第12話 まずは盾の使い方から始めナイトな
VRMMOとしてプレイするための機材を整えた俺は、海上都市ルミンサにて再びロリっ子リリサと再会した。そしてリリサのメインクエストを手伝う羽目になり、フレのヒヨと共に森の国クーリタニアへ向かい目的のダンジョン入り口までやって来た。
「ヒヨさあ、何度来てもここって気味悪いよな」
「まったくだ、確かにこのダンジョンはタンタラと名付けられ、西洋風に言うとカタコンベ、つまり地下墓所だからな」
「冒険者のレベルが上がってくると、再びここへやって来ることになるけど、クリアする頃にはもうさ……」
「春樹わかるよ、あの勇者の首! トラウマもんだよな!」
俺たちの会話をジレながら聞いているロリっ子リリサは、右手の人差し指を俺たちに向けてきた。そして。
「いい加減にしてよね、ネタバレって失礼でしょ。アタイだって怖かったんだから」
ネタバレとか、この言葉から分かるように、リリサはこのゲームをある程度の高レベルになるまで経験済みのようだ。それが自身のプレイなのか、
「いやあ、ごめんごめん。それじゃあアナキン、このダンジョンのリ・クリエイト(再作成)頼むは」
「かしこまってかしこ~。でさ、今回はゲームパッドは使わないでOKかな?」
俺の魔ペットアナがこう聞いて来たのは、ヒヨのような通常プレイだとマウス・キーボードかゲームパッドを使うが、俺の場合はVRのためのガジェット装着済みのため、ハンドジェスチャーとアイコンタクトだけでゲームプレイが出来るようになっている。だがそれは、まだ開発中のため、こうやって俺たちがテストしている段階なのだ。
「ああ、そうしようと思う、念のためパッドは脇に置いてあるが、あくまで緊急用だ。VRシステムがバグったら困るからな」
「了解です。それでは春ちゃんの使うアクションは、防御は左手で盾を上げる動作、攻撃は右手をふるう動作で発動するよう調整します」
「なるほど、それでスキルやアビはどうやって切り替えるんだ?」
「それはですね―――」
アナの説明によると、防御と攻撃だけでプレイが成り立つよう調整するが、イレギュラーが発生したら使いたい挑発や無敵化などのアビやスキル名を叫べば、AIが瞬時に対処し発動してくれるというのだ。なんか中二病っぽいが、それはそれで良いかも。
更に、攻撃や防御力を高めるための連続アクション、つまり通称コンボも連続で盾を上げたり武器をふるったりするだけで発動するという。パッドのプレイでもアクションをゲーム内マクロに登録すると、ボタン操作で同様なことが出来るが、シチュエーションによっては不発に終わる。それは、タイムラグなどその他要因による。
その点アナに搭載されたAIは強力で、ほぼ確実に動作させることが出来る、なぜならリアルタイムでアナが見守り修正してくれるからだ。まさに俺の強力なバディ(相棒)と言えよう。
「おい春樹、なんかすごそうな事をやろうとしてるんだな、俺もやって見てえ」
「いずれ、このAIが完成したら出来るだろ、たぶん」
「それじゃあ、リ・クリエイトしますわよ~!」
「たのんだぜ相棒!」
俺のバディ、AIコンテンツクリエーターのアナちゃんは、アドリブで必要もない呪文を唱えた。場を盛り上げる彼女なりの演出なのだ。
「たんたら、たるたら、きんも~ぉ!」
「なんか、まんまだにゃぁ~」
「たしかに」
ヒヨがそううなずくと。
《びぃ~よん、ぐぅ~わん、どるるるぅ~ん》
オドロオドロしい効果音と共に画面が白黒になって点滅すると、エレベーターが高速で下がるような無重力感を伴った。スタンと足元に重力を感じると、目の前にはカタコンベというには不似合いな空間が広がっていた。そこはまるで闘技場を見下ろす観覧席の通路にいるようである。
◇◇◇
「おい見ろよ」
この闘技場のようなダンジョンはドーム状になっている。俺が天井を見上げると、そこには紫色のオーラをまとったブラックホールを連想させる黒色の大きな球体が、下方から伸びてくる幾本かの腕に繋がれていた。
「まあ、このダンジョンの仕掛けは、今までと見た目はおんなじだな」
「ヒヨさん、ここは春ちゃんの練習のためにって言う感じですからね、見た目はですが」
アナは何やら謎めいたフォローを入れるが、まさか難易度は通常かそれ以下にしているだろう。
「そうなのか、アタイの時とも同じに見えるにゃぁ~」
「なら、安心だな、ほいじゃ行こうか」
