1-6.コリー街道を行く

 グロー歴523年8月5日 晴れ


 昨日はのんびり過ごして、今日から街を出て街道を進んでいくよ。


 さて、今日のリオは···。起こし役はルメちゃんだ。


 昨日、リオは『もっと優しく起こしてくれーー!』って言ってたよね?それをルメちゃんが実行するんだって。



「じーじ。おはようのキスだよ〜!んちゅーー!」



 な、なんと!?ルメちゃんはリオに馬乗りに跨って、そして···!口にキスをしちゃった!?だ、大胆だわ···。


 さらにルメちゃんはリオの鼻をつまんでいた!これによってリオは呼吸ができなくなってるよ!



「···ん~~?んぐぅっ!?ん~~!んんーー!!」



 リオは息苦しさで目が覚めちゃったけど、目の前にはルメちゃんの顔が間近にあって見つめ合っていた!驚きのあまりに口を開けようとしても、ルメちゃんが魔法で口を開けないように塞いでたんだ!!


 リオがジタバタするけど、ルメちゃんは身体強化してしがみついたままだった!



「んんーー!?んんっ!············」


「あれれ〜?じーじ?またねちゃった〜?」



 リオの反応が···、消えた···。ちょっとぉーー!?



「ルメちゃん!やり過ぎっ!ちょっとどいて!」


「えっ?アキじーじ。だいじょーぶよっ!これで···」



 そう言ってルメちゃんは人差し指と中指の2本の指でリオのあごをグッと上げて気道を確保してから人工呼吸を始めた。うん、正しい人工呼吸法だね。


 ふーーー。ふーーー。


 口づけしながら息を吹き込むと···



「ブハッ!?はぁっ!はあっ!」


「おはよ!じーじ!あたしのおめざめのキッスはいかがだった〜!?」


「危うく死ぬところだったぞー!!なんてことするだぁーー!!」


「え~!?やさしくおこしてほしいっていったから、アキじーじのせかいのものがたりであった『やさしいおこしかた』をしたのに~!ヒック···、ヒック···」


「えっ!?あー···、そのー!ごめんなー!起きないじーじが悪かったー!許してくれーー!!」


「ルメ···、ホントにヤバい起こし方するわね···。さすがのあたしもドン引きだわ〜。ルメ···、恐ろしい孫!」



 ···これって白〇姫だよね?性別逆だけどね。孫娘のキスで起こされるジジイもどうかと思うけど···。起こすというか、窒息させて人工呼吸で起こすなんて、命の危険にかかわる起こし方だよなぁ~。みんなはマネしちゃいけないよ!リオはドラゴン族だから大丈夫だったんだからね!それでも死にかけてたけど···。



 というドタバタのおかげで今日は、全員で朝食を食べれたよ。


 さて、チェックアウトしてから門に向かい、街の外に出たよ。ここからは南西に向けて伸びているコリー街道という道を歩いて進むよ。この道の先に首都のビオがあるんだよ。


 ちょっと距離があるけど孫たちの身体強化の訓練で歩くことにしているんだ。ある程度慣れてきたらルメちゃんとアトラちゃんは飛行訓練しつつ進む予定だよ。



「リオ、こうやって歩いての旅は久しぶりだね〜」


「そうだなー。もうムーオもいないし、魔獣も落ち着いてるから多少は安心して旅できるなー!」


「そうだね〜。ボクも『エーレタニアの神の力の核』はないから、前みたいなトラブルに巻き込まれることはほぼないだろうからね〜」



 そう!今回は楽しい旅になるはずだよ。そう思ってたらレオからツッコミが入った。



「確かにアキの言う通りだけど、エレのファイアーウォールはあいつと同様・・・・・・に完璧じゃないからな。力がない状態なら強引に入る事は出来るぜ。それはキトニア連合のファイアーウォールも同様だけどな」


「じゃあ、ボクを狙ってくる異世界の神が入り込んでる可能性もあるんだね?」


「可能性はな。まぁオレもいるし、ハルとモンドとフーも全力全開・・・・で相手すれば武力行使・・・・であれば問題ないから心配いらんぞ」


「···だいじょぶ。···アキは私が守る」


「ありがとう、ハル。じゃあ安心して旅をしようね〜!」



 ···今、巨大フラグが建ったと思うよ。巨大だから『立つ』じゃなくて『建つ』だけどね。


 そう、ボクたちの様子を遠目からひっそりと見ているヤツらがいるなんて、この時は気づかなかったんだ···。




「···いた。あいつだな。間違いねえ。やっと見つけたぞ」


「思ったより貧弱そうなじゃないっすか?周りには小さなガキもいるっすね。楽勝じゃないっすか?」


「見た目に惑わされちゃダメよ〜。非常に頭が回るし、私たちがキトニア連合へ侵略に向かっても最初は弾かれたし〜」


「この世界はすでに完成されてファイアーウォールを張られてたが···、結構ずさんだったからなぁ〜。まさか完成させた異世界の神が、神界や神々の世界じゃなくて別の世界の住人になりすましてる・・・・・・・なんて、誰も気づかないし探すのも一苦労だったぜ···」


「そうっすね。強引にファイアーウォール突破して神界に侵入しても、もぬけの殻だなんて初めてだったっすよ〜。こんな頭の回る神は初めてっすね」


「うふふ。『期間別空家リフォーム完成数トップ』の腕前、じっくりと見せてもらいましょうね〜」





 ···ハァハァ。フーたんが旅行に出かけたなんて知らなくて、慌てて探し回ったら···、やっと見つけたぁ〜!!


 今すぐ笑顔でののしってのらいたい!!困り顔でののしるのもたまらん〜〜!!すでに禁断症状が出始めているし、早く行くぞ···。ハァハァ···。


 ···ん?なんだ、あヤツらは?フーたんの後をつけ狙ってる···、だと!?けしからん!フーたんにののしってもらうのはボクチンの特権だぞ!?誰にケンカ売ってるのかわかってるのかぁ!?


 ···よろしい。フーたんに気づかれないよう、あヤツらを妨害してやる。フーたんに危害を加えるようなら手段は選ばん!そして成功の暁にはフーたんに本気でののしってもらおう〜!そう思えば今から楽しみでたまらんわ〜!ハァハァ···。

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