─女神 スロフ─
「ここは…?」
「天界になります。凪の棲んでいる地上の遥か上に存在している世界です。」
「…!?俺の産まれた時代に転移したんじゃないのか!?」
「申し訳ありません。そうしたいのですが…私、無理だと言ったじゃないですか!!しないのではなく、出来ないのです」
確かにイリスはあの時、無理だといった。
ただそれは意地悪とかそうゆうのでは無く、ただ単純にイリスにはその力がなかったのだ。
「私は女神を名乗ってはいますが、そこまでの力はありません。まずは天界について軽く説明しますが、この世界は全部で五断層で創られています。凪の棲んでいる地上が一断層で、ここ。天界が二断層にあたります。そして、過去に戻るなど、逸脱した力は二断層より上の女神にしか与えられません。」
イリスはここまでいいですか?と少し間を挟み、言葉を続けた。
「そして、これから凪には三断層におられる、時の女神スロフ様に会って頂きます」
「時の女神?そんなのもいるのか」
「えぇ、女神は様々ですので。私が双刃の女神と呼ばれているように、豊穣の女神などもいます」
そして、イリスは顔に憂色を浮かべ言った。
「……正直な所、私は行きたくありません。確実に怒られます……な、の、で!交渉は凪が自分でして下さいね?私は連れてきただけですので、無関係ということにしといて下さい」
「……お前がそんな顔をするほど怖いのか」
「…えぇ。直接は怒られた事はないのですが、その現場を目撃した事がありまして………なので」
イリスはそこで言葉を止め、凪に視線を向けた──否、正確には凪の中にいるネーヴェに視線を向けたと言える。
「ネーヴェ……くれぐれも!余計な事は言わないように。」
「え?ネーヴェ!?そういや地面に刺したまんまなんだけど!!」
凪が忘れてたと、頭を抱えると、突然光を発しながら凪の目の前にネーヴェが現れた。
「ふふ。気付いていたのかい?イリス」
「えぇ。凪が吹き飛ばされた時に、消えたのは確認済みでしたので」
すると、ネーヴェは皮肉な笑みを浮かべ
「また置いて行かれそうな気配がしたからね…主様の中に隠れてたんだよ。」
「そうですね。ホントはそのまま置いて行きたかったのですが、残念です。」
相変わらず仲が良いのか、悪いのか、よくわからん二人だなと、凪は思うのだった。
「とにかく!ネーヴェは黙っている事。もしくは凪の中に隠れていて下さい。」
「まったく、イリスは口うるさいね。善処するよ。」
「なんですか!善処って。大体貴方は──」
イリスの言葉を遮るように凪は言った。
「ネーヴェは、俺の中にいろ。そろそろ行くぞ」
「仰せのままに」
「ふぅ。そうですね。時間を無駄にしました…では移動します。」
そして、凪たちは三断層にいる、スロフの元へと移動した。
広大な空間というほどではないだろう。
そもそも今いる空間が広いのか狭いのかすらわからない。
その場所は、辺り一面に時計が置いてあった。小さな物から大きな物、そして形も様々だ。
そして、真ん中には大きな砂時計が置いてあり、その目の前に一人の女神がいた。
「お忙しい所失礼致します、スロフ様、イリスでございます。」
イリスは砂時計を見つめるスロフに近付き、恭しく頭を垂れた。しかし、スロフは振り向く事なく、言葉を投げかけた。
「……2層の女神が3層まで上がってくるなんて、一体なにようだ?」
「お願いがございまして……」
「言ってみたまえ」
そう言うとスロフは、イリスの方に振り向いた。
その瞬間── スロフは狼狽を漂わせた。
「な─ッ!?イリス!!どうゆう事だ。なぜ人間がいる」
イリスはやはり、こうなったかと、額に汗を滲ませながら言った。
「……この少年の話を聞いて貰えないでしょうか?」
「ここは人間が来ていい場所ではない。今すぐ帰れ」
「少しでいい──」
「もういい、あとは俺が話す。」
凪はイリスの言葉を遮り、更に話を続けた。
「単刀直入に言うが、俺が生まれた日に飛ばしてもらいたい。」
「なにを言うかと思えば、バカバカしい。無理に決まってるだろ。」
「ッ…!頼む。」
「しつこい。お前のように人生をやり直したいと思う者は他にもいる。だが、それが出来ないのは分かっているはずだ」
「……それでもだ。今俺らの世界は、異世界の魔王によって滅ぼされようとしている」
「それは我々、女神には関係のない話だ」
くそ……。どうしたらこいつは首を縦に振るんだ。
「スロフ様。こちらの少年には我々の世界の一つを救って貰った恩がございます」
「……忌々しい邪神。か」
「はい。そして、彼にはまだ褒美を与えていません」
「褒美として過去に飛ばせ。と?」
「その通りです。もちろん私も同行致しますので、スロフ様が心配するような事は、起こさないと約束致します」
「……ふむ。少年よ、なぜ過去に行きたい。」
凪は決然とした表情で答えた
「……恩を返したいやつらがいる。そして、魔王を倒して俺らの日常を取り戻す」
「ふっ。恩ね……でもいいのか?お前が過去で魔王を倒す事により、これまでの出来事は全てリセットされる。本来なら交わるはずだった運命も交わらない運命へと変わってしまうかもしれない」
「あぁ。生きていてくれれば充分だ」
「そうか。なら良い。過去に送る条件は二つ。過去の人には干渉しない事。それと、魔王を倒したらすぐに戻ってくる事。もし、途中で重大なタイムパラドックスが起こったら強制的に回収するからね」
「わかった。感謝する」
「では、飛ばすぞ。汝に女神の御加護があらん事を────」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます