二十一、論理くん、泳ぐ私に熱くなる
今日は登校日。教室で出欠を取ったあと、プールの授業がある。通話で優衣に、一緒に学校へ行こうと誘うと、
『ごめん、私、義久と一緒に行く約束しちゃって』
と、断られた。
「なんだよぉ、優衣、私よりも沢田くんを取るのね…がっくし」
『何言ってんの、ぶんちゃんだって私より論理のほうが大切なくせに!あ、そうだよ、論理と一緒に学校行けばいいじゃない』
えっ…論理くんと?
「そっか!じゃあラインしてみる」
『ラインするのもいいけど、サプライズ待ち伏せしてみてもいいんじゃない?』
「サプライズ待ち伏せ?」
『そう。好きだったのよ〜あなた~胸の奥でずっと~だよ!』
「ずいぶん懐かしい歌だね。で、サプライズってどういうこと?」
『論理には言わないで待ち伏せするってことよ!ぶんちゃんが論理と一緒に登校したいから待ってた、なんて知ったら、論理きっと喜ぶはずだわ』
「そっか!それいいかも!」
『うん!がんばれ、ぶんちゃん!私もがんばる!』
「うん!ありがとう、優衣!」
ということで、私は今、論理くん家の近くの電柱に身を潜めて、論理くんが家から出てくるのを待っている。もうかれこれ十五分は経った。論理くん、まだかなぁ。それとも、もう行っちゃったのかな…。論理くん家に行って確かめたいけど、そんなことするのは、蝶々が蜘蛛の巣に自ら飛び込むようなものだ。と、そのとき、論理くんがやっと家から出てきた!論理くん!あぁ、今日も素敵だよ!論理くんがこっちへ来る。ドキドキ!ドキドキ!論理くん、驚くかな。喜ぶかな!にやにやが止まらない。よし、行くぞ!私は、電柱から蛙のように飛び出した。
「論理くぅぅぅぅぅん!」
私は、論理くんに向かって大きく手を振った。論理くんは、驚いたようで、一瞬立ち止まったあと、駆け足で私に向かってきた。
「池田さん!どうしたの?」
「えへへ、論理くんに会いたかったから、来ちゃった」
私が照れ笑いをしながらそう言うと、論理くんは、私を抱きしめた。近くを通ったサラリーマンが、私たちを振り返りながら見ている。見られてるよ、論理くん…!
「池田さん…嬉しい。俺も、池田さんに早く会いたかった」
「論理くん…」
すると、論理くんは、私の後ろに回った。
「あ、うなじ、剃ってある」
そう言って、論理くんは、私のうなじをこちょこちょっと触る。くすぐったい…それに、なんだか…。
「きゃははっ、くすぐったいよ、論理くん」
「え?くすぐったいだけじゃないでしょ、池田さん」
もう一度、こしょこしょ。
「あっ、きゃはっ、もう、くすぐったいよぉ…」
「なんだか、池田さん、艶っぽい笑い方してる。もしかして、感じてるの?」
論理くん…やだもう…こんなところで…。
「うん…感じてる…。論理くんにうなじ触られると、私、感じちゃう」
「池田さん、かわいい。じゃあ、舐めちゃお」
論理くんは、うなじに舌を這わせた。やだっ…もっと感じちゃう…。
「あっ、あぁぅ…論理くん…」
こんな、道の真ん中でダメだよ…論理くん…。と、そのとき、後ろに人の気配を感じた。私は、慌てて振り返った。その瞬間、夏なのに、こんなに暑いのに、この場に一瞬で猛吹雪が吹いた。
「……っ、お姉さん…」
「あら、気づかれちゃった。面白いから見ていようと思ったんだけど」
お姉さんが、私たちを蔑んだ目で見ていた。
「悪趣味なやつ…」
論理くんは顔をしかめながら、お姉さんから目を離してそう言った。
「何言ってるの。あんたね、こんな道の真ん中でいちゃついてるんじゃないよ、みっともない」
「なんだと!俺たちの自由だろ!」
「いいわ、いいわ、今がいちばん楽しい時期だものね。でもね、論理、私にも、論理の大好きな世間体ってもんがあるのよ。自分の弟が女の子と道端でベタベタしてたって聞かされたら、恥ずかしくて外も歩けないわ」
お姉さんは、二日間置いたシチューの鍋の蓋を開けたら嫌なにおいがしたときのような顔をして、言った。
「お前らはいつもいつも世間体ばっかりだな!」
論理くんは怒鳴り、お姉さんを睨み付けた。お姉さんも、論理くんを睨み付ける。
