第10話 就職したくない自分に気付く

 数日後、予想通り不採用通知が届いた。今度は担任に教室で呼び出され、教壇で伝えられた。担任は言葉にはしないが就職で二つも落ちることに呆れているような雰囲気で、まだ求人はあるから、と僕に言った。教壇で不採用を告げられることに屈辱を感じながら、内心ではどこかほっとしていた。

 実は、就職などしたくはない自分に気付いた。高校一年の時、ファミレスでアルバイトを始めたが、不器用でチーフから怒鳴られまくった。子供のころからそうで、スポーツでも何でも、物事の手順を覚えられず、言われた通りできずに怒られ怒鳴られ続けた。回りの大人から、父親から、学校の先生から、同級生から、先輩から。スポーツ、特に球技、バイトに共通する何かが決定的に嫌だった。 

チームワークというか集団への帰属心、熱狂的な忠誠心のようなものへの強い拒否感があった。

 京都から出るために就職しようと思い、そういう自分の特性から目を逸らしていたが、今改めて、そうや、自分はこんな人間やったんや、ということを思い出した。社会へ出るには、明るく前向きであることが最低限の絶対条件らしい。

 マミコは地道に堅実に短大への進学が決まりそうで、僕の方は偉そうなことを言ってるわりに就職がさっぱり決まらず、自己嫌悪に陥り、マミコのことも心から喜べず、秋から冬に掛けて寒くなってくるとともにマミコへの気持ちも冷めて行き、会う回数も減り、どちらからともなく別れを切り出していた。冬になり、一人になり、就職も決まっていない自分がいた。

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