─ラッキースケベ君─
「わぁー結構広ーい」
「これがお風呂…ですか。」
「おっふろ、おっふろ!」
「走ったら危ないですよー!!」
ふひぃーーーー。
わたくし、山本 凪 17歳は、現在三階にある銭湯でお湯に浸かっています………右の頬を真っ赤に腫らし、目隠しで。
違うんだよマジで、聞いてくれよ。
時は遡り10分前──
~~~~~~
「なぎなぎー!お風呂あったよー♪」
「お、あれか!結構広そうじゃん!」
「うん、じゃあ先に出たら入り口で待っててね!」
「はいよ。」
凪は内心少し安堵していた。二日もお風呂に入れていなかったことを気にしていたのだ。
梓たちにおっさん臭いって言われたらどうしようと心配していた。
凪は上着を脱ぎ上半身裸になり、脱衣所の姿見の前に立ちファイティングポーズなどをし、ボディビルダーのようなポージングをして楽しんでいた。
おぉ!やっぱり筋肉めちゃくちゃ付いてるじゃん!レベルアップの効果は偉大。ありがとうございます!
「ご主人様。ムキムキ!」
「そうですね!出会った頃より逞しくなりましたね!」
「そうだろう。そうだろう。…………ん?なんでお前らこっちに居るんだよ!!!」
凪がキャーと言わんばかりに声を荒らげるが、二人は揃って首をこてんと傾げた。
二人にとってお風呂とは未知であり、そもそも男と女は別と言う概念がそもそもないのだ。
「凪様の居る所が私の居場所ですので。」
「右に同じくだよー!」
「いやいや、お前らは隣!!さっきまで梓のあとくっついて行ってただろうが!って脱ぐなーーーー。」
「蒼波。バスタオルというものを身体に巻くみたいですよ!」
「らじゃー!」
凪の話など全く聞かず二人は着々と服を脱ぎ始め胸にバスタオルを巻き始めた。
凪は非常に焦っていた。三人しかいないならまだいい。しかし、ここには四人目が…………
ドタドタドタドタ。バターン!!と激しい音と共に扉が開く。
「こらぁ!二人ともこっちだよ!!なにサラッと一緒に入ろうとしてるの?ッ…!?しかももう脱いでるッ!」
「あら、梓様もご一緒ですか?」
凪が焦っていた理由はこれであった。
そして、不幸と言うべきか否か。既に梓もバスタオル一枚であった……
「ちょっと、急に走り出してどこ行くんですか!こっちは男性の……ッ」
そしてこの時凪は思った。
……これなんてエロゲ?と。
「ほら、二人とも行くよ!」
梓が二人の手を掴み引っ張るが、神楽と蒼波は頑なにそこを動かなかった。
「嫌です!」「やだやだー」「ちょっとみんな落ち着いて下さい。」
おいおい、そんなに暴れたら…
そして、ハラリ。と四枚のバスタオルが床に落ち
ッ………!?
「なーぎぃ──」
「ま、待て。俺はなにも見て…」
梓は顔を真っ赤にし、凪の頬っぺたへと思い切り右手を振り下ろした。
ばちーーーーんッ。
と、落ちが完璧な凪であった。
~~~~~~
と。言うわけなんだが…俺悪くないと思うんだよ。みなさんどう思いますか??
結局の所神楽と蒼波が言う事を聞かないから、じゃあアタシも一緒に入る!と言い出し、今に至ると言う訳なんですが…せめて君は戻りなよ、橘さん…
「よかった…貸切で…」
「ほら、二人とも!お湯に浸かる前に身体洗って!」
「これがシャンプー?ですか。」
「どーやって使うの??」
しかしまぁ…良いもの見た。なにとは言わないが…一言で言えば素晴らしい。梓のは、さすがに圧巻であった。
「なぎなぎ?変な事考えてない?」
……。
「口元がニヤけてるよ」
ッ……!?俺とした事が!!