「もういいよ、池田さん、行こう。こんなやつに池田さんとのかけがえのない時間を邪魔されたくない」
論理くんは、私の腕を引っ張った。
「さぁ、池田さんとの、かけがえのない時間はいつまで続くかねぇ。論理、いつでも赤ちゃん大魔王のもとに帰ってきてもいいからね」
悪魔がお姉さんを使って言ったのではないかというような言葉が、こんなにもすがすがしい夏の朝に響き渡り、私の脳内でリフレインする。私は、しばらく瞬きすることができずに、ぼーっと、ただ論理くんに腕を引っ張られ続けていた。
「池田さん、ごめんね…。またあいつ、池田さんが傷つくことを言いやがった…!」
しばらく歩いたところで、論理くんは口を開いた。
「ううん、大丈夫」
全然大丈夫じゃない。論理くんの家族は、お父さんは違うと思うけど、お母さんとお姉さんは、確実に、私のことを忌み嫌っている。帰ってきてもいいからって…どうしてそんな酷いことを言うんだろう…。あの人たちは、人の心っていうものがないの?同じ人間だとは思えない…。私は、いつの間にか涙を流していた。
「池田さん…ごめん…本当に…」
「ううん、いいの。大丈夫だから。私、もっと強くならなくちゃね!」
私は、論理くんに向かって泣きながら笑った。涙で目の前が歪んでしまい、論理くんが今どんな顔をしているのか見えない。
「池田さんに、そんな顔をさせてしまって、ごめん…」
「私は大丈夫だよ…うっ…ひっく…えええん…」
私は、歩きながら泣いた。論理くんは、それから何も言ってくれず、私に触れてもくれなかった。もうすぐ学校だ。通学路に生徒の姿が多くなってきた。私は、こんな顔で学校に行くのは恥ずかしかったので、しっかり涙を拭いて、前を見据えた。
「あいつらは…」
論理くんが、ぽつりと言葉を発した。
「え?」
「あいつらは、世間体という名のレールの上をただ真っ直ぐ死ぬまで歩いてるだけの人間だ。なぜかって?自分の安全な位置を絶えず確保したいが為。ただそれだけの為だ。みんなと同じがいちばんと考える。しかし同じでいる様に見せながら、他人より豊かになりたいと言う極めて矛盾した自己保身の精神だ。あいつらは、『普通』という基準に合わせようとする。よく言えば、協調性があるとも言える。しかしその根底にあるのは、嫌われたくない、変わり者だと思われたくない、という心理状態だろう。そんなあいつらを見てきて、俺は心底嫌になった。だから俺は、協調性なんか持たない、嫌われてなんぼ、変わり者になって何が悪い、と思って、自由に生きてきた」
論理くんは、怖い顔で、でも、悲しそうな顔でそう長く語ると、私の手を強く握ってきた。
「池田さん。池田さんは、そんな俺と出会ってくれて、好きになってくれて、付き合ってくれて、今こうして一緒にそばにいてくれる。そんな池田さんを捨てて、俺がどこへ行こうというのか。ましてや、あの世間体ババアのもとへなんか、帰るもんか」
論理くんは、後ろから私を抱きしめた。論理くん…校門前なのに…。通り過ぎる生徒たちが私たちをちらちらと見ていく。やだ…論理くん…。
「ちょっと、論理くん…みんな見てるよ…」
「俺の帰る場所はもう、池田さんだけだよ…」
論理くんは、悲しそうな声でそう言った。論理くん、いろんな葛藤があるんだろうな…。そんな論理くんに私は、何ができるのだろうか…。みんながちらちら見ていて恥ずかしかったけれど、私は、論理くんの腕に手を添えて、ぎゅうっと強く抱きしめた。
論理くんと一緒に教室に入る。ほとんどみんなが登校してきていて、教室内は、楽しげな笑顔と話し声で満ちていた。日焼けしている子が何人かいる。プールとか海に行ったのかな。私も行きたいな…論理くんと。
「お!今話題の熱々カップルが来たぞー!」
クラスでおちゃらけ者の、峰岸(みねぎし)くんが、私たちのほうをニヤニヤと見ながらそう叫んだ。その瞬間、クラス中の声が一瞬でピタッと止まり、みんなの視線が一斉に私たちに向いた。
「み、峰岸くん!」
私は、恥ずかしくなり、困った顔で峰岸くんを見る。
「見たぞ~。二人とも、さっき、校門前で抱き合ってただろ~!」
