お昼ご飯を

 「ぬはーっ!!うまい、やっぱりうまいのじゃーっ!!」


 魔王からご機嫌な声が響いている。


 魔王のハンバーグが食べたいのじゃ騒動の後、魔王はそんなにもフランクフルトが食べたかったのか、まるで騒動でのやる気がでない発言が嘘だったかのように働いた。

 その結果、三匹…


 昨日…

 はしてないから、一昨日と合計すると計十匹のゴブリンの使役を終わらせた。

  

 そして今は、少し遅いお昼ご飯を食べているところだ。


 ガブガブ、もぐもぐと…

 魔王がおいしそうにフランクフルトを食べている。


 「ぬわぁーー、ぬわぁーーっ!!」


 フランクフルトが相当気に入ったらしい。

 時たま、よく分からない言葉も飛び出している。

 言葉で言い表せないくらいにおいしいのだろうか…


 まぁでも、美味しいものを美味しく食べるのは良いことか。

 ということで、俺も昼ご飯を口にする。

 

 今日のお昼ご飯は、魔王と同じフランクフルトとサーナさんに作ってもらったサンドイッチだ。

 

 フランクフルトは日本と同じような、ザ・普通のフランクフルトで…

 そしてサンドイッチは…


 俺はサンドイッチへとかぶりつく。

 少しもさっとしている食パン…

 そこを噛みきるとまずはみずみずしいレタスへ、そしてすぐハムへと到達した。

 

 口の中で咀嚼をしていると、口の中の温度でチーズが溶け出してきた。

 それは優しい口当たりだった。

 

 味はと言うと…

 少しだけ苦いレタスの苦みと、ほのかに効いているチーズとハムの塩味…

 そしてそれらを包括しているトマトソース…

 それはもう…


 「美味しい…」


 普通に美味しい。

 そして俺がした呟きに魔王も気になったみたいで…


 「それ、おいしいのじゃ…?」

 「あぁ…、美味いぞ?」

 「そうなのじゃ…、妾もそれ欲しいのじゃ!!」

 「いいぞ。」


 俺はアイテムボックスを開いて、新しいサンドイッチを取り出す。

 そしてそれを魔王へと渡した。


 「おぉ…。これ、なんという名前なのじゃ?」

 「サンドイッチ、だな。」

 「サンド、イッチ…」

 

 お、おぉ…

 また一発で…

 

 もしかしたら、魔王も成長しているのかもしれない。

 

 「じゃー、いくのじゃ…」


 魔王は、サンドイッチへとかぶりついた。


 ガブっとかぶりつき、もぐもぐとし始める。

 そしてすぐ、魔王は目を見開かせた。


 「ほべ、ぶゔぁいほざぁ…」


 口の中にさっきまでサンドイッチだったものを含みながら何か話しかけてくる。

 

 「いや、汚いって。食べ終わってからしゃべってくれ。」

 「@&%&#%&。」

 

 また何か言ってきた。

 ただ、すぐに大人しくなってもぐもぐとし始めた。


 そしてようやく食べ終わったらしく…


 「おいしいじゃ。これ、おいしいのじゃ!!」

 「あぁ、だよな。美味いよな。」

 

 「うんなのじゃ。まず…。まず…

 「まず…?」

 「…、とりあえず、すごくうまいのじゃ!!」


 「お、おう…」


 言葉が出なかったらしい。


 「でもなんじゃ、この緑のやつ…

 それがやっぱり苦くて、妾は好かんのじゃ…」


 緑…


 「あぁ、レタスな…」

 「レタス、レタスなのじゃ。」

 「でもレタス、そんな苦いか?」

 

 力強く、魔王は顔を縦に振ってきた。


 「うんなのじゃ。苦い、すごく苦いのじゃ!!」

 「へぇ…」

 「もう、草でも食べている気分なのじゃ。」

 「草ねぇ…」


 まぁ、元々は草みたいなもんだろうしな。

 厳密には知らんけど…


 でもレタスごときで苦い苦い言ってるから、もしピーマンを食べさせたら、こいつはいったいどういう反応をするのだろうか…

 ちょっと、試してみたい気がする。

 今度、サーナさんに頼んでみようか…


 そして苦いとは言ったものの、けっこう気に入ったらしく…

 もぐもぐと、魔王はサンドイッチを貪っていた。


 


 少し時間が経ち、今は食休みの時間…


 「なぁお主、今からは何するつもりなのじゃ?」


 今からなぁ…


 「さっそくだけど、家づくり、始めてみるか。」

 「おぉ、ほんとさっそくなのじゃ!」

 「ほんとな。」


 小さな笑みがこぼれ合う。

 そしてすぐに魔王から…

 

 「でじゃ、妾たちはいったい何をすればいいのじゃ…?」

 「何を…」


 そりゃ…

 そりゃ・・・

 

 「さぁ…?」

 「はっ…!?」


 魔王が目を大きく見開かせてきた。


 「えっ、ままま、まさかとは思うのじゃが、お主、何も考えておらなかったのじゃっ!?」

 「え、うん。」

 

 「うん、じゃないのじゃ!!なんで何も考えておらぬのじゃ!!これからのことなのにじゃ…

 もしかしてお主、ひょっとして考えなしなのじゃ?バカなのじゃ?!」


 「まぁ、ただの暇つぶしだし。やるときに考えたらいいかなーって…

 というか…」


 魔王は頭を抱えていた。

 その姿に、さらにちょっとイラッてする。

 でもそれよりも…

 

 「お前にバカって言われるの、すごく腹立つんだけど…。バカにバカって言われるの…」

 

 「いや、バカにバカというのは正しい…

 待つのじゃ。お主今、また妾のことをバカと言ったのじゃ?また。」


 「そりゃ…」

 「ぐぬぬ…。また…、また、なのじゃ…。またバカと…」

 「だって、バカだし。」

 「ぬわぁーーっ!また、またのじゃ…。」


 魔王は鋭い目で見つめてくる。

 

 「少なくとも、今のお主にだけは言われたくないのじゃ!!」

 「はっ!?おま…

 「ならじゃ、これからどうするのか言ってみるのじゃ!!言えるものなら言ってみるのじゃーっ!!」


 「それは…?」

 「それは?なんじゃ?」


 ん-…


 「頑張る…?」

 「がんば…、ん?」

 「そう、頑張る。」


 魔王はあわあわと震えだし…

 そして…

 

 「ななな、なんじゃ頑張るってーーーーーっ!!!」


 そんな大声を張り上げた。


 

 ということで、これから家づくりが始まる…

 のかもしれない。


 どうだろ…

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