少女
私は具合が悪くなり、学校を休んだ。それで病院に行ったけれど、悪いところはなかった。
お母さんは詳しく調べなければわからない病気なのかもと心配して、私をもっと大きな病院へ連れていった。しかし、そこでの検査でも、やっぱり何の異常もなかった。
ところが、お母さんはその大きい病院で、何か用事があるようなことを言って、私を待合室に残してどこかへ向かった。ドラマなんかだと、医者と話をして、「本当はがんです」といった告知を受けそうなシチュエーションだ。私は居ても立ってもいられず、後をつけていくと、思った通り診察室に入っていった。
私は気づかれないようにこっそり耳を傾けた。するとお医者さんは、具合が悪いのはストレスが原因だろうと説明した。重い病気ではなくて、ほっとした。
家に帰り、リビングでゆっくりしていると、お母さんが話しかけてきた。
「顔色、良くなったんじゃない? やることがないなら、本でも読んだら?」
「うん。でも、いい」
「そうだ。新しい本、買ってあげようか?」
「いらない。今、欲しいのないし、図書館の本で十分」
「そう? 遠慮することないのよ」
「してないよ」
「本当に?」
「うん。ちょっと眠くなってきたから、寝る」
「じゃあ、おやすみ。明日も駄目だったら、無理に学校に行かなくていいからね」
「わかった」
私は自分の部屋に入って、ベッドに横になった。
あのお医者さんが話していた通りなんだろう。私は、勉強もその他の行動も、ちゃんとやらなきゃいけないといつも思っていた気がする。
そのなかでも一番無理をしていたのは、本を読むことだ。お母さんも先生もたくさん本を読んだほうがいいとしょっちゅう言っていて、今までいっぱい読んできて、好きなつもりになっていたけれど、よく考えたら私は読書がそんなに好きじゃない。嫌いではないが、本を読むのは疲れるし、自分の意思でできるだけ厚い本を選んでたけど、大人たちに良く見られたい意識なんかがあったんだろう、実はけっこう苦痛だった。
これからは、とにかくたくさん、とにかくページ数が多いものを、ということはやめて、本当に興味を持った本や、読んだほうが良さそうだと本気で感じた本があったときだけ、読むようにしよう。
あれからしばらくの期間、本から距離を置いたら、少し読書をしたい気持ちがわいてきた。私は本屋へ行き、一冊の本を手に取った。
題名は、「短めの小説」といった。
短めの小説 柿井優嬉 @kakiiyuki
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