峰岸くんは、ニタァと顔を歪ませて笑った。でもその笑いには、悪意は読み取れなかった。
「私も見たよ。もー、ラ・ブ・ラ・ブなんだから!羨ましいなぁ~」
沙希がそう言う。みんなニヤニヤと、私たちを弄ぶかのように笑っている。けれどやっぱり、みんな、悪意のない、私たちを認めてくれているかのような笑いだ。
「まぁ、いいよね!ぶんちゃんと論理は、クラス公認のカップルだから!」
優衣がそう言い、ウインクした。みんな、うんうんとうなずく。
「みんな…」
論理くんが、つぶやいた。その声は少しうわずっていて、感動しているようだった。同じく、私もだ。クラス公認のカップルかぁ…。みんな、私と論理くんのこと認めてくれるんだ。特に、あんなにみんなが嫌っていた論理くんのことを、みんな、温かく認めてくれている…。みんなはもう、あまり論理くんを嫌っている様子はない。それがすごく嬉しかった。
「みんな、ありがとう!」
私は、精一杯の笑顔でそう言った。そのあとは、みんなが私たちの席の周りに集まってきて、いろいろと質問された。
「なぁ論理、もうキスはしたよな。その先はやったのか?」
峰岸くんが、論理くんに問いただす。
「峰岸、顔が近い…。お前の想像に任せる」
「おいぃぃぃ!はっきり言ってくれぇぇ!…でも俺は、俺より先に論理が童貞捨てるなんて、どうしても許せねぇ…!」
「ねぇ論理くん、はっきり言ってあげなくちゃ、峰岸くんがかわいそうだよ」
私がそう言うと、論理くんは、もう天然はいい加減にしてくれ、というような表情で私を見つめた。
「そうだよ論理!池田の言う通りだ!だから俺に、俺に教えてくれぇぇぇ!」
「俺は聞きたくないな」
峰岸くんの咆哮を遮るかのように、坂口(さかぐち)くんがピシャリとそう言い、私の目をじっと見つめた。坂口くんは、両親が医者らしく、そのせいかクラスの中でいちばん頭がいい。いや、もしかしたら学年でいちばんかも。そしてそれに加えて運動もできるしイケメンなので、女子からかなりモテる。
「…俺、実は池田のこと、好きだったんだ。だから、俺の中の池田は、ずっと乙女のままでいてほしい」
坂口くんはそう言って、悲しそうに目を伏せた。えっ⁉︎私は、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。坂口くんって…私のこと、好きだったの?全然気づかなかった…。でも、中一の頃は結構話したりして仲がよかったし、今でもたまに目が合ったりして、あれ?って思ってたけど…まさか…。坂口くんの告白を聞いた論理くんは、いきなり立ち上がって、坂口くんを正視した。
「坂口。お前が池田さんのことをどう思おうが勝手だがな、もう池田さんは俺のものだ。池田さんのパンツの向こうは、俺だけが知っている」
論理くんが、そのよく通る声ではっきりとそう言うと、坂口くんは、ふっ、と笑みをこぼした。
「安心しろ、論理。何も手出しはしないさ。池田には幸せになってもらいたいと思ってる。論理、池田を泣かせるなよ」
「分かりきったことを言う必要はない」
「それと、今日のプールの授業で、池田の水着姿をしっかりとこの目に焼き付かせてもらうが、それは俺の勝手だよな」
「坂口‼︎」
「まあいいじゃん論理くん。…坂口くん」
ごめんね。と言おうとしたけれど、それもおかしいなと思った。
「…ありがとう。気持ちだけ受け取っておくね」
私は、坂口くんに向かってにっこり笑った。
「幸せになれよ、池田」
坂口くんも、笑ってくれた。
「言われなくても、俺が幸せにする。お前ができる分を軽く超えてな、坂口」
人に嫌われるであろう口調で言う論理くん。もう、まったく。
「あぁぁあぁぁ…論理が非!童貞!だなんて、俺は信じないぃぃぃぃ!」
峰岸くんは、さっきから叫び続けている。
「そういえば、論理のお母さんから私の家に電話があったんだけど」
優衣が、何気なくそう言った。え?論理くんのお母さんが優衣の家に電話を?一体なんで?まさか、私の親友にまで手を出そうとしたの?
「あ、俺の家にも電話あったぞ。論理のお母さんから」
と、峰岸くん。え?
