第8話
沈黙が重苦しい。何か話そうかと口を開けた瞬間、橋本さんが口を開く。
「腹減った。どっかで飯食おうや」
「そうだな。帰って何かを作るより、その方が良い」
初めて、白石さんと橋本さんの意見が合致した。
白石さんは左車線へ車を移動させ、車は近くにあった回転寿司屋の駐車場へと進入。そして、空いている駐車場スペースに車を後退させて駐車。
シフトレバー等を操作してエンジンを切った白石さんは、小さく溜め息を吐いた。
表には出さないが、彼も彼で疲れているのだと思う。「大丈夫ですか?」と聞こうか迷ったが、大丈夫だと言われそうなので止めた。
車から降りて、店内へ入る。
白石さんが回転寿司屋へ入るとは意外だった。でも、高そうな寿司屋よりはこちらの方が私には性に合っている。
「白石さんは回転寿司屋へよく来るんですか?」
受付の機械を操作しながら聞くと、白石さんは右腕に付けている腕時計をチラッと見て、
「いや、あまり来たことがない」
と、微かに頬を緩ませた。
夕飯時なためか、店内は多くの客で賑わっている。待ち時間も結構あり、長椅子はお客で埋め尽くされて座る場所がない。
私達は、ガチャガチャの近くで立ちながら待つことに。橋本さんはスマホゲームに夢中になっているし、白石さんはスマホで何か検索しているようだ。
私もスマホで小説の続きを読むことにした。読んでいる間は待っていることが苦にならないし、席が空いた後も順番が来るまで長椅子に座って読み続けた。
すると、自分達の番がやってきた。店員さんに通されたのは窓際の奥から三番目の席。
左の座席に白石さんが座り、右の座席に橋本さんが座った。
どっちに座るべきか、非常に悩む。正直、どちらでも良いのだが、揉め事は極力避けたい。
「お前、こっちに座ればいいやん」
座らずに立っていると、橋本さんが口を開いた。彼は既にサーモンを食べている。
「沙羅、こっちに座れ」
思わね助け船が出たと思いきや、白石さんも同じようなことを言った。彼は、小皿に醤油を垂らしている。
結局、振り出しに戻った。悩んでも、誰も助けてはくれない。どちらにしようかなできめる他ない、と私は心の中で唱える。
どちらにしようかな、天の神様の言う通り。
決まった。橋本さんの方だ。
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