋ねると、いいえと僅かに熱を持った声音で以て男性は返した。
「犯罪者なので子どもと言えどお気を付けください」
名刺には、
(2024.11.27)
氷空に庵に花の流れ散るらん 藤泉都理 @fujitori
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