別の世界へ

2024年12月24日


クリスマスイブ。

例年ならば、僕は一人家で動画を漁って一年を振り返り惨めな気持ちで過ごすところが、今日は違いました。


外出しています。


外の世界はネオンで溢れた光の世界のはずですが、僕の世界はセピアの色を映していました。まるで現実ではないような…不気味な世界です。

動く人が動物のようです。


道行く人の笑顔が気持ち悪いです。

僕は異常になってしまいました。


もうバイトはしていません。

思ったよりもお金は持つもんだと感心しています。

この日は、脳を麻痺させるためにお酒を買いました。


僕がこの世界から消えるという妄想を抱きます。

煙が出て溶けて、蒸発して、霧のように…


みんなも一緒に蒸発させたいところですが、異常な人間の妄想に付き合わせる事は止めましょう。

ひっそりといなくなる事にします。


そもそも、人に害を加えるとロクなことにならない。


僕が中学生になりたての頃、新品の制服を来た女の子たちをターゲットにスカートめくりが横行しました。首謀したのは乱暴者のタカシです。


「いけよ、田中」と言われ、周りを見ると、女子に追いかけられる男子が数人、逃げ切ったところでした。


この流れに逆らえば間違いなくスクールカースト最下層に位置することになったでしょう。


僕はやりたくない事のために決死の覚悟を持ってスカートをめくりに行きました。

しかし僕はワンテンポ遅かったようで、既に警戒を強めている女子に防がれただけでなく、逃げようとした瞬間に転けてしまいました。


運が悪いことに、その女子は空手有段者の小野さんだったらしく、僕はそのまま馬乗りになって殴られました。


「ごめん!ごめん!ごめん!」


殴られながら身体をよじり必死に許しを乞いました。

中学校なりたてぐらいだと、男女間に体格差はありません。

そして、軟弱な僕と空手有段者の彼女では、実力差は歴然です、


「小野、てめえ〜!」


タカシが駆けつけてきます。小野さんはタカシを迎え撃つべく臨戦体制に入り、僕は解放されます。


「こらぁぁぁぁ!何をしているかぁぁぁぁ!」


突如、先生の怒声が鳴り響き、その場は収まりました。


その後、親を呼ばれ、僕の親は小野さんの親に平謝りしていました。

顔をボコボコに腫らしているけど、僕は加害者です。

小野さんは、教室に入ってきた僕の顔に驚いて目を背けました。


親は、何やら必死に、本当はこんな事をするような子じゃないんです。

気が弱くて周りに流されて…などと言い訳をしていました。


図星なところが、僕を惨めな気持ちにさせました。


小野さんはその後、学校で一度も僕に絡むことなく卒業しました。


今になって考えてみれば、あの時以来、僕はどこか魂が欠けている感じがするのですが、こうして犯罪に手を染めるところを躊躇うようになったところをみると、あの出来事は良い経験だったのかもしれません。


久しぶりに酔っ払って帰りました。

貯金はもう笑うような残高です。


いよいよ持って、僕の世界の終わりが近づいて来ました。

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