「あ、俺も」
「え?私ん家もだよ」
「私ん家も」
みんな、口々に同じことを言い始める。え?どういうことなの?不思議に思って論理くんを見ると、悔しそうな顔でうつむいている。
「えぇ?なんかみんなに電話してるじゃん。どういうこと?」
優衣が言う。
「優衣。論理くんのお母さん、なんて言ってたの?」
私は、不安になって聞いた。
「特に何も言ってなかったけど、ただ、うちの論理がそちらにお邪魔していませんかって。いないって言ったら、切れた」
「俺も」
「私も」
と、みんな、口を揃える。
「それってよ、」
沢田くんが、いつのまにか話の輪の中に入っていた。
「俺のところにも電話あったけど、それって、論理が、池田の家に泊まった最初の晩だよな?」
「池田の家に泊まっただとぉぉぉぉ⁉︎」
峰岸くんがそう叫び、坂口くんの顔色が変わる。クラス中が、お泊まりの話題になりかけた。
「ちょっと待って!お泊まりの話はあとでするから、みんな、論理くんのお母さん、優衣に言ったようなことを言ってたの?」
私は、みんなにそう聞いた。みんなは、めいめいにうなづいた。どうやら論理くんのお母さんが、変なことを聞いている家はなさそうだ。
「おい、論理」
沢田くんが尋ねる。
「論理のお母さん、クラス中に聞いて回ってるじゃないか。さてはお前、無断で飛び出したな?」
「うん。いちいちめんどくさかった。知ってる人もいると思うけど、うちの母親、いろいろめんどくさいんだ」
論理くんは、床に目を落としながら、ボソボソとそう答えた。それにしても、論理くんのお母さん、そんなことしていたんだ。
「みんな、すまない」
論理くんが、すごく珍しいことだけど、みんなに素直に頭を下げた。
「迷惑をかけた。でも、それ以上のことを、あいつにさせはしないから、今回は許してくれ」
みんなは、まだ何か知りたそうだったけど、論理くんが珍しく頭を下げたことと、その言葉の中に「あいつ」という言葉が出てきたことで、ただならぬものを感じたらしく、思い思いに教室の中に散って行った。
「ふぅ、相変わらずね、論理のお母さん」
優衣が、沢田くんと二人でその場に残る。
「論理。お前、この前も聞いたが、そこまでお母さんと仲悪いんだよな?」
論理くんはそう言われると、床に落とした目をキッと上げて、沢田くんを睨むようにしてこう答えた。
「仲がいいとか、悪いとか、そんな次元じゃないんだ」
論理くんのその言葉に、重い空気が流れる。
「そうか…。まあ、お前たち、クラス公認のカップルなんだし、何かあったらいつでも俺たちを頼れよ」
「うん。ありがとう、沢田くん」
丁度そのとき、先生が教室にやって来て、出欠を取った。沢田くん、今まで意識しなかったけど、結構いい人だな。これなら、優衣ともうまくいくんじゃないかな。それにしても、坂口くんが私のこと好きだったなんて…。あんなハイスペック男子に告白されちゃった。ちょっと鼻が高いかも。ありがとう坂口くん。気持ちには応えられないけど、私、論理くんと幸せになるね!そんな論理くんは、出欠を取っている間ずっと自分のお母さんの文句を言っていたけれど、それが終わると、
「俺、池田さんの泳いでいる姿、早く見たい…」
と、言ってきてくれた。
「ありがとう。でも、ちょっと恥ずかしいよ」
私がそう言うと、論理くんはかわいいおちょぼ口を大きく開け、ぐうっと肩を上げて息を吸い込み、一気にまくし立てた、
「池田さんがプールに飛び込むときのふくらはぎの筋肉の動きや、プールサイドを蹴って顔を水につけてバタ足をしていくところや、息を思い切り吸って水に潜るところを、俺、一瞬たりとも逃さず見たい」
「論理くんらしいね」
私たちは、机の下で手を握り合う。窓の外から夏の風がひゅーっと吹いてきて、私のおかっぱを撫でた。
プールの時間になった。私は、更衣室で優衣とおしゃべりしながら着替えていた。
「ねぇ、優衣は沢田くんと付き合ってること、みんなに言ったの?」
私は、ひそひそ声で優衣に聞く。
「言ってない。知ってるのはぶんちゃんと、論理と、花菜と、沙希。あと、義久の友だちの浪川(なみかわ)くんだけかな」
優衣もひそひそ声で話す。
「そうなんだ。みんなに言えばいいのに」
「私たちは密かに愛を燃やすのよ。ふふふ」
「なんだそれ」
そう言いながら、私は水着姿になった。水着着るの久しぶりだなぁ。
「あっ!ぶんちゃん!なんか胸大きくなったんじゃないの⁉︎」
優衣が、私の胸を見ながら大声で叫んだ。更衣室にいるみんなが、こっちを見てきた。
「え⁉︎大きくなってないよ?Cカップのままだよ」
「ぐぬぬ…私はAカップなのにぃ…。でもそう?論理に揉まれて少し大きくなったんじゃないの?」
「そうかな。じゃあ優衣も、沢田くんに揉んでもらって大きくしてもらえばいいよ!」
私が大きな声でそう言うと、優衣は即座に、
「おい、ぶん‼︎」
と、目を大きくして言った。あっ!と思った瞬間、みんながざわめき始めた。
「え?沢田くん?」
「優衣、もしかして沢田くんと付き合ってるの⁉︎」
「えぇ⁉︎優衣、本当なの⁉︎」
みんなが、一斉に優衣に問いかける。
「え?ま、まぁね…。というか、ぶん!お前、よくもバラしたな~!」
優衣が、怖い顔で私を見た。
「ひえぇ…優衣、ごめん~!」
「このぉ!こちょこちょの刑に処す!」
優衣が飛びかかってきて、私の水着越しにわき腹をこちょこちょする。
「わっ!優衣、やめてよぉ…!きゃははっ!きゃはっ!あっ…あぁっ…」
くすぐったい。けど、それに加えてなんか変な気持ちになってくる…かも?
