第4話

写真だ。それも、私と岩島さんが写っているものばかり。

 驚いた顔でそれを見ていると、浦原さんが口を開く。


「失礼ながら調べさせていただきました。あなたがどう思っているかは知りませんが、第三者の目には付きまとわれているようにしか見えませんよ?」


 ハッキリ言われると、そんな気がしてならない。けれど、浦原さんは佐々山さんを利用して私を殺そうと企んでいた。だから、とてもじゃないがそんな人の話は信じられない。


「でも、あなたは佐々山さんを利用して私を殺そうとしてましたよね?」

「佐々山は知りませんが、我々はあなたを殺そうと企んだりしていません。仮にそうだとしたら、あなたはとっくに死んでいますよ?」

「でも、高橋さんに恭宏を殺させたじゃないですか?」


 私が力強く言うと、浦原さんは溜息を吐いて、


「なんのことです? 高橋とはどなたのことでしょうか?」

「岩島さんが、高橋さんと佐々山さんが共謀していたと言っていました。あなたも知っていたんじゃないんですか?」

「ですから、知りません。それは、佐々山が勝手にしたことです」


 私が問いただすと、浦原さんはハッキリと答えた。そして、彼は話を続ける。


「あなたは犯罪者の話を信じるのですか? 俺にはあなたが岩島に洗脳されているようにしか思えません」

「……洗脳?」


 浦原さんが言った言葉の意味が理解出来ない。

 洗脳なんかされていない、と自分自身に言い聞かせる。

 けれど、浦原さんの話は私の心の中につかつかと入り込んでくる。


「岩島がよく使う手口です。“俺の気持ちが分からないのか”というようなことを奴に言われたりしませんでしたか?」


と聞かれて、ホテルでのことを思い出した。

 確かに、岩島さんから『なんでお前はワシの気持ちを分かろうとせんのや』と言われた。それから、彼に対する気持ちが徐々に変わり始めたのは事実。でも、それが洗脳だと言われても私には分からない。

 返事をせずにいると、浦原さんはやっぱりというような表情をして、


「その様子では言われたようですね。では、暴力を振るわれそうになったことは?」


 一度だけだが、それもあった。けれど、はいとは言えない。


「あるんですね。このようなことを言うのもなんですが、早く逃げたほうがいい。でないと、奴に殺されますよ?」


と言った浦原さんが渇いた喉を潤すようにコーヒーを飲んだ。

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