第27話

地上150mの展望台からは外の夜景はダイヤモンドの輝きに見えた。

東京タワーの中はカップルや、家族連れで賑わっていた。

暖は望奈の手をゆっくり握った。

暖かな温もりを感じて望奈は目を閉じた。

暖と手を繋ぐのは初めてだった。

春の木漏れ日のような柔らかさに包まれていた時、声が聞こえて来た。

「ちょっとあれ、吹石暖じゃない?一緒にいるのって菅野望奈?あの二人付き合ってるの?」

女の子達のグループが囁いている。

望奈は不安気な顔になった。

そうだ。こういう場所に来たら噂にならない筈はないのに、私考えなしだった……

望奈の手が微かに震えたのを、暖は敏感に感じ取っていた。

「気にするなよ。言いたい奴には言わせとけばいい」

暖はそういうと、安心させるように握った手の力を強めた。

望奈と暖は窓ガラスの前に立った。

ダイヤモンドの輝きが眼下に広がっている。

「綺麗…… 」

その時、暖の唇がそっと望奈の唇に合わせられた。

望奈はゆっくり目を閉じた。

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