「なにへんな声出してるのよ…」
「だってぇ…あっ…あぅ…」
「はぁ…こうやってぶんちゃんは論理に調教されていくのね…」
優衣は、そう言いながら私をこちょこちょし続けた。
更衣室から出る。男子はすでにプールサイドに整列している。私たちは、背の順でその隣に座っていった。後ろから、論理くんの視線を感じる。振り向くと、案の定論理くんが、熱い視線で私を見ていた。恥ずかしかったけど、私は論理くんに手を振った。論理くんも、手を振り返してくれた。
「相変わらずよね、あの視線」
優衣が、私の耳元で囁く。
「前までは私、あの視線どうしても好きになれなかったんだけど、最近は、そうでもなくなってきた」
「そうなの?」
「義久も、同じような視線を私に向けてくれるから」
「優衣たちもラブラブだねぇ」
「ぶんちゃんとこには負けるわ」
準備体操をして、シャワーを浴びる。先生の指示でプールサイドに一列に座って並び、プールに足を入れた。
「わぁ、冷たい!」
プールの水は、体の芯まで冷たさが行き渡るくらい、冷たかった。そして、次は、肩までプールの中に入った。
「きゃははは!冷たい〜!」
みんな笑顔になり、煌めいた声を上げる。久しぶりに入ったプールはとても冷たくて、でも、とても楽しい気持ちにさせてくれた。それから、みんなで一斉にプールの中に潜ったり、水中じゃんけんをしたりして盛り上がった。
「よーし、次はクロールをして向こうの壁まで泳ぐぞ。途中で何回立ってもいいから、必ず二十五メートル泳ぎ切ること!」
私たちは、また最初のように背の順に並び、先生がそう指示をする。いよいよ泳ぐときがきた。論理くん、私が泳ぐところ、ちゃんと見てくれるかな!後ろを振り向いて論理くんを見ると、やっぱり、論理くんは私を熱く見てくれていた。前の人から順々にプールの中に入って泳いでいく。もうすぐ私の番だ。私は、久しぶりに泳ぐから、しっかり泳げるかなという不安と、論理くんが見てくれてる…。という喜びから、胸がドキドキしてきた。
「おい、太田。お前何してるんだ」
いきなり先生が声を上げた。え?私は、先生を見たあと、先生の見ている方向、きっと論理くんだろう。を見ると、論理くんは、私の少し後ろのほうに座っていたはずなのに、何故か、私の斜め後ろに座っていた。
「ちゃんと自分の位置に戻りなさい」
先生が厳しい声でそう言うと、論理くんは、ちっ、と舌打ちをした。
「バレたか。ここじゃないと、あまり見えないんだ…」
論理くんは、先生に聞こえないようにそう言った。私は、ちょっと笑ってしまった。論理くん、そこまでして私のこと見たいんだね。嬉しい。
「先生。俺、最初からここにいました」
「何言ってるんだ、さっきお前が、林原(はやしばら)に『いいだろ、見させろよ』って言って場所交換してたの見ていたぞ」
論理くんは、また舌打ちをした。
「そこまで聞いていたんですか」
「当たり前だろ。まぁ、どうしてだか知らないが、どうしてもそこがいいと言うなら、そこでおとなしくしていろ」
先生は、なんとか許してくれたようだ。そのうち順番が来て、私はプールの中に入る。振り向くと、期待を裏切らず論理くんが、私を熱く食い入るように見ている。私は、論理くんに微笑んだ。こんなに見つめられて、私って幸せ者だな。見ていて、論理くん。私、論理くんのために一生懸命泳ぐから!ピッ!という先生の笛の音を聞き、私は「すはあああっ」と(この音も論理くん聞いててくれるよね!)息を大きく吸って水の中に入る。そして、プールサイドを思い切り蹴った。腕を動かして水をかき、大きくバタ足をして、進んでいく。久しぶりに泳ぐの、気持ちいいな。論理くん、見てるかな…。息が苦しくなってきたので、私は水中から顔を出して息を吸った。論理くん、こういうときの呼吸も好きなのかな。論理くん、そろそろ泳ぎだしたかな。論理くんの泳いでるところも、私見てみたいな。あはは、私、泳いでるときも論理くんのことばかり考えてる。私の頭の中は、論理くんでいっぱい。そしてなんとか、途中で立つこともなく、二十五メートル泳ぎ切ることができた。
「すはあっ…はぁっ…すはあっ…」
プールから上がり、後ろを見ると、論理くんが泳いでいた。論理くん、ああ、愛おしいよぅ。私は、うきうきしながら列に戻った。
「よーし、次は飛び込みの練習だ。飛び込みをして、クロールで二十五メートル泳ぎ切ること!」
