「第13話」呪い
夜。ベッドの上。目がギンギンに冴えている。
「……痛みで、寝れねぇ」
全身筋肉痛。寝返りどころか呼吸するだけで体中がじわじわと痛むこの状況は、どう考えてもあのバーサーカー女二人組とのクソみたいな戯れのせいである。
あいつらから逃げながら教室に戻るのは至難の業だった。何度下半身に危機を感じたことか……あと一瞬スタートダッシュが遅れていれば、俺は泣きながらベッドに潜り込んでいたことだろう。
(なんか思い出したら腹立ってきたな。明日会ったら文句言ってやろう)
真っ先に思い浮かんだアポロちゃんの表情は、いつもどおりツンとしていた。
(……)
──そんなわけねぇだろ、気持ち悪いこと言うなよ。
──まぁなに勘違いしているのか知らないけど、私とそいつはただの主従関係。飼い主と犬、恋愛感情なんて無い……そうだよな? あんコペ。
「照れ隠しじゃ、無いよな……あれは」
自分の口から言葉として出して、初めての胸の奥が物凄く痛かった。穴が空いたようで、そこには引力があって……内側から俺を潰しながら吸い込んでしまうんじゃないかと思ってしまうような、引力が。
アポロちゃんは俺を、本気で飼い犬としてしか見ていないんだろうか?
いや、そんなことはない。彼女と俺は友達だ、彼女が素直に友達という単語を使うのが恥ずかしいだけなんだ……そうだ、俺と彼女は友達なんだ。
「……畜生」
それでいいじゃないか。
それで妥協しとけばいいじゃないか。
「好きだよ、くそったれ……!」
枕に顔を埋め、決して出してはいけない言葉を雑音として殺す。
これは聞かれてはいけない、言ってはいけない……彼女の耳に、脳に、これらの情報が、俺の胸の奥に抑え込んでいるゲロ以下の劣情をぶちまけてはいけない。
なぜなら俺は分かっているからだ。
きっと彼女のことが好きだということを自覚し、それを彼女に想いとして伝えたその瞬間……俺と彼女をかろうじて友人として繋ぎ止めている糸が、いとも容易く向こう側から断ち切られてしまう……そんな、当たり前すぎる最悪の未来を。
回避するには言わなければいい、悟られなければいい。
今まで通り接する、今まで通りの距離感を保てば。
「どうすればいいんだよぉ……!」
それでも”もしかしたら”を考える。
勇気を持って踏み出した一歩の先が、光に満ち溢れているかもしれないという……そんな、本当は分かりきっているはずの愚かな考えを。
「読んでいただいた皆様へ」
この作品は諸事情によりこれで打ち切りとなります。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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