第2話 超人気アイドル・結城瑠実
「わ、見て見て!あのクリスマスケーキ、美味しそうじゃない!?」
「……そっすね」
はい、どうも。
つい先ほどナンパに成功した男、
いやー、まさかナンパに成功するとは思いませんでしたね。
そしてそんな俺と彼女はとある喫茶店で注文メニューと睨めっこをしている。
「甘いもの、好きなのか?」
メニューを注視する彼女へふと思ったことを聞く。
すると彼女はにこやかに頷いた。
「うん、好きだよ。というか、甘いものが嫌いな人なんていないでしょ」
「残念。目の前にいるんだよなあ」
「え?嫌いなの?甘いもの」
彼女は首を傾げて聞いてくる。
「ああ。ちっちゃい頃、マシュマロを食べて気持ち悪くなっちゃってな。それ以来、甘いものには苦手意識がある」
「な、なかなか妙なエピソードだね……」
彼女が少し引いている。
まあ、クラスの女子にこれを話した時もこの反応だったから、これが歪だってことはわかっている。
俺、好き嫌い激しいからな。
「まあ、私も甘いものっていうよりも辛いものの方が好きかな」
「へえ、意外だ。偏見だけど甘党そうだから」
「ふふっ、ビックリでしょ?」
彼女は目を細めて頬杖をつく。
マスクとメガネをしているにも関わらず、感情が分かりやすい人だな。
「よしっ、これにしよ。そっちは決まった?」
彼女を見て、思考に
俺は「ああ」と首肯し、店員呼び出しのチャイムを押した。
♢♢♢♢♢♢
「あのさぁ、君って彼女出来たことないでしょ」
「何だよ、急に。いや、ないけども」
「やっぱりねえ」
彼女はニヤニヤと笑う。
まるで俺のことを
「やっぱりって、俺、それなりに顔は良いって自覚してるんだけど……」
「うん、顔は良いね。ただ、女の子の扱い方が雑で慣れてなさそうだったから」
「17年間、女の子との接点が極度に少ない俺が女の子の扱いを知ってると思うか?」
「知らないよ。……っていうか、17年ってことは高校生?もっと年上かと思ってた」
「誰が老け顔だ」
「うん、言ってないよ?誰も言ってないからね」
俺は少し不満な表情を作りながらつい先ほどテーブルに届いたコーヒーを口に運ぶ。
「けど高校生かあ。いいなあ。私は19歳で大学生だから」
「そっちの方が意外だな。もっと若そうなのに」
「ふふっ、褒めるのは上手なんだ」
「別に褒めたつもりは無いんだが……。そっちのご機嫌取りになったのなら嬉しい限りだ」
コーヒーカップをテーブルの上に置いて、スマホの画面に目を移す。
そこにはチャットアプリでの悠輝のやり取りが表示されていた。
『悪い。急遽予定が入っちゃったから先に行くわ。メンゴ⭐︎』
いや、何がメンゴだよ。
お前が余計なことをしなければ、俺は今頃ソシャゲを楽しんでただろうに。
「お待たせしました〜」
「あ、はい。ありがとうございます」
悠輝とやり取りしているうちに、彼女の頼んだものが届いたらしい。
「……いや、デカくね……?」
彼女が頼んだのは超巨大なチョコレートパフェ。
時間内完食番組でもこのボリュームはなかなか見ない。
え、何?ここってアメリカですか?
「え、そう?言うほど大きく無いと思うけど……」
「そ、そうか……」
俺の驚いている様を見て首を傾げる彼女は、不思議そうな表情をしながらもマスクを外してパフェの一番上についているイチゴをスプーンに乗せる。
それを口に運んだ彼女は美味しいと言わんばかりに笑顔を溢す。
そこからがもう、凄かった……。
何と彼女は十分足らずでパフェを完食。
周りの客を驚かせていた。
さらに凄いのは、そのパフェを追加で2個頼んで、それもペロリと平らげたことだ。
ゲーム以外でど肝を抜かれたのは久し振りだよ……。
「ふう、食べた食べた。……あ、私ちょっと席外すから」
「おう」
彼女はそう言うとスマホを手に取ってお手洗いの方へと走って行った。
電話だろうかと思いつつ、俺も席から腰を上げる。
俺はそのままカウンターへと向かい、さっさとお会計を済ませた。
しばらくすると、彼女がお手洗いから出て来て、俺がカウンターの方に立っているのを見つけて、テーブルに置いてあるカバンを持ってこちらへと急いでやって来た。
「お金出してくれたの?何円だった?返すよ」
そう言って律儀に財布を取り出してくる。
「いや、いらない。それなりにお金は稼いでるし、比較的に安かったから」
「でも悪いよ……。私の方が年上なのに……」
「いいから気にするな。男はカッコつけたい生き物なんだよ」
俺がそう言って笑うと、彼女は少しポカンとしながらも、すぐに「ふふっ」と笑い出す。
「そっか。じゃあ、奢ってもらっちゃお!」
彼女はそう言って上機嫌に店を出て、俺もそれを追うように店を出た。
♢♢♢♢♢♢
それからも、彼女と一緒に町中を散策した。
時には適当な飲食店で彼女のブラックホール胃袋を目の当たりにしたり、ゲームセンターで俺がクレーンゲームにて景品を取りすぎて、二人まとめてそこのゲーセンから出禁を食らったりと、有意義とは言い難い時間を過ごした。
そして最終的には公園のベンチにて、二人で座っていた。
いや、友人と言えるかも微妙な関係だ。
「いやー、楽しかったなあ……。君は?楽しかった?」
「楽しいかどうかはとにかく、濃い1日にはなったな」
「……確かに、君のせいでゲームセンター出禁になったしね」
「それは悪かったよ……」
罪悪感で頭を下げると、いいよと彼女は笑う。
「このゲームセンター出禁も、きっと良い思い出……ん?良い、思い出……?」
「……今、絶対『良い思い出って言えなくね?』って思っただろ」
「いや、思っ……てはいた」
「もう少し隠せよ……」
思わず呆れてため息を吐くと、そういえばととあることを思い出す。
「そういえば、お前の名前を聞いて無かったな」
「君の名前もね。君の名前は?」
「
俺が聞き返すと、彼女は少し戸惑いの表情を見せる。
何かを迷っているような、そんな顔だった。
しかし、彼女はしばらくしてから意を決したかのようにメガネとマスクを外し、俺にその素顔を見せた。
あれ、この人、どこかで……、っ!まさか……!
ちょうどビルの掲示板に広告が流れる。
広告に映っている彼女はカラメル色の髪は一本一本が輝く絹のように綺麗で、瑠璃色の瞳は国宝級の宝石と思えるほどであり、乳白色の肌は触れれば壊れてしまうガラス細工のようだ。
フリルに身を纏った彼女は、誰よりも輝いており、この国で知らない者は居ないと言われるほどの”国民的アイドル”だ。
その彼女の名は──。
「──君は、
彼女はこくりと頷く。
「私の名前は
──────────
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