全員が泳ぎきると、先生は次にそう言った。飛び込みかぁ、私飛び込みは苦手なんだよね…。先生の合図で、みんな飛び込みをして泳いでいく。みんな上手だなぁ。私は不安になった。と、肩を叩かれた。振り向くと、論理くんの熱い視線。その瞳は、太陽の光で煌めくプールの水面のように、キラキラとしている。
「池田さん。さっき池田さんの泳いでるところ見て、俺、心が萌えさかった。池田さんが飛び込むところも、一瞬たりとも逃さず見て、萌えたい」
「論理くん…ありがとう。私、論理くんが萌えてくれるように、がんばる!」
論理くんの熱い言葉を聞き、さっきまでの不安はどこかに去った。私の番になり、飛び込み台の上に立つ。ピッ!という笛の音。よし!行くぞ!私は、思い切り飛び込み台を蹴り、ジャンプした。そして、水の中へ──!バッシャン‼︎私は、お腹から水に飛び込んでしまったため、水面に強くお腹を打ち付けてしまった。痛ぁぁああい‼︎内蔵を直接打ち付けたのではないかというくらいの強烈な痛みが、私を苛める。痛い…恥ずかしい…今の、論理くん絶対見てたよね…あぁぁ…痛い…でも泳がなくちゃ…!私は、つらうじて泳ぎ始め、二十五メートル泳ぎ切った。列に戻ると、先生の姿は見当たらない。先に泳ぎ切っていた優衣が、にやにやしながら私を見てきた。
「ぶんちゃん、飛び込み失敗したでしょ。ばしゃん!って音が隣の私にまで聞こえてきたよ」
「ううぅ…痛かったよ…恥ずかしいよ…」
優衣と話しているうちに、論理くんや、他に私の飛び込みを見ていた人たちが戻ってきた。
「池田ぁ、お腹痛そうだったな」
峰岸くんが、顔をにやつかせて私に言ってきた。
「ううぅ…峰岸くん…」
「でもぶんちゃん、かわいかったよぉ」
沙希が、笑顔に花を咲かせてそう言ってくれる。
「まぁな。かわいかった。な、論理」
峰岸くんが、論理くんに振る。そう、何よりも、私は論理くんの反応が気になる。論理くんは、萌えさかる視線を、私に向けた。
「池田さんが、飛び込み台を蹴るときの、ふくらはぎの筋肉がグッと動くの、俺、逃さず見てた。お腹を水面に打ち付けた池田さん、かわいかった。痛いだろうに、それでも必死で泳ぐ姿に、俺…俺…もう、たまらない」
論理くんは、何故かつらそうに、そう言ってくれた。論理くん…こんな、みんなの前で…恥ずかしいけど、嬉しい。
「おい!論理!お前、何おっ立ててんだよ!」
峰岸くんが、笑いながら叫んだ。え?論理くんの股間を見ると…大きくなっていた。
「きゃー‼︎論理の変態‼︎」
「いやー‼︎やだー‼︎」
女子たちの悲鳴が上がり、論理くんから遠ざかる。
「論理、池田見て、立っちまったのか!」
「ぎゃはははは!水着姿だもんなあ!さぞかし興奮するだろー」
男子は、爆笑しながら論理くんを囃し立てる。論理くんは、顔を真っ赤にしてうつむいていた。論理くんかわいそうだけど、こんなときにも、私を見て勃起してくれたんだ…嬉しい。
「論理くん…」
私は、論理くんに近づく。女子は、引いた目で、男子は、笑って、私たちを見ている。
「池田さん…ごめん…。今必死に素数を数えて抑えてるから…」
「なんで謝るの?嬉しいよ」
「おい、論理。池田に処理してもらえ!」
背後から峰岸くんの声が聞こえたと思ったら、私は背中を押され、論理くんにぶつかってしまった。
「わっ‼︎」
ぶつかった衝撃で、論理くんが後ろに転び、私も転んでしまう。
「痛っ‼︎」
論理くんは、大股開きで、私は、知らず知らず論理くんの股間に手を置いて、お尻をみんなに突き出すような形で転んでしまっていた。
「あふっ…うぅっ…池田さん…」
「あっ!ごめん、論理くん!」
恥ずかしいっ…!私は、体勢を整えて素早く起き上がった。
「…エロいぞ…池田」
坂口くんが、そう漏らした。
「おい!坂口までおっ立ててるぞー!」
今度は坂口くんが標的になり、先生が長いトイレから帰ってくるまで、それは収まらなかった。
休憩の時間。論理くんは、他の男子にいろいろと茶化されて困っていた様子だった。女子は、論理くんと、めずらしく坂口くんのことを、気持ち悪いとか言っていて、私は少し悲しくなった。
「まぁ、好きな子を見て勃起するのは当たり前のことよ!みんなそんなに気持ち悪がることないんじゃない?」
優衣が、他の女子にそう言ってくれる。優衣…ありがとう。
「でもさぁ、優衣、男子の…その…大事なところって、あんなに大きくなるんだね…すごい…」
