♣︎玉森翠葉の現況レポートその2。
「また来たの?」
「それが俺の仕事だからね。」
玉森翠葉の弁護人、柳田は三回目の玉森翠葉との面会に来ていた。
「白嶺刹李は、首を綺麗に飛ばされていました。胴体から頭までの距離は二十メートルもあって、血飛沫の跡から察するに、頭も胴体も飛ばされてから一切誰も触れていないのがわかったらしいです。。二十メートルという距離。相当猛烈な力で飛ばされたに違いない。だが、その切断面はまるでプロの寿司職人が研ぎ澄まされた包丁でマグロを切りつけたように、骨までとんでもなく綺麗だったそうです。」
「それが何?」
「何で切りつけたら、そんな事があり得ると思います?」
「それを調査するのが貴方達の仕事でしょ!?」
「俺の仕事は君の弁護で、探偵や刑事じゃない!君が何かを知っているんじゃないかと聞いてるんです!」
「言ったところで、あなたはそれを受け入れられるの?」
張り詰めた空気が、面会室を包み込んだ。
柳田は、唾をごくんと呑み、口を開く。
「それが君の弁護の為になるのなら、俺は受け止めます。」
「私、違う世界から来たの。」
「は?」
急に玉森翠葉は語り始める。
「そこは死神の世界で、その世界にある武器は、死神の鎌に近い、命を刈り取る能力があるの。」
「え…と…。」
「その武器で、刹李君は首を飛ばされたのよ。私も持っているけど、私じゃない。別の誰かがその武器を使って刹李君の首を吹っ飛ばした!それは私の役目なのに!!」
ドン!!と、玉森翠葉は机に拳を叩きつけた。
「じゃあ凶器は…、その死神の世界で用いられる武器と?」
「そうよ。限られた者にしかそれは使えないの。だから私がここを出る事ができれば、真犯人を絞れるはず。」
「ではあなたはその武器が使える限られた者だと?」
「だって私、死神だから。」
玉森翠葉がその言葉を言った直後、柳田の頭上からアタッシュケースが出現した。
すぐにアタッシュケースの存在に気づいた柳田が叫ぶ。
「何をしたっ!?」
「見ての通り、私は何もしてないわよ。」
バカッ!とアタッシュケースが開き、そこから飛び出したのは、柳田の身長を超える程の大きな鎌。
「じゃあ何だこれはっ!?」
「これから死ぬあんたに、関係ないわ!」
柳田の目に映る鋭く光る鎌刃が一人でに動き、柳田の首にかけられる。
「うわあっ!!」
「今すぐここから私を出せば、見逃してあげる。」
「そんな権利、俺にはない!第一こんな事をしたら、君の弁護が出来なくなる!!」
「お前の弁護が私の役に立つとは思えないわ!」
仕切り版越しに玉森翠葉は柳田を鋭く睨む。
その意思に応えるかのように、鎌は更に柳田の首に強く当たり、めり込み始める。
「わかった。一日待ってくれ!できるだけの事はする!だからこの…、鎌を…、止めてくれ…。」
柳田の首が赤く変色し始め、皮膚を切り裂く直前に、鎌は首から離れ、出現したアタッシュケースに戻り、柳田の目の前から消滅した。
「一日だけよ。今から二十四時間以内で。もしその間に私がここを出る事が出来なければ、あなたがどこにいようと、家族団欒で飯を食べてる最中だろうと、私の鎌があなたの首を掻っ切るわ。」
柳田は赤く変色した首をさすりながら、玉森翠葉に問いかけた。
「君…、本当に何者なんだ…?」
「さっき言ったでしょ。死神だって。」
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