第22話 チョコレートの唄

ゆうべ見た夢 チョコレート

お城の王様も チョコレート

並んだ兵隊さんも チョコレート


チョンチョン チョコチョコ

チョコレート



これは、矢芝の伯母が、よく歌ってくれた歌です。


矢芝の両親は共働きで、

幼い矢芝は、同じ社宅に住んでいた、伯母(父の姉)に面倒を見てもらっていました。


伯母は歌が好きで、よく歌を歌ってくれました。


幼稚園へ行く時、近所の店まで買い物に行く時。


矢芝も伯母と手をつないで、一緒に歌いました。


矢芝はチョコレートが大好きで、

買い物に付いて行くと、よくチョコレートを買ってもらいました。


その時、歌ってくれたのが、この歌です。


いったい誰の歌なのか、

いつ歌われたものなのか、

全く分かりませんでした。


幼い時は、そんな事を気にもしなかったのですが、

その先、幼稚園でも小学校でも、

TVでもレコードでも、

この歌を聞く機会はありませんでした。


結局、伯母が歌う以外で、耳にしたことが全く無かったのです。


もしかしたら、伯母ちゃんの自作の歌だったのかもしれない…


そう思っていました。


そして矢芝はすっかり大人になり、伯母も故人となりました。


そんなある時、ふとしたことで、この歌の出どころが分かったのです。


西条八十さいじょうやそ 作詩

チョコレートの唄


大正から昭和にかけて発行された絵雑誌、「コドモノクニ」に掲載されていたそうです。


あの、伯母が歌ってくれた歌詞が、そこにありました。


なんと!

西条八十の詩だったとは!

そんな正統派だったとは、思ってもみなかった!


残念ながら、楽曲と作曲者までは、調べることができませんでした。


だから、矢芝が覚えている曲が正しいのかどうかは、今でも分かりません。


でも、矢芝にとっては、伯母が歌ってくれたあの曲が、チョコレートの唄なのです。


一緒に手をつないで歌った、チョコレートの唄。


今でも覚えてるけど、歌えないよ。


泣いちゃうから。


ちょうど今、

矢芝はあの頃の、

伯母の年齢になりました。


今でも、

チョコレートが大好きです。






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