第33話 【はいしん】カレーを作ろう
ゴブリンを倒した後、ホブゴブリンとも戦闘したが難なく突破することが出来ていた。
もともと3人それぞれがソロの探索者だったという事もあり、このあたりでは苦戦しようも無いのは事前に分かっていたことではあった。
そして、現在9階層に到達しており、もうすぐ10階層のゴブリンキング&ゴブリンパーティーとの戦闘を控えていた。
:分かってはいたけど、ホブゴブリンも楽勝だったな。
:ここまでなら俺でもなんとか行ける。
:もうそろそろ10階層も近いんじゃない?
:現在9階層やで。
:おっ、ちゃんと階層数えてる人いるんやな。
:俺はスキル【地図】があるから今何層進んだか分かるんやで。
「へー、スキルで階層まで分かるんだな。便利なもんだ。コメントでも言ってる通り、そろそろゴブリンキングのお出ましかな…っと!」
—グギャ!
大和はコメントを見ながら、なんてことないようにホブゴブリンを刀で葬った。
:コメント読みながら作業みたいに…。
:ホブゴブリンさん…。
:ヒエッ。真っ二つやんけ…。
:ほんとに何なんだこの切れ味は…。
:俺も探索者やってるけど、普通の刀にしか見ないんだけど。
「大和さん。ルーシーちゃん。ゴブリンキングが見えてきましたよ。」
『それじゃあ手筈通り、私が魔法で雑魚を先制攻撃するわね!』
ルーシーは手のひらを相手に向け、一瞬で魔法を発動した。
《サンダーネット》!
—バチッ!
広範囲の雷属性の魔法がゴブリンパーティーを襲い、電気が伝染し一網打尽にする。
—グギャアアアア!
伝染した雷の魔法は、ゴブリンキングにまで届き、そのままゴブリンパーティーもろとも葬り去った。
:えええええ
:ゴブリンキングをサンダーネットで一撃!?
:そんなに威力の高い魔法じゃなかったと思うんですけど…。
:こんなロリボディのどこにこんな魔力が…。
:うっそだろ…。
:いくら第1エリアとはいえ、魔法で1撃とは…。
『あれ…。ここまでの威力が出るはずじゃなったんだけど…。』
魔法を放った、当の本人は予想以上の魔力が出たことに驚いていた。
その様子を見ていた大和は、あることに思い当たっていた。
(やはり俺の予想は当たっているのだろうか…。もう少し様子を見てみよう。)
「相変わらず凄い威力ですね…。これじゃあ、しばらくルーシーちゃんの魔法だけで勝てそうですね…。」
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
ゴブリンキングを倒した後、俺たちは現在セーフエリアとなる11階層で食事の準備をしていた。
セーフエリア内にはいくつかのパーティーがテントを張り休息をとっていたが、大和やルーシーのようなエルフが珍しいのか、少しざわついていた。
『そろそろお昼にしない?お腹が空いてきたわ。』
「それもそうだな。安全な場所ににいるうちに食事をとっておくか!それじゃあ、カレーを作るぞ!」
『やったー!』
「私も手伝いますよー!」
:カレーか…。ダンジョンでは定番だな。
:モンスター殺戮配信から、唐突なお料理配信。
:カレーって食材はどうすんの?
:アイテムボックスに入ってるに決まってんだろ。
:カエデちゃんの手料理食いてー。
「それじゃあ、この肉を担当するからルーシーはジャガイモ、カエデちゃんは玉ねぎとニンジンを頼む。」
大和はアイテムボックスから包丁とまな板、食材を取り出し2人に手渡し、自身は前回討伐した翼獅子の肉を目の前に取り出した。
「それじゃあ、3人前ならこれぐらいかな…っと。」
—ストン!
俺はスキル【マッサージ】の能力である《ツボ可視化》を使い、肉の切れやすい部分をで見定め、巨大な翼獅子の肉を造作もなく切り分けていく。
:肉デカすぎワロタ
:凄い簡単そうに切っていくな~。
:何のお肉ですか?
:モンスターの肉かな?
:おいしそうなお肉。
「ん? これか? この肉は翼獅子の肉だ。前回ルーシーと一緒に食べたらすごく美味しかったんだ。」
:へー。翼獅子っていうモンスターなんだ。
:モンスターって美味しいんだっけ?
:翼獅子!?
:なんか面白そうな配信やってるなと思ったらとんでもない発言飛び出して来たんだけど…。
:え!? 最近やっと翼獅子が倒されたって聞いたけど、あれってエルフちゃん達だったの!?
:意外と知らない人も多いんだな。
:↑まあ、あのアーカイブ長すぎて全部見るのは難しいでしょ。
:何故か切り抜きも出来ないから、あんまり広まってないんだよなあ。
:切り抜き出来ないってどういう事?
:どうやって翼獅子倒したんだろう? 確か攻略組でも未だに倒せてないんだろ?
「ん?切り抜きが出来ないから広まってない?カエデちゃん。切り抜きって何なのかしっているか?」
「もちろんですよ!切り抜き動画と言って、この前のダンジョン配信のような長い映像だと忙しい人はなかなか見てくれないんです。そこで、要点だけを切り出して短い動画にすることを切り抜きといいます。」
「なるほど。今度切り抜きのやり方も教えてもらおうかな。そうすれば視聴者を増やせるかもしれないんだろう?」
「そうです!今晩にでも一緒に操作してみましょう!」
「よろしく頼むよ。それじゃあ、鍋の底に油を敷いてから1口サイズにしたお肉を鍋に入れて…っと。火は魔動コンロを使おう…。」
:って、あれ?魔道具じゃね?