「気のせいだろ。」
と、ぶっきらぼうに返事をするが、脳内では先程の映像がリピートされていた。
「あっそ。それならいいけどね!ラッキースケベ君。」
不名誉なあだ名を付けるのは、是非辞めていただきたいね。
梓たちが身体を洗い終わったのか、人の気配が近づいてきて、チャプチャプと水かさが増していくのがわかる。
「「「「ふへぇーー。」」」」
そうなるよな、わかります。
「そういえば、そこのちみっ子ちゃんは女湯に戻ってもいいのよ?」
「だ、誰がちみっ子ちゃんですか!こう見えて私は高一です!」
「そうなの?アタシは高三の神崎 梓だよー!よろしくね!」
「え、あ、私は橘 小春です。こちらこそよろしくお願いします!」「神楽です。」「蒼波ー!」
そして、自己紹介が終わると橘が
「私先輩の名前知らないんですけど…」
え?嘘。名乗ってなかったっけ?
「山本 凪だ!」
「凪先輩ですね!よろしくお願いします!」
「ハルハルってなんのスキル持ってるのー??」
「なんですかハルハルって…一応私は゛聖光の癒し゛って言うスキルですね」
「ほほぉー。癒しってぐらいだから怪我とか治せる感じ?」
「そおですね!ある程度の傷は簡単に治せますね。」
へぇ便利そうだな。君は流石にゴブリン撲殺とかしないよね…?バーサクヒーラーとか言われちゃうから、気をつけてね?
「凪様。」
ッ…!?いつから隣に居た!!
「技名決まりました?」
「いや、俺は別に技名とかいらないから…」
それより近いから離れて下さい。
凪はチャプチャプと少し距離をとった。
「ご主人様、一緒に技名考える??」
チキショウ!こっちにまで居やがる!!
「ちょっとー!二人ともずるい!」
そしてジャブジャブと近づいてくる奴が一人…
「きゃッ!!」
その瞬間── 凪の顔に柔らかい物がぶつかった、その拍子に凪の目隠しが取れ……
「ッ………………///」
すぅーーーーーー。
「ありがとうございます!!!」
ばちーーーーんッ。
ふぅ。いいお湯だった!人生で一番いいお湯だと言ってもいい。
「なぎなぎって意外とエッチだよね…!」
「……。」
「ご主人様ほっぺた真っ赤だね。」
「小春様に治癒魔法掛けて頂いたらどうでしょうか?」
「お、名案!橘さん、治してもら………やっぱり大丈夫です。」
まずい。梓が睨んでる。アタシのおっぱい見といて治す気?とでも言いたそうだ。でもって橘さんまでそんな顔しないで…
「お風呂も入ったし!身体休めたいんだけど、橘さん、どこか寝る所ある?」
こーゆー時はさっさと寝るに限る!
「寝れる場所ですか…あっ!プラネタリウムなら寝れると思いますよ!あそこ全席フラットなので!癒されたい時とか私も行くんですよ!」
「おぉ!いいね!じゃあそこまで案内してくれるかな?」
「わかりましたー!こっちです!」
プラネタリウムに着き中に入ると、おぉーー!!とはならなかった……さすがに機械は動いておらず、もちろん星なんて見えない。館内は真っ暗で足元にライトがほんのり着いている程度だった。
まぁ寝るのには最適だな。
凪は適当な座席に腰をおろしそのまま寝転がった。
ふぁ。こりゃ寝れるわ。
「じゃあアタシも此処でいいかな。」
よっこいしょ。という感じで梓が俺の隣に腰をおろした。
「……。」
「なによ?」
「…さすがに狭いかなぁと」
「二人席だから大丈夫よ!」
「ちょっと神崎先輩。男女で一緒に寝るなんてだめです!」
「私もご主人様と寝たい。」
「そうです!梓様ずるいですよ!」
「神楽は学校で一緒に寝てたでしょ!蒼波は次!ハルハルは自分の布団があるでしょ。」
もぉいいや、寝よ。…いい匂いする。そしてなんか柔らかい。はぁ…これ寝れるかな。
そんな心配をよそに余程疲れていたのか…………秒で寝たのである。
「ねぇ、なぎなぎ…………え、寝たの?嘘でしょ?もぉーーー!!」
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