─四天王 ゾムーグァ─
「イリス、アリシアを助けに行くぞ」
ッ…!
「ですが、既にアリシアは…」
イリスはそこまで言うと口を閉じ、悔しさに耐えるように唇を噛む。
「チッ。お前が俺を呼び出したんだろ!中途半端にするな。そんな簡単に諦めてんじゃねぇよ!」
凪はイリスのあまりにも曖昧な態度に痺れを切らし怒鳴りつけた。
怒られ慣れていないのか、イリスは不意の出来事に驚き、呆然と凪の顔を見るのだった。
そもそもイリスは仮にも女神である。誰かに怒られると言う概念がない。ましてや人間の男に怒鳴られるなんて以ての外だ。
「分かってるか?お前が今動かないとアリシアは必ず死ぬぞ。そのままずっと惚けてるつもりなら、俺がアリシアごと邪神を斬り殺してやる。」
「……。」
イリスは黙ったまま凪の言葉に耳を向けているが、怯えからかそのガラス細工の様な綺麗な瞳は揺れていた。
「イリス。お前が選べ。ここはお前の世界だ。
アリシアを犠牲にして世界を救うのか。
アリシアを助け出して世界を救うのか。 」
凪はそのまま話を続けた。
「俺のオススメは前者だな。手っ取り早い。それに俺は助け出す方法を知らない。だけど……イリス。お前ならわかるんじゃないのか?その術を。」
「ッ……!?」
「知っててやらないのは愚者のする事だ。答えろ!イリス!!」
「私は……。私は、アリシアを助けたい!」
イリスは目の裏に溢れんばかりの涙を溜めながらもどこか力強く真剣な目をし、その気持ちをつたえた。
「山本 凪様。どうか私に力をお貸し下さい。」
そう言うとイリスは凪へとうやうやしく頭を垂れた。
「ふっ」
凪は少し頬を緩めるとイリスの頭へポン。と手を乗せぐしゃぐしゃ。っとし「当たり前だ」と答えるのだった。
「それで、救う方法はあるんだろ?」
「はい。゛神威 ゛を使いアリシアと邪神を分離させます。アリシアは仮にも聖女なので、私の神力を使った所で彼女にダメージは入りません。」
「俺はイリスがその神威を使うまで、アリシアを足止めしとけば良いって事か?」
イリスは顔を横に振った。
「いえ。私は武装化しないと行けないので、凪。貴方に神力を授けます。」
イリスがそう言うと見慣れた画面が現れる。
【女神イリスの意志により、山本 凪に称号を付与します。】
【一定数のレベル到達を確認スキルをアンロックします。】
「おい!急に付与するなよ!ビックリするだろ。」
「失礼致しました。ステータスをご覧になって下さい。」
ステータス
────────────────────
山本 凪 17歳 レベル386 人族?
HP 3680/3680MP 3100/3400
攻撃 2680+402
防御 2430+364
素早さ 2920+438
運 80
侵食度 92%
スキル 精霊召喚、精霊武装
-神楽-蒼波-星雷-ネーヴェ
闇の一閃
冥闇
幻影
鑑定眼
光刃閃舞
神威解放
称号 世界を壊す者
異界の勇者
女神の使徒
────────────────────
ケロベロスとか色々倒したからレベルも上がってるな。神威…ねぇ。鑑定しとくか。
゛
『神の威光。邪の者を寄せ付けない神聖な光を自身に宿す』
なるほどね。邪神特攻スキルってわけか。
「確認できたぞ。ちゃんと神威のスキルも追加されてた。」
「そうですか。それならよかったです!」
うっし!それじゃあ行くとしますかね!