「私は気持ち悪くてダメだわぁ」
女子たちが口々にそう言う中、切れ長の目をした子が鋭い視線をよこす。
「でもさ、向坂さんと池田さんは、もう、そういうことしたんでしょ?そりゃ、耐性があって当然だよね」
若松(わかまつ)さんだ。意地悪そうにそう言う。若松さんとは、前からあまり仲良くなくて、私は苦手だ。
「なによ、その言い方」
優衣が反発する。優衣も、若松さんのことを嫌っている。
「そもそも、向坂さんはクラス公認とか言ってたけど、私たちは認めてないから。ね、明日香(あすか)、聡美(さとみ)」
竹内(たけうち)さんと神崎(かんざき)さんがうなづいた。この三人は仲がいい。
「あまり調子に乗ってんじゃないよ、あんたたち」
若松さんは薄ら笑いを浮かべながら、私たちを非難した。
「ふーん。そんな性格だから彼氏できないんだねぇ、若松さん」
優衣が、若松さんに向かってそう言うと、若松さんは顔色を変えた。
「なにっ!そんなことないし!」
「結局はただの嫉妬でしょ?みっともなーい、みっともなーい。彼氏ができないからって、私たちに八つ当たりしないでくれる?いい迷惑。若松さん、スタイルいいのに、どうしてモテないんだろうね?やっぱり、顔かな?あっ、ダメダメ、そんな顔してちゃあ、もっともっと男が寄り付かないぞー。ほら、スマイル、スマイル♪」
優衣は、手を叩きながら、楽しそうに若松さんを弄る。若松さんは、怒りに身を悶えさせた。
「向坂さん…あんた…この、この、この…!」
「なに?文句でも言いたいの?まぁそりゃあ言いたいよねぇ、だってあんたの口元から垂れてるもん、文句が!でもね、文句を言うなら、まず若松さんが…」
「優衣!もうやめなよ!」
あまりにも優衣の煽りが酷いので、私は優衣を止めた。若松さんは、顔を真っ赤にして怒っている。
「なによ、ぶんちゃん。おもしろかったのに」
「お互い、仲良くしようよ。ごめんね、若松さん」
私が、若松さんに謝ると、若松さんは、
「謝られる覚えなんてないから!」
と言って、背を向けてしまった。
「ぶんちゃんは優しすぎるなぁ」
優衣はそう言って、私の頭を撫でた。
最後の自由時間は、論理くんと私と優衣と沢田くんで遊んだ。時折、見つめ合う優衣たちの視線がとても熱くて、「義久が同じような視線を送ってくる」という優衣の言葉がわかる気がした。そして、やっぱり優衣と沢田くんが名前で呼び合っているのを聞いて、羨ましくなった。沢田くんが、水中逆立ちを披露したり、優衣が、水中で一回転したり、二人はなかなか器用だった。
「ぶんちゃんもやってみて!意外と簡単だよ。足が水面から出たとき、バタ足をするとうまくいくよ」
「じゃあ、やってみる!」
私は、また論理くんが熱い視線を放つのを感じながら、大きく息を吸い込んで水面に飛び込んだ。鼻の穴に水が入ってツンとしたけれど、一生懸命顔を水の底に持っていく。そのうち、体が逆さまになって、足が水の上に出たので、思い切りバタ足をすると、足が再び水に沈んで、気がつくと、私の顔は、水の上に出ていた。
「はぁっ…はぁっ…できた!論理くん、どうだった?」
「うん。池田さんの、息を吸い込むところとか、一生懸命動く体とか、必死なバタ足とか、また萌え立ったよ」
そう言う論理くんは、またどこかつらそうだ。よく見ると、水面の上の右腕が微かに動いている。沢田くんが、それに気づいた。
「論理!てめぇなにしてるんだ!馬鹿野郎!」
と、論理くんをど突く。
「え、義久、論理今何してたの?」
「いや、これは…」
沢田くんが、重々しく咳払いする。
「男と男の話だ。さすがにここでは言えねぇ」
男と男の話?なんだろう?論理くんは、顔を真っ赤にしてうつむいていた。
プールの授業が終わり、下校の時間になった。私の家は、学校の北側。論理くんの家は東側なので、普通に帰るのなら、校門の前でさよならになる。論理くんは、いつも私の家の近くまで来てくれて、大きく回り道をして家に帰ってくれている。この日もそうして私たちは、手を繋ぎながら帰った。
「で、若松さんたちがそう言ったのか」
今日、プールのときに若松さんたちに言われたことを、論理くんに話していた。
「多分、私たちに嫉妬してるんだと思う」
「まったく。お袋にしても、そいつらにしても、ロクなもんじゃねぇ。叩き潰してやる」
論理くんは、また怖い顔になった。論理くんは、嫌な人の話になると、すぐにお母さんやお姉さんに結びついて、乱暴な心になるみたい。
