第6話 衝撃

 Side:西園 朱音


 今、お家に帰ってきた。でも、さっき学校で聞いたことが衝撃的過ぎてこんらんしている。


 放課後になり、沙那ちゃんと帰ろうとしたところで朱莉ちゃんに呼び止められた。

 その時は気まずいなんて思ってたけど、その後、朱莉ちゃんから聞いた話を聞いて、気まずいなんて思いはどっかに行っちゃった。それは、沙那ちゃんも同じみたい。

 だって、お昼休みの時に花咲君が話した内容と似ていたから。


 あと、どうしてか朱莉ちゃんから神里君と付き合っているフリをしていると聞いた時、嬉しいとか良かったなんて全く思わなかった。

 そうなんだ。程度で終わったことに自分でも驚いている。

 むしろ、私って軽薄な人なのかな?って思って考えてみたけど


「ホントに神里君のこと好きだったのかな?」


 確かに、神里君は優しくて、一生懸命努力している。そんな姿に憧れた私は...



 あれ?憧れ?好きじゃないの?



 ...なんだ。私、憧れと好きを勘違いしてたのかも。


 神里君はモテていた。皆ではないけど、たくさんの女の子が神里君を好きだって言ってた。だから、私も好きなのだと、好きなのが当たり前だと思っていたんだ。


 じゃあ、あの日はなんで、あそこまで悲しくなったんだろう?


 好きというのは勘違いで、正しくは憧れだったのに...




 ...あっ!あの喪失感は、朱莉ちゃんが離れていっちゃうかもっていうものだ。


 朱莉ちゃんに彼氏が出来て、ずっと一緒にいた私達から離れていく悲しさを、好きな人に彼女が出来た失恋の悲しさだと無意識の内に勘違いしていたんだ!



 ...そうだったんだ!安心したなぁ。じゃあ、花咲君が私のなんだ!!



 ん?初めて?何が?何を安心してるの?何を喜んでいるの?



 もしかして...




 花咲君のこと好きになってる?


 いや!また勘違いかもしれない!!


 花咲君と話したあの日のことから思い出してみる。



「え?何これ?」


 

 なんで、こんなに胸が苦しくなるの?神里君の時はならなかったのに...


 彼の笑顔を思い出すだけで胸が温かくして


 真剣な顔を思い出すだけでドキドキして


 辛そうな顔を思い出すだけでとても苦しくなる。



 あれ?胸がドキドキして苦しいけど、とっても幸せ...


 私、


 「花咲君のことが好きなんだ...」


 そう口に出した瞬間、全身がブワッと火照る。


 でも、朱莉ちゃんの事も心配...


 花咲君が「危うく死ぬところだった」って言ったのが頭の中を巡る。


「でも、神里君が一緒にいるって言っていたし大丈夫だよね...?」


 相反する気持ちが入り混じってぐちゃぐちゃになる。




 この後もしばらくは、響と朱莉のことで悶々とする朱音であった。

 


 


 

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