第15話 繰り返すリトライ

 そんな感じで、4,5回繰り返した。

 私は、4回イチさんに殺されて、残りの1回はバケモノに喰われた。

 そしてその度にあの真っ暗な空間にいて、リトライを繰り返した。

 何度繰り返しても、誰も救えない。

 無力感が心を押しつぶし、どこかでこのまま全てを諦めたくなる自分がいる。

 今回が丁度6回目だった。

 これが最後のチャンスかもしれない――そう思うと、逃げ出したくなる気持ちと同時に、なんとしても真実にたどり着きたいという強い思いが交差する。

 「イチさ、」

「みゆきさん」

 イチさんの顔には、焦りの色が見えた。

 普段の穏やかな表情とは全く異なる、強い緊張が滲んでいる。

 彼も何か、気づいているのだろうか?

 「なにか――隠してますよね?」

 驚いた。

 なぜ、どうして、そんな言葉が脳内を支配した。

 まさか、彼が気づいているなんて。

 秘密が暴かれるかもしれない不安に、心臓が早鐘のように打ち始めた。

 何度繰り返しても、私だけが同じ結末に戻され、誰もこの異常に気づかない。

 私が抱える苦しみを共有する人は、誰もいないのだろうか。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る