「もう、論理くん、いつもそんなこと言って。なんとかやり過ごせないもんかなぁ」
「所詮は、分かり合えないものどうしは分かり合えない。力と力でどうにかするしかないんだ」
「私はそうは思わないけどなぁ。まぁ、それもそのうち収まるでしょう。論理くんは、絶対に手を出しちゃだめだよ」
「わかった。でも、いつかのように大泣きしなければならなくなったらいつでも戦いに行く」
「ありがとう。気持ちだけもらっておくよ」
私はそう言うと、よし!と、自分に気合を入れて、論理くんに聞く。
「ねぇ、論理くん。やっぱり、私のこと、文香って呼んでよ、私も、論理って呼ぶからさ」
前にそう言ったときは、池田さんを名前で呼べたもんじゃないとかなんとか言われて、断られちゃったけど…。
「この前言っただろ。俺はこんなやつだから、まだまだ池田さんを名前では呼べないんだ」
論理くんは、またあのときと同じ、暗い顔をしてそう言った。
「こんなやつって…。私が好きになった人なのに、こんなやつなんて言わないでよ…。それに、意味がわからないよ」
「俺は、ダメな子だし、どうにもならない子なんだよ。池田さんが、俺を好きになってくれても、やつから押された烙印は、消えやしない」
私は言葉を失った。ダメな子って…どうにもならない子って…。なんだか論理くんが、ロープに首を掛けて、今にも踏み台を蹴ろうとしている人のように見えた。
「論理くんは、絶対ダメな子なんかじゃないよ!大丈夫だよ!」
私は論理くんに向かって、力説した。でも論理くんの表情は、変わらない。
「そんなの……」
論理くんは、それっきり黙ってしまった。気まずい沈黙が流れる。私は、話を変えた。
「ごめんね、今の話しは忘れて!あのね、実は、お母さんから、直々に電話をすることになってるんだけど、明後日の十三日に、おじいちゃんおばあちゃんも入れて、一家で焼肉食べに行くの。それで、論理くんにもぜひ来てほしいなって」
論理くんは、私のその話を聞いて、顔をパッと輝かせたけど、またもとの厳しい顔に戻った。
「お母様直々って言うけど、それは、池田さんのお母様から、やつに電話するってことだろ?」
お母様?
「論理くん、お母様だなんて、そんな畏まった言い方しなくていいよ」
「いや、どんどん親しくしていただいているし、それだけに敬意を持って接したい」
「真面目だねぇ。んで、お母さんが電話するってことだよ」
「そうか…」
ふぅ…と、論理くんは、ため息をついて、空を見上げた。夏の太陽は、まだ空に高く、日差しがギラギラと降り注いでいる。論理くんは、空を行く雀の数を数えるように、視線を泳がせ、そして再び私を見つめて言った。
「池田さん。俺さ、俺の恥ずかしい家族のために、池田さんにも、池田さんのご家族にも迷惑をかけたくないんだ。あいつがそんな電話を受けたら、なんとほざくかわからない。そんなことをして、お母様にご不快な思いをさせたくはない。そういうことをするくらいなら、この前と同じように、なんにも言わずに家を出てくる」
「それはダメだよ。それで、この前みたいにお母さんが電話してきたりしたら、また厄介なことになるよ。やっぱりうちから電話したほうがいいよ」
「相手はババアだぞ」
「大丈夫だよ。お母さん、慣れてるから。教員やってると、変な親御さんに接するの、珍しくないんだよ」
「そうか…」
論理くんは、しばらく考え込む様子だったけど、やがて小さくうなづいた。
「わかった。いつもいつも申し訳ない。よろしく頼む」
「ありがとう!」
繋いだ手を、ぎゅっと握った。論理くんも、握り返してくれた。私たちには、困難が多いけど、支えてくれる人たちも多い。空を見上げると、雀が自由に羽ばたいている。あの雀のように、論理くんも羽ばたかせてあげたい。そのために、私もがんばらなくちゃね。私は、手を離し、手のひらを見つめる。論理くんとの愛の結晶が、キラキラと光っている。
「ねぇ、愛の結晶、前と比べてもっと輝いてるかな」
私は、論理くんに手のひらを見せた。
「うん。前よりも今、今よりも将来、絶えず輝きを増していく。それが俺たちの、愛だと思う」
論理くんは、ひまわりのような顔を見せてくれた。この夏の太陽を受けて、きらきらと煌めいていた。
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