4 天野 宇宙 ⑤

 目を覚ます。知らないてんじょう。しせつじゃないみたいだ。体を起こす。アスファルトむき出しのむきしつなろくじょうまのベッドの上。部屋のかべぎわにかざられたかんよう植物は、よく見れば血まみれだった。

 確かあの後、しせつのしょくいんにとどめを刺して回って、つかれてねむっちゃったんだった。


 じゃあ、ここはどこだろう?


 よく見ると、天井のすみっこにかくしカメラがあるみたい。だれか見てる?

 それに答えるように、とうとつにモニターが点灯する。そこにはセイギせんたいシッコウジャーのレッドのお面をかぶった人が映っていた。


『君たちの質問には一切答えない。単刀直入に言おう。君たちには殺し合いをしてもらう』


 男は殺し合いのルールを説明していく。ぼくはそれに聞きほれてしまった。


 すごい! まさにゲームの世界だ!


 飛びつくように男に説明された宝箱に向かう。中に入っていたのは、見慣れたきんぞくのL字状をしたぼう。


『武器:バール』


 部屋のとびらを見る。ぼくのいた施設よりももろそうだ。この建物なら、施錠されたドアもバールでこじ開けられる。


 その時、部屋の外から女性の声がした。


「見回り」


 次はぼくが戦場を下見する番みたいだ。戦場! 言っててわくわくする。


 ドアののぞき穴からは、セーラー服の少女の後ろすがたが見える。ドアに近付いてよく見ると右うでにギプスをしていた。どうやら、咲ちゃんみたいにケガをしているみたいだ。

 ……いや、咲ちゃんのことはわすれよう。それよりも、今は殺しだ!


 部屋を出て『D』と書かれたカードでかぎを閉め、ろうかの北たんへ向かう。そこはげんかんだけど開かなかった。南たんの行き止まりはかべがへこんでいて、そのスペースに花びんにさしたバラがかざってあった。その足元には赤と緑の花びらが一枚ずつあり、他に何もない。


 花びんはいざとなれば凶器に使えそうだけど、ほかに使えるものはなさそう。

 ろうかの中央にある広間にたたずみ、考える。


 殺したしょくいんは十一人だった。

 九九六人。

 あと四人殺せば、一〇〇〇人だ。


 どうしよう、わくわくが止まらないや。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る