第26話

望奈は初めて暖のマンションにやって来た。

部屋番号を押すと、玄関のドアが開く。そしてエレベーターで12階まで上がった。

ドア横のチャイムを改めて鳴らすとドアが開いて、暖が出て来た。

暖は白いセーターにジーンズと言うラフな格好だった。

1LDKの間取りだった。

12畳ほどの広いリビングにはゆったりとしたベージュのソファーと白いテーブル。そしてダイニングの白いテーブルがあった。

フローリングの上に敷かれたラグとカーテンは薄いグレーだった。

窓際には大きな観葉植物があった。

早速ソファーを勧められ、望奈はゆっくりと座った。

「コーヒーでいいかな?」

白いキッチンから暖が声を掛けて来た。

「私、やるわ」

望奈は立ち上がろうとする。

「いいから座ってて」

少し経って白いマグカップを二つ持って暖がやって来た。

「暖は白が好きなの?」

「白はどんな色にも染まるだろ?俺もどんな役でも熟せるようになりたいから」

「私は薄いピンクが好き。とても優しい色だから」

二人の目が合った。

暖は優しく望奈を抱き寄せた。

望奈は暖の腕の中で静かに目を閉じている。

暖の温もりをセーター越しに感じる。

言葉なんか要らない。

しばらくこうしていたい。

「望奈」

柔らかな光のような優しい暖の声。

望奈は黙って更に身を寄せた。

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