1-8.エーレタニア酒合戦!

 『酒合戦』という言葉が日本にはあるんだよ。昔の人は複数の人間が酒量を競い合うっていうのがあったみたいだね。ちゃんと記録が残ってるんだよ。


 さすがに現代では急性アルコール中毒になって、場合によっては命に関わるからやることはご法度だけどね。エーレタニアにはそんなものは自己責任だし、回復魔法でなんとでもなってしまうから、ちゃんと準備していれば特に問題はないんだ。


 くれぐれもみんなはやっちゃダメだよ!お酒は楽しく飲むものだからね!


 対戦相手はダイブだ。ナブラとローテは応援するようだね。



「さて、ここに樽ジョッキを用意したよ。酒場のおっちゃんにお願いしてビールの大樽1つ用意してもらったよ。これでジョッキ40杯分ぐらいかな?まずは・・・これで始めるとしようか?そうそう、好きな時にトイレに行ってもらっていいからね」


「いいぞ!この程度、ワシにかかればちょろいものよ!」


「そうっすよ!ああそうだ!回復魔法を使うのはNGっすよ!」


「···そんなつまんないことするわけないでしょ。それに、そんなことしたらボクがお酒を楽しめないじゃないか」


「あら~?ホント強気ね~!負けた時の悔しがる姿が見ものだわ~!」


「せいぜい吠えてろ。じゃあ···、そろそろ始めよう。そうそう、以前別の神様・・・・が攻めてきた時にもこれを言ったから、今回も宣言しとこうか。···『諸君、ボクは戦争が大好きだ』」


「うっ!?雰囲気が···、変わった···!?」


「は、はったりっすよ!」


「そ、そうね。ダイブ!やっておしまいなさい!」



 そして酒合戦が始まった。周囲には物珍しさで見ている観客が集まりだしてるね。孫たちも心配そうな顔をしているなぁ~。


 心配するな!じいちゃんはお酒には強いからな!かっこよくて楽しい飲みっぷりをしっかりと見ておくんだよ!これも孫への教育の一環だ!


 まずは1杯目。



「んぐっ!んぐっ!···ぷは~~~!うん!ウェーバー大陸のビールもなかなかおいしいね!ちょっと塩っ気のあるツマミが欲しいなぁ~」


「アキー?ちょっと準備しておこうかー?」


「そうだね、リオ。お願いできるかな?」


「おう!そっちもツマミは必要かー?」


「んぐっ!んぐっ!···いらぬ!酒だけで十分だ!」


「ほう?なかなかいい飲みっぷりじゃないか。···これは楽しめそうだね」


「余裕こいてるのも今のうちだぞ!?すぐに撃沈してくれるわ!」


「じゃあ2杯目にいこう。んぐっ!んぐっ!···ぷは~~~!これは樽ごと持って帰りたいなぁ~」


「アキー。ツマミ持ってきたぞー」


「ありがとう、リオ。おっ!?これは『なんの魔獣の肉かわからないけどとりあえずジャーキーにしてみましたが?』シリーズかな?こっちの大陸にもあったんだね~!」


「んぐっ!んぐっ!ふぅ~~。こちらはまだまだいけるぞ?」


「そうかい?じゃあ3杯目。んぐっ!んぐっ!···ぷは~~~!このジャーキーって味がボルタニアとちょっと違うなぁ~。ちょっとパサついてる···?でもこれもなかなか···」


「んぐっ!んぐっ!おい!?ペース速くないか!?」


「ん?この程度でを上げるの?こっちはまだまだいけるけど?これじゃあこの勝負は最後までやらなくてもボクの勝ちだね」


「くっ!?なめんな!次行くぞ!」


「そんなに気張らなくてもいいのに···。じゃあ4杯目。んぐっ!んぐっ!···うん。これってそこまで度数高くないなぁ~。ボルタニアの方がちょっと高いかな?でも···、この度数でここまでおいしいのもさすがだね~。どこの酒造所かな?あとで聞いてみるか!」


