第5話 共犯者

「…。」


「……。」


勢いに押されて家に着いてきちゃったけど、正直、凄く気まずい…。この子、何も話さないし…。


ひとまず私をリビングのテーブルに座らせ、お茶を出した彼女は、ソファに腰掛けて読書に耽っている。


…私と一緒に居たら、この子まで狙われてしまう。

………やっぱり、ダメだ。


「えっ、と…。」


「…どうしたの。」


「私、やっぱりここには居られない。アテは…、今から、探すから。」


「……。…それは、危ない事に、私を巻き込むのが嫌だから?」


「うん。それに、いつまでも日本には居られないから。」


「…?」


「とにかく、さっきは庇ってくれてありがとう。それじゃ、わたしは」


「私は巻き込まれても大丈夫だって、証明すれば良いんだね。」


「へ?」


「着いてきて。」


「え、ちょっ、また_」


「見せてあげる、私の魔法。」




「あなた、転移魔法が使えるの…!?」


「うん。昔、覚えた。」


「と言うかここ、どこ…?」


「フォーゲルスベルク山地。ドイツの。」


「っ!」


「…それがどうかしたの。」


「こ、ここに人は?安全なの?」


「…?…うん、ここは登山コースからも外れてるから。人は来ないよ。」


「そ、そっか…。」


「それより、見て。私の魔法。_"氷河時代"アイス・エイジ


「!これは…。」


彼女が魔法を唱えた直後、広い高原は巨大な氷河へと姿を変えた。


「凄い攻撃範囲…。それに、まるで、ここにある全てを芯まで凍らせてしまう様な…。」


「これだけじゃないよ。"氷河の深淵"クレバス


「……。」


氷河に巨大な亀裂が入ったかと思うと、割れ目に巨石や大木を瞬時に飲み込む。


「もう1回。"氷河時代"アイス・エイジ


彼女が再び、亀裂を修復する様に氷塊を発生させると、破壊音を上げて哀れな実験台達が粉砕されてしまった。


「…どう?まだ、不安?」


どうして、この子がここまでするのか。それは分からない。でも、この子は__強い。

それに、ドイツと日本を自由に行き来出来る魔法の存在…。


「…ううん。あなた、名前は?」


「碓氷水麗」


「碓氷さん、か。」


「…水麗で良い。それより、名前、あなたも教えて。」


「わたしは、水月涼音みなつきすずね。よろしくね、水麗。」


何も関係も無い子を巻き込むのは、やっぱり気が引ける。こんなに危ない事に付き合わせるのはおかしいって…分かってる。


でも…向こうから協力してくれるって言うのなら。こんなに良い人材を、利用しない手は無いよね。どうして助けてくれるのかは良く分からないけど、この際理由なんてどうだって良い。


わたしは…復讐の、お父さんのために。

_______あいつを殺すって、決めたんだから。


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