第3話 親
罪人と言っても少年が何か罪を犯したわけではないのだろう。
ドッゴンバッゴンドジャジャジャジャ。
どのような身体能力や技巧を駆使した動きで以て風呂に入っているのだろうか。
風呂場を破壊しないでくれよ。
一緒に入った方がよかったかとの考えが、ちらと過るも、まあ大丈夫かと思い直して、脱衣所の扉の前で膝を抱えて座り続けた。
(あの子はきっと、親が犯罪者なんだろうな。母親か父親か。どちらかは分からないけど)
母親と父親のどちらか、どちらともかが犯罪者の場合、子どもにも罰が及ぶ。
死体を処理する罰である。
老衰、自然災害、事故、事件、あらゆる死体の処理をしなければならない。
子どもに拒否権はない。
罪を犯した親の罰を受け入れて罪を償う事が子どもの役目。
それがこの国の法である。
(数多くの死体と向き合う中で、きっと、あんな風になりたくないって思ったんだろうなあ)
整えられた死体ならばさぞかし綺麗な身体と優しい顔をしているのだろう。
大往生を遂げたと言わんばかりに。
けれど整えられていない死体はそうではない。
夢でも魘され、食欲睡眠欲不振に陥り、幻覚幻聴に悩まされるなど、生活に支障を来してしまうほどに、見るも無残な身体と顔をしているのだ。
(だから花。か。もしかしてもう、死にたいって思ってるのかなあ)
罰は一生続く、と言われているが、実際はどうか分からない。
判定者が決めるとの噂もあるので、もしかしたら期間限定なのかもしれない。
(自分が罪を犯したってんなら踏ん切りがつくかもしれないけど、親の罪を償えって。死体処理なんて。嫌だよなあ)
渋面顔になった楓は少年の境遇には同情しながらも、自分ができる事はないよなあと思った。
(そもそも。親が犯罪者っていう僕の推測が当たっているわけじゃないしね。ただ、もしも、当たっていたとしたら。すんごく厄介なんだけどなあ)
(2024.11.25)
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