凪は両頬をバチンと叩き気合いを入れ魔王城へと足を踏み入れた。
「なんか思ったよりも…静かと言うか、なんもいねぇな。」
魔王城の中は静寂に支配されていた。魔物たちの姿も見えず、物音すらしないが、 逆にその静けさが不気味さを醸し出していた。
城内を進むと禍々しさを放った扉が見えてくる。
イリスと顔を合わせ開けるぞと目で合図をし、扉に触れた。
両手を付けるとギィ……と音を立てながら扉が開いていく。
広大な部屋の中には玉座に座るアリシアとその横には男が一人立っていた。
凪は一度アリシアに会っているにも関わらず、あれはホントに同一人物なのかと思わせる。
柳の若葉のように淡い黄緑色の髪をした女の子。それは変わらない。
人の形をしているはずなのに、同じ存在には思えないなにかかあった。
それもそのはずだ。見た目はアリシアだが中身は邪神なのだから。
「やぁ。女神イリス」
そいつはアリシアの声色で女神の名を呼んだ。
「何年振りかな?君とこうやって顔を合わせるのは。」
「イドラフォル…できれば、二度と顔を合わせたくなかったんですけどね。」
イリスは睨みつぶそうとでもしているかのように、忌々しげな表情をしていた。
「アリシアを返して頂けますか…?」
「返してあげたいのは山々なんだけどね…僕を受け入れられる程の身体なんて早々ないからね。残念だけど、答えはNOだ。」
「そうですか……では。死んで下さい。」
イリスはそう言うと徐々に光の粒子へと変わっていき凪の両手へと集まっていき、刀へと姿を変えた。
「へぇ。久々に見たよ。その姿。でもいいのかな?その姿で僕を斬ったらこの子死んじゃうけど?」
邪神はアリシアの姿で嘲笑うかのように、冷ややかな、意地の悪い微笑みを口元に浮かべていた。
゛死ななければ私があとで回復させますので気にせずやって下さい。そもそも手を抜いて勝てる相手ではありませんので ゛
「あーなんか、イリスが気にせずやれってさ。」
とは言ったもののあの姿だと斬りずらいなぁ…
「ふーん。じゃあこの子は見殺しにするんだね。女神なのに冷たいなぁ。」
「もういい。その姿で囀るな。」
凪はそう言った瞬間、足元を蹴り上げ間合いを詰め。刀を振り下ろした
ガキンッ
「なっ…!?」
振り下ろした刀はアリシアの目の前で止まった。
正確に言えば隣に立っていた男が腕を伸ばし受け止めていた。
男の半身は龍と思わせる鱗を纏い鋭く尖った爪が伸びていた。
「俺様の存在なんて忘れてましたって顔してんなぁ?えぇ?勇者様よぉ。」
「チッ。なんだお前、邪魔だな。」
凪は後ろに飛び退き距離を取りながらそう言った。
「なんだ、俺様を知らねぇのか?魔王様の側近が一人ゾムーグァだ。よく覚えておけ。」
「いや、お前はここで殺すし名前を覚える必要もないね。シッ」
凪は大きくその場で飛躍し、空中で漆黒の刃を無数に飛ばした。 しかし、ゾムーグァは羽虫でも居たかのように腕を払い斬撃を叩き落としていた。
チッ。
「これならどうだ?゛冥闇 ゛」
ゾムーグァの周りを闇の霧がつつみこんだ。
「ついでにおまけだ゛幻影 ゛」
「ッ…!?…てめぇ……なぜ…ヴァンスのスキルを使えるんだ…?」
ッ …!?
凪は咄嗟にその場を飛び退いた。
先程まで凪が居たであろう地面には爪の痕がきっちりと残っており、 もしあのままそこに立っていたら、と思うとゾッとした。
「あっぶな…。てゆうか全然効いてねぇじゃん。」
「おい!答えろ。なぜヴァンスのスキルを使える?」
先程までのゾムーグァからは想像ができない程の殺気が漏れ出していた。
「別に。そう難しい話じゃないぞ。単純にヴァンスの魔石を食べただけだ。…なんだ?あいつお前の部下かなんかだったのか?」
「てめぇがヴァンスを殺したのか!」
「先に襲ってきたのはあいつだしな、文句ならヴァンス本人に言ってくれ。」
凪がそう言った瞬間、額に青筋を伸ばしたゾムーグァが一瞬で間合いを詰め、龍の腕を薙ぎ払った。
ッ…!?
凪は刀をクロスしガードするが、威力を殺せずそのまま吹き飛ばされる── が、壁にぶつかる瞬間にしなやかに身体を回転させ壁に着地し、何事もなかったかのように大地に降り立った。
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