第六話 荒ぶる猛将

 転生神エオニアの手により転生した者達は、ヴァーミガルドの魔物達の長である魔王を打ち倒した。

 そして、彼らのおかげでヴァーミガルドには平和が戻りました。めでたし、めでたし――。

 という単純な話ではなかった。

 俺が聞いたところによると、魔王は特段ヴァーミガルドを征服しようとはこれっぽっちも思っていなかったそうだ。

 結論から言うと、俺を除いた転生者共は魔王を倒したという名声が欲しかっただけだ。

 そして、その宣伝効果は抜群で、エオニア神聖救世帝国という大層な名前の国ができあがってしまった訳だ。

 動画サイトはおろか、新聞や報道機関すらない世界だ。

 そう考えると『魔王を倒した!』という実績は単なる自己満足なトロフィーだけでなく、周辺諸国を従わせるにはかなり有効なのだろう。


「奴のレベルは――約450か」


 その他の能力値を見てみると――。


 名称:ゴウザエモン

 体力:13000

 魔力:2000

 筋力:5000

 敏捷:4000

 知力:91


「攻撃特化型のクラスか……」

「気をつけないとね」

「ほうほう、中々の強敵のようじゃの」

 

 セリーニは楽しそうに笑っている。

 その様子は特等席から剣闘士の戦いを眺める貴族を彷彿とさせる。

 俺も道化としてではなく、剣闘士として黎焔帝様を楽しませないとならないようだ。


「来るよ!」

「おう!」

「くたばれいっ!」


 ゴウザエモンは大剣を構えながらもこちらへと突っ込んでくる。

 常人の動体視力ではとてもでないが対応出来ない速度だ。


「くっ!」


 回避と命令するよりも速くセピアクロウが動いた。

 ハイスピードユニットにより、静止状態からでも高速での回避が可能だ。

 身体に掛かる負担についても、アンダースーツの耐衝撃性能でどうにか耐えている。


「その鎧は面白いもんだ! 是非とも剥いで、戦利品としてやろう!」

「へいへい。男に脱がされる趣味は無くてさ」

「ほざいてろっ!」


 叫びながらもゴウザエモンは大剣を上段に構える。

 いくらパワードスーツを着ていたとしても、筋力5000から繰り出される一撃は危険だ。


「させない!」


 ミキナの声と共に発砲音が鳴り渡る。

 ショート・プロヴァーズのライフル弾がゴウザエモンの脚部に当たる。


「この程度か」


 鎧の装甲を貫通したものの、ゴウザエモンの反応は薄い。

 流石に高レベルなだけあって、肉体の強度も並外れているようだ。


「そんな玩具では、この俺は止められんぞ!」


 ゴウザエモンは高々と笑う。

 奴の部下は殆どが撤退するか倒れており、旗持ちも我先に帝国の旗を捨てて逃亡している有様だというのに。

 奴は狂喜の叫びを上げつつも、今度はミキナへと肉薄にくはくする。

 ミキナは俺のようなパワードスーツやハイスピードユニットがあるわけでもない。

 見た目はか弱い美少女だ。

 だが、ゴウザエモンは一切手を抜くつもりはないようだ。


「ミキナ!」


 思わず叫ぶも、ゴウザエモンの攻撃を止められそうにない。

 奴の大剣がミキナの脳天めがけて振り下ろされ――。

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