第8話 明(あきら)と翔(かける)

―――――――――。


ある日の朝、いつもの駅。

少し寒くなってきてコートを来て会社へ向かっていた。

電車が来るまで待つ間…スマホを持つ手が震える。


寒い…寒い……。

なんか体がふわっとする…。

やばい…これ…。


すると誰かにぶつかった気がして、


「すみません…」と力なく謝ると、

「お前、熱出てる。病院行くぞ。」




そこからあまり記憶がはっきりしてない。



―――――――――――――――。


「……目、覚めたか?」

「かけ…」

「あぁ、ちょっと待ってろ。呼んでくる。」

「いい。」

「あぁ?」

「行くな。」

「なんでだよ。」


僕は無理やり重くてたまらない体を起こそうとすると、


「寝とけよ。」と言いながら起こしてくれた。


僕は…ほんの一瞬だった。明の温かさに包まれた。

そして…僕から…。


「…稜太、ごめんな。あの時。俺、結局捨てられたわ。『男が好き』。たったそれだけの理由で。」

「それだけじゃない。」

「?」


明の眉が少し動いた。


「明じゃないと満たされなくなった…。他じゃダメなんだ…。明じゃないと…。」


直後頭がグラグラして意識を失った。




――――――――――――――――――。



「…りょうた。」

「かけ…」


「……」

「『明』は帰ったよ。」

「そっか…」

「呼ぶ?」

「いい。かけがいればいい。」

「…りょうた、ごめんね。」

「なにが。」

「ずっとそばに居てあげれば、明と付き合わなくてよかった。」

「…俺こそごめんな。あいつ消せなくて。」

「本気で好きだったんだから仕方ないよ。」


「……。」

「……。」


僕は強引にかけるを引き寄せた。


「逃げんじゃねーぞ…。かける。分かってんだろうな…」

「それは僕のセリフだよ。取らないでよ。」

「…ごめん。」

「絶対に戻らないで。僕が満たすから。」



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