ハタチの誕生日③ハンバーグ代880円
ハタチの誕生日だもん。
今日くらい食べたいもの食べよう。
「えっと~、ハンバーグセットライスで!」
「ドリンクバーどうしますか?」
「いりません!」
一人でファミレスに入るのなんて初めて。
たまにしかしない外食が嬉しかったあの頃。
今こんなに自由なのに
お家でお母さんのハンバーグが食べたい。
四人座れる席で、一人で座ってる私はどんな風に見えるのかな。
鉄板の上でジュージューやってるハンバーグは、光輝が連れて行ってくれたハンバーグ屋さんのハンバーグより全然美味しくない。
美味しかったな、誕生日に食べたオムライス。
お腹がすいてたまらなかったのに、半分も食べれなかった。
車のヘッドライドが絶え間なく窓の雨粒を光らせるのを、ただぼんやりと眺めた。
奮発したのに、楽しい気持ちにはなれなかった。
「帰ろ…」
スマホを見たら、時間はもう23時だった。
スマホをリュックにしまい、透明の筒から伝票を取って財布を
「……」
ん?
え!うそ!
ガサガサゴソゴソ
なーーーい!
え、どこに?家?
朝はお金使ってないし、昼は美来くんの家だったし。
美来くんちからここまでは歩いたし…
あ!アイス食べたときに500円渡した!あのときはあった!
ってことは、あの辺で落とした?
どうしよう…明日学生課に聞いて
「……」
出てくるよね?
あのお財布。
や、たいした額入ってなかったしそれはいいとして、問題は今でしょ!
伝票のお値段は、880円。
やだ…
ホントにどうしよう。
お店の人に訳を話して連絡先教えて、明日必ず持ってくるって学生証見せればなんとか…
ダメだ、学生証も財布の中や…
身分証もないこんな小娘の言うこと誰が信じる?
美来くん、お友達と遊んでるかな。
RRRR RRRR
『はいはーい、スズちゃーん』
あ、飲んでるんだ。
周りから友達の笑い声が聞こえる。
『どうした?バイト終わった?』
「あのね、今ファミレスでご飯食べたの」
『おぉ、珍しいね外食』
「私お財布忘れちゃって…」
『へ?』
「美来くんごめん
お金持ってきてくれないかな?」
『あー…俺お金持ってない
今日の飲みは陽平のおごりでさ』
「ミッキーの封筒に
たぶん4万くらいは入ってるの」
『……』
「もしもし?」
『あれお金入ってなかったよ』
「えウソ!入ってるよ
この前1万円取ったとき入ってなかった?」
『何?俺のこと疑ってんの?』
え?
『そんなこと言うスズは好きじゃない』
プープープープー
うそ…
美来くんにまで嫌われたら…
やだ…!
「お客様、お下げしますか?」
「あ…」
どうしよう
「いえ…まだ食べます…」
「失礼しました」
もう嫌…
なんで私、東京になんか来たの?
困ったときに頼れる人が一人もいないじゃん。
「……」
『何か困ったことがあったら連絡して?』
神田さん…
『スーたん!』
RRRR RRRR RRRR
まだ仕事かな
週末だもん
きっと神田さんも接待とかあるよね、
RRRR RRRR
あと1回だけ
RRRR
出て…!
お願い助けて!
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