:いいなぁ。魔道具って中々手に入んないんだよね。
:まあ、入手方法がダンジョンの中からだけだからな。
:魔道具持ってるなんて金持ちだね…。
:魔道具が珍しいって言うけど、鑑定眼鏡持ってる人多くない?
:↑何故か分からんが鑑定眼鏡だけはドロップしやすいんよ。
:ガスが無くなっても、ドロップ品の魔石で動くから便利だよな。
:↑なるほど。魔道具があればダンジョン内でもエネルギーの心配なく快適に過ごせるんか?
:探索者なら喉から手が出るほど欲しいんだよなあ。
:前回のダンジョン配信の内容が本当ならかなり高階層まで行ってるわけだし、魔道具を持ってても不思議ではないと思う。
『ヤマト~。野菜切り終わったわよ~。って、あなたも魔道具持ってるじゃない!この前に珍しいって言ってたわよね。』
「珍しいのは本当ですよ。でも、大和さんの場合は探索者歴が長いですから…。」
「カエデちゃんの言うとおりだ。この魔道具も何年も探索してやっと手に入れた大切な物なんだぞ。そんなことよりも、野菜を貸してくれ。」
「分かりました。そういえば、カレーってどんな順番で作っていくんでしたっけ?」
「うーん。私も詳しくは知らないな。いつも料理はなんとなくで作ってる。」
『わたしも~。』
:全員なんとなくで作ってるのかw
:まあ、前回のダンジョン配信でも基本的には、スパイスのついた肉を焼いてるだけだったし…。
:でも、おれも何となくで作ってるわ。
:俺も。カレーのルーさえ入れれば何とかなるから。
:もし俺のレシピで良ければコメントで教えますよ!美味しくなると思います!
『ねえねえ、コメント見てよ!美味しい作り方教えてくれるって!』
「本当ですね。でも、私達が持ってる材料の範囲でお願いしますね!」
:分かりました!まずは玉ねぎだけを飴色になるまで炒めてください。
:お、レシピ解説始まったぞ!
:嘘のレシピは教えないでくれよ。
「分かった。玉ねぎだけを炒めて…。」
しばらくすると玉ねぎの色に変化が現れ、 いい匂いが漂ってきた。
:そろそろお肉を追加して、火が通ったら水を入れて、ニンジンとジャガイモも入れてください。
:ここでお肉なのか。
:メモメモ…。
「それでは私はニンジンをいれて…。」
『ジャガイモ入れるわね…。』
:そのまま食材が柔らかくなるまで煮込んでください。
:カレーのルーはまだなのか!
:あの茶色を早く見せてくれ~。
「…よし!柔らかくなってきたぞ。」
:それでは、チョコレート2欠片とカレールーを入れて煮込めば完成です。
:チョコレートなんかあったか?
:あれ?ルーシーちゃんが1人でチョコ食ってる!
:ほんまやw
「ん?」
コメントを見てから後ろを振り向くと、俺が鍋を煮込んでいる間にルーシーが隠れてチョコを食べていた。
それを見られたルーシーはギョッとした様子でチョコレートを咄嗟に背中に隠した。
「ルーシー…。後ろに隠したのは見えていたぞ。口をつけた部分だけ切り離してチョコを鍋に入れるんだ。」
『で、でも…。こんなに甘くておいしいチョコをカレーに入れるなんてもったいないわ!』
「ルーシーちゃん。チョコレートを入れた方が美味しいカレーになりますよ。そうですよね、視聴者の皆さん!」
:ウソじゃないよ~。
:おじさんの言う事信じてくれないの?
:ホントだよ~。
:チョコレートを入れた方がコクが出て美味しいカレーになりますよ。
『そ、そこまで言うのならしょうがないわね。本当に美味しくならなかったら怒るんだから!』
ルーシーは観念して大和にチョコを差し出した。
:ルーシーちゃん、チョロい!
:あーあ、甘いお菓子が無くなっちゃいましたね~。
:あー!チョコが~!w
『え!ちょっと待っ…。ほ、本当に美味しくなるの?視聴者の態度が急変したんだけど…。騙されたんじゃないかしら…。』
ルーシーは、ジト目でコメント欄を見ながらそう言った。
「大丈夫ですよ~。確かチョコを入れると美味しくなるってTVでも言ってましたから。」
「私も聞いたことがあるから、おそらく本当だ。」
『うーん。食べてみるまで信じられないわ。』
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
20分ほど煮込んだ後、ついにカレーが完成した。
「それじゃあ、食べてみましょう!せーの!」
「「『いただきまーす!』」」
—モグモグ…
『美味し~!チョコを入れたおかげでコクが出るって言うのは本当なのかもね。次の食事の時にもコメントで美味しいレシピを教えてもらいたいわね~。』
「そうだな。確かに美味しく仕上がってる。ルーシーの言う通り、料理を作り始める前に教えてもらうのもいいかもしれないな。」
「賛成でーす!おいしー!」
:もし俺のレシピで良ければ、またお手伝いさせていただきます。
:↑料理かなんかな?
:料理が趣味なんです。学生時代は料理人を目指しましたけど…。
:3人が美味しそうに食べてるの見てたら、俺も腹減ってきたよ。
:そういえば、ルーシーちゃんって前もカレー食べてたよな。
:ルーシーちゃんはカレー好きっと…。メモメモ。
:ルーは中辛っと…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます