─坂柳 和馬2─




  凪たちはギョッとした。今まで共に戦ってきた仲間を殺したのか?と


「……なぜ。」

「殺したかって?はは。そんなの邪魔だったからに決まってるじゃないか。僕は。僕だけの楽園を創ることにしたのさ、誰もが僕を敬い、誰もが僕に付き従う。全ては僕を中心に動き出す。その為には力がいる。だから僕は魔王側についた。」

「ち……イカれてやがる」


  と凪は呆れるが、坂柳は冷たく笑いながら、


「なんとでも言うといいさ、どうせ君は死ぬのだから。」と言い、凪へと斬撃を放った。


  凪は驚きと同時に、坂柳が放った斬撃がただのものでは無いことに気づき、咄嗟に叫び声をあげた。


「今すぐに、結界を貼れェェエ!!」


  凪が叫ぶと同時に、凛鳴は瞬時にその場へと結界を張り巡らせた。


斬撃が凪たちへと襲いかかった瞬間、轟音と共に砂煙をもうもうと舞い上がらせた。


  砂煙が晴れると、皆は無事だった。しかし、凛鳴の結界には所々に亀裂が入り、今にも砕け散りそうだった。


「「「なっ!?」」」


  その場に居た誰もが驚きを隠せなかった。ヴァンスとの戦いを見ていた者は尚更であろう。


  あれだけなにをされてもヒビすら入らなかった凛鳴の強固な結界に亀裂を入れたのだ。


「ふむ。まぁこんなものか。」

「坂柳……てめぇ。」

「は、はは。その程度か…山本 凪!やはり僕こそが頂点に立つに相応しい。脇役には退場してもらおう」

「ち……調子に乗りやがって。ネーヴェ!全力だ。」


  凪がそう言うと、神楽たちは粒子になり、手に持っていたマスケット銃は、形を変えていった。


「いくぞッ」


  凪は地面を蹴り上げた。


「お前たちは後ろのやつらをやれ!アイツは僕の獲物だ。」


  坂柳が、背後に居た村瀬たちへと指示を出すと、無言のまま、その場から消え、梓たちへと襲いかかった。


「坂柳ぃ!!」


 凪は坂柳の間合いまで距離を詰め、剣を振り下ろした。そして、坂柳もそれに答えるかとように剣を振り上げる。


  その瞬間、剣と剣が交わり、ギリギリと剣戟を鳴り響かせた。

 

「お前は!自分の欲望の為だけにアイツらを殺したのかぁ!!」

「貴様になにがわかる!!僕は…僕はァ!!」


  坂柳が大きく声を上げると同時に凪の剣が弾かれ、体勢を崩した凪へと、坂柳の拳が振り下ろされた。


「ぐっ!!」


  その拳は凪の顔面を捉え盛大に吹き飛ばした。更に、坂柳は追い討ちと言わんばかりに凪を追いかけ、剣を振り下ろした。


  凪は剣をなんとか受け止めるが、そのまま地面へと叩き潰された。


「がァっ!!」


「はぁはぁ。これが僕の力……素晴らしい!なんて素晴らしいんだ!!」


  凪は剣を支えにしながら立ち上がり、大きく息を吸い込み、乱れた呼吸を整えた、


「…ふぅ。その程度か?坂柳?」

「なんだと…まだ僕をバカにするのかぁぁ!!」


  坂柳が剣を振りかぶってきた瞬間─縮地で坂柳の懐へ飛び込み手首を掴み、腱を引きちぎる勢いで力を込めた。


  その瞬間、ゴキッと鈍い音がなると共に坂柳の叫び声が上がった。


「!? がァァァぁぁあ!!」


  坂柳は左手をだらしなくぶらんとさせながら、凪を睨み付けた。


  おい、ネーヴェ。

 ゛なにかな? ゛

  あいつ、ホントに人間か?俺の異常なステータスでも押し切るのがやっとだぞ?


  凪は心の中でネーヴェに問いた。


  元々、坂柳はこれ程に強くなかった。先程の斬撃にしてもそうだが、威力が異常だった。


゛恐らくだが、あれは人だった。が正しいだろうね ゛

  どうゆう事だ?

゛魔王側に付いたのなら、なんらおかしくないさ、魔物かなんか食らったのだろうな。ステータスを見てみるといいよ ゛


 ゛鑑定 ゛

─────────────────────

坂柳 和馬 △。歳 レベル※* 魔人族

HP ◎■ MP ●▽

攻撃  ⊿※

防御  §ギャ

素早さ ༅※

運   あ§を

魔力  ☆ミャ

スキル んさ□

─────────────────────


  なんかバグってんだけど……。 とゆうか魔人族って…ヴァンスと同じ!?通りで強いわけだ……。


「お前も人間辞めたんだな。そこまでして、俺を殺したかったのか?」

「はっ。そうだ!初めて会った時からそうだ。憎くて堪らなかった。勇者の僕を差し置いてチヤホヤと。」

「……ガキの遊びに付き合ってる程、暇じゃ無いんだけどな。」

「その余裕っぷりも気に入らない。ぼくが…………し……」

「あ゛?何言ってんだ?」

「……す。…………殺してやるって言ってるんだァァア!!」


  その瞬間、坂柳の背中から一対の羽が生え、目からは血を流し、そして、眼球を真っ黒に染めていき、その禍々しい雰囲気に凪は圧倒された。


゛完全に闇に呑まれたようだね。主様よ、気をつけるんだ。 あーなったらもう殺すしかないよ ゛

「ち……バカが…!」

「がァァァァ!!!!」


  坂柳はその場で剣を横に薙ぎ払った。それと同時に、凛鳴の結界に亀裂を入れた斬撃を放った。


  凪は剣でそれを受け止めるが、先程以上に威力が増しており、受け止めきれずに凪の身体を斬り裂いた。


「なッ……!!くっ…」

゛主様!! ゛

 

  坂柳の斬撃により、凪の肩から腹部にかけて、深く切り裂かれた跡があった。血をボタボタと垂らしながらも、凪は苦しみながら立ち上がり、相手の目を見据えた。


「な、んだ。あの威力……。」

゛ダメだ、主様。止血しないと ゛

「必要ない。あいつをぶっ殺してからだ。」


  凪は坂柳へと突進しながら剣を振り下ろした。


  坂柳はそれを剣で受け止め再度刃が交わり剣戟を鳴り響かせた。


  そして、噛み合った刀に力を加え続ける。そうする事で振り抜きよりも更に力が伝わる。


 その結果─凪の刀を受け止めた坂柳の体が宙に浮き、飛ばされる。


  大地を踏みしめ、飛んだ坂柳を追いかけ、着地した坂柳が体制を整える暇を与えず、頭上から拳を叩き込んだ。

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