俺はPTメンバーを先行する形で、タンクの役割をはたすため通路を駆け出して行った。そして、盾と武器を上手く使い分けて進んでゆくと、先ほど見降ろしていた球体を支える、下方の腕の付け根の所にたどり着いた。順調である。
「あそこに敵がたむろっている。数が多いから、俺が敵を全部引き付けるまで手を出すなよ、出すなよ」
俺は二度注意した。大事なことだからな。
「お~らおらおら―――」
いきなりロリっ子リリサは、呪文を唱えだした。
【コテンパンチ】である。
「加速モード・オン。春ちゃん急いでね」
アナちゃんはどうやらアドリブで俺の強化をしてくれてようだ。その結果リリサの呪文はおろか全てがスローに見え、俺はすんなりコンボを決め敵対心を稼げた。そして俺は、効果が切れる前に敵を一体も残さず、回りに集めることに成功したのだ。すると良い感じでリリサの放った【コテンパンチ】が次々と命中し、敵の動きが鈍くなった。
「私がとどめを刺しますね」
斜め上方に弦を引き絞り一度に複数の矢を放つと、次の瞬間には敵全体に矢が降り注いだ。吟遊詩人となったヒヨの必殺技である」
《 ぎょえぇ~~~ぇっ 》
断末魔の雄たけびをあげると、中ボスと回りのモブたちは倒れ伏し、たちまちモザイク状になると、徐々に消えていった。
「いつもながら鮮やかだなヒヨ」
「まあな、春樹のギャザクラと違い、これが俺の楽しみだからな」
「わかる~っ!わかるにゃあ」
リリっ子リリサも、ヒヨとは同類のようである。
敵をせん滅すると、上方の大きな球体へ延びる腕の付け根にある球体に触れることが出来るようになった。その球体は天井に浮かんだ大きな球体の縮小版だ。
「アタイ知ってるよ。おいしょっと」
ロリっ子リリサが小さい方の球体触れると、繋がっていた水色の腕がす~っと消えていった。
◇◇◇
俺はVRシステムに慣れてきて、順調にダンジョンを攻略して行くと、残った最後の腕の所までやって来た。そこには、前のは一本だった腕が、ここでは二本で繋がれていた。さらに、紫がかった透明に近い色の、封印された魔法のカーテンで遮られていて中へ入ることができない。
「ここも知ってるにゃ、仕掛けは奥だ、おくぅ~」
ダッシュで向かうロリっ子リリサを、俺は必死で追いかけた。毎度の展開にはあきれるばかりだ。するとそこには腕が繋がっていない、例の小型の球体が鎮座している。ロリっ子リリサが言うように、これで封印を解けるはずだ。
「みなさん、ここは俺がやっちゃいますよ、ゲージが満タンなんで」
そう言うとヒヨは、満タンになると発動できる、ゲームに用意された超絶攻撃技を発動した。すると一瞬んで球体を守るモブたちは溶けて行った。アビ驚嘆である。
「ヒヨさんすごいです~、春ちゃんよりいいかもぉ~」
「おおそうか、ヒヨ、良かったな」
俺は少し焼けてるのかもしれない。
気を取りなおして、封印を解く護符を手にした俺は、カーテンの所に戻る。二つの球体を守る中ボスとザコどもの向こうには、ラスボスらしいモンスターが待ち構えていた。だが、そこへ向かうための橋が欠け落ちている、おそらく残された二本の腕がカギを握るのだろう。
そうだ思いだした。俺は護符をかざした。するとカーテンがふ~っと消えてゆく。
「あと少しだな、アナキン、またさっきの加速頼むは!」
「OK了解丸!」
ヒヨは封印が解かれカーテンが消えると、あらかじめ事態を想定して抑えていた手を離した。すると、ロリっ子リリサが奇声を発して飛び出した。グッジョブだヒヨ!
「ぎぃ~~、にゃぁ~~~っ!」
毎度の雄たけびをあげると、貯めていた【コテンパンチ】を突撃しながら打ち放つが、俺は既に敵を集め終わっていた。
つづく
◆◆◆
私がプレイしていた(休止中)FF14でも、ある程度のスキル回しやコンボは、アクションを15行までのマクロへ登録して、それをマトメたアイコンを出しておくことにより、クリック一発で実行できる。めんどくさがり屋の私には便利機能だ。ただし、マニュアル操作の方がコンマの世界だが時間短縮できるため、高スキルのプレイヤーたちからは嫌われている。
すこし愚痴っぽくなりますが、読んでくださる方が少なく心がおれそうです。だけど、読まれないのは面白くないだけで、私の努力が足りないだけなのです。分かってはいますが、もしよろしければハート・コメント、お情けでもいいのでお星さま戴けると力が湧いてくると思います。よろしくお願いします。
夏目吉春
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