「んぐっ!んぐっ!ま、まだ余裕あるぜ···」



 そして次々と飲み干してお互いに10杯飲んだ。お互い何度かトイレにも行ってるよ。ボクたちのテーブルの周囲は観客で完全に囲まれてしまってるね。



「おい!オレはこっちの嬢ちゃん・・・・に賭けるぜ!いい飲みっぷりだからな!」


「じゃあ、おれはこっちのおっさんに賭けるぜ!体格からしていい飲みっぷりになるだろうからな!」



 ···ちょっとそこの人?ボクたちで賭けするの、やめてくれない?ボクが勝つに決まってるんだから、賭けは成立しないよ?まぁ、ボクに賭けてくれるのは期待してるって事だから気分は悪くないけどさ。


 あと、ボクは男だからね!!···顔は覚えたからあとで抗議しておこう。



「さて、これから第1回戦の後半戦かな?···もうちょっと休憩するかい?顔色が悪く···、っていうより真っ赤だけど?」


「き、気にするな!まだまだ···、まだいける···」


「無理せずにリタイアしなよ?余裕の差が如実に表れてるよ?」


「まだだ!まだ終わってなーーーい!」


「そう。某かくれんぼゲームの液体蛇さんと同じセリフを言ってるけど、それ敗北フラグだから。じゃあ、続きといこうか。11杯目···」



 ダイブはペースがかなり落ちてきた。ボクはまだまだ余裕だよ?最初に言ったでしょ?『まずは』って。これで終わりじゃないからね。


 そして20杯目。ダイブはなんとか飲み干したといった感じになっていた。ボクはまだまだ大丈夫だ。度数が思ったよりも低かったから水みたいなものだよ。



「は~い!第1回戦終了~。···まだ続きあるけど、やる?」


「も、もひろんらー!まら···、まらまへれなーい···」


「完全に酩酊しちゃってるけど?そこのお二人さん?止めに入らないのかい?」


「入りたいのはヤマヤマっすけど···。それは敗北と同じっす!」


「そうよ!お金取られちゃってないんだから勝たないとまずいのよ!」


「そう。じゃあ、お二人もここから参加しなよ。···ボクひとりで3人まとめて酔いつぶしてやるよ」


「わ、わかったっす!」


「3人がかりなら勝てるわよ!」


「そうこなくっちゃ。あんたは休んでな。そして···、酔いが多少醒めたら再チャレンジして、また酔いつぶしてあげるよ···」



 ボクのこのセリフで観客はドン引きしちゃった···。『そこまでやるんかい!?』って雰囲気になっちゃってるよ···。


 賭けをしていた人はやめにしちゃったね。そりゃそうだ。状況からしてボクが勝つのは確実に見えてしまってるからね。


 そして第2回戦は···、ワインだ。度数は倍以上になってるよ。こちらも樽1つ用意してもらった。もちろん、樽ジョッキで飲むよ。ワイングラスなんてこの世界には王宮ぐらいしかないしね。···あっ!ナツのお店にもワイングラスあるわ。そういえばナツはパスさんから皇城のお下がり品をもらってるからね。


 相手はローテだ。なみなみと注がれたワインを飲み始めたよ。もちろん、ボクも飲んだ。



「んっ、んっ。···おいしい。温泉はソムリエだけどワインはソムリエじゃないボクでも、これはおいしいね~。リオ?チーズってあるか、おっちゃんに聞いてくれる?」


「おう!ツマミ追加だなー。あんたはいるかー?」


「不要よ!コレ···、結構度数キツイわね···」


「ビールじゃないからゆっくりでいいよ~。まぁ、ボクはもう半分以上飲んじゃってるけどね」


「バケモンね···。でも!負けられないわ!」



 そうして1杯でローテは酔いつぶれてしまった。あとはナブラだね。ただ···、こいつは酒が弱すぎた!ジョッキ半分でノックダウンしちゃったんだよ···。



「は~い。ボクの大勝利~、ブイっ!」


「お~!じいちゃんスゲーー!」


「じーじ!すっごーい!ママからきいてたけど、ここまでつよいんだね~!あとでワインもしいれよ~!」


「ははは!モンドくん、フーちゃん!ありがとねーー!じゃあ、夕食を再開しようかーー!」



 こうしてボクが勝利して夕食を再開したんだ。ただね···、途中から記憶がなくなっちゃったんだよ···。どうも酔いが遅れて一気にやってきたようなんだ···。


 ···歳のせいかなぁ~。

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