第3章 ダンジョン【はいしん】

第31話 【はいしん】第1回ダンジョン配信


 買い出しを終えた次の日の早朝に、俺たち3人は探索のためにダンジョンの近くにやって来ていた。

 事前に話し合っていた、今回のダンジョン探索の目標と荷物の再確認を行うために、アイテムボックスの中身を確認しながら話し合っていた。


 「それじゃあ確認するぞ。今回の目的地は昨日話したように、私とルーシーが出会った場所だ。それと、【はいしん】の練度を上げるために、俺とルーシーは常にスキルを使った状態で探索しよう。みんなの認識もこれで大丈夫か?」


 『大丈夫よ。』


 「大丈夫です。それにしても、スキル【はいしん】がプライベート設定になっててよかったですね。お手洗いの場面が映っていなくて本当に良かったです。」


 「最初は何も知らずに使っていたからな。本当に運がよかったよ。」


 『荷物も確認完了したわ。そろそろ入りましょうか。』


 「よし、それじゃあダンジョン1階から【はいしん】を使っていくぞ。」


 「了解です。それじゃあ行きましょう!」



 そうして3人は、ダンジョン1階層に突入したのであった。




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 ダンジョン第1階層のセーフティエリアに入ったカエデは、普段よりも探索者の数が多いことに気が付いた。


 「やっぱり1階層は人が多いですね。」


 「まあ、セーフティーエリアだからな。10階層を超えていない探索者たちの唯一の安全地帯だ。俺もよく使わせてもらったよ。」


 『そのあたりも私の国のダンジョンと同じね。それじゃあ、そろそろ【はいしん】を始めましょう。』


 「そうだな。予定通り安全なうちに始めておこう。」


 『それじゃあ、行くわよ。せーのっ』



 【はいしん】【はいしん】



 大和とルーシーが同時にスキルを発動すると、待機していた視聴者たちのコメントが流れ始め、カエデは浮遊している【はいしん】カメラの前に立った。


 :はじまった!

 :ついにダンジョン配信きたー!

 :SNSから来ました!

 :待ってたで~。

 :カエデちゃんや!

 :あれ、大和ちゃんとルーシーちゃんは?

 :ここって何階層ですか?

 :タイトルが第1回ダンジョン配信になってたけど大丈夫?


 目で追えないほどの量ではないが、たくさんのコメントが流れ始めた。

 それを確認したカエデが、配信の挨拶を始めた。



 「みなさんお待たせしました!現在私たち3人はダンジョンの第1階層に来ています。それと、前回のダンジョン配信に関しては私たちが配信に気づいていなかったこともありまして、タイトルを第0回ダンジョン配信に変更させてもらいました!」


 :本当だ。今確認したらタイトル変わってた。

 :もとのタイトルは【はいしん】だったっけ。

 :そうそう。

 :はじめまして。ダンジョンに潜ったことないんですけど、今後ろに映ってる人達みたいにくつろいでも大丈夫なんですか?

 :↑ダンジョンの第1階層は、全体がセーフティエリアになってるから大丈夫。


 「あっ、コメント欄で質問に答えてくれてる人がいますね。ありがとうございます! それでは、大和さんとルーシーちゃんにも挨拶をしてもらいましょう。」


 そういって、カエデは【はいしん】カメラの前から離れ、配信に大和とルーシーも映りこむようになった。


 「えーっと、探索者の大和だ。今回は3人で正式にパーティーを組んでの探索をしていこうと思っている。コメントは余裕なければ見れないかもしれないが、よろしく頼む。」


 :大和姐さんキター!

 :あれ?髪型変わってる?

 :↑昨日の突発配信でルーシーちゃんに付けてもらったやつ

 :コメント見れなくてもええんやで

 :普通はダンジョンで配信なんてできないからな

 :初めて見たけど、背高いな。それに、本物のエルフって本当なのか?確かにすごいリアルだけど。

 :確か170cmは超えてたと思う

 :概要欄にもあるように、ダンジョンギルド公認のエルフだから本物やで。


 「えーっと、私の自己紹介はこれぐらいにして、次はルーシーだな。」


 『やっほ~。ルーシーよ。私に関しては魔法が得意ですってことぐらいかな。』


 :かわええな。

 :大和ちゃんの隣に立ってると、ちんまりして見える

 :ルーシーちゃんの魔法はすごいんだぞ

 :ルーシーちゃん抱っこしたい…

 :こんなに可愛いのにめちゃくちゃ強いんだろ…



 『小さいって言ったわね!いつも言ってるけど、私が最年長!今はこんな姿だけど、本当はヤマトと同じくらい背が高いんだから!』


 :またまた~

 :背伸びロリエルフたん

 :ルーシーちゃんは大和お姉さんみたいになりたいのね…。メモメモ…。



 コメントを見たルーシーは、顔を少し赤くして鼻息も荒くなっていたので、大和がルーシーに近づきなだめるように囁いた。



 「視聴者とじゃれあうのもそのくらいにして、そろそろ2階層に行かないか?」


 『ふー。そうね。どうも精神が体に引っ張られているのか、感情が昂ぶり安くなってるみたいね。』


 「えーっと。それじゃあ、そろそろ2階層に進みます。」


 :ついにモンスターとの戦闘ですか!

 :レッツゴー!

 :ワクワクしてきた



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 2階層に侵入すると、すぐに5mほど先にスライムを発見した。


 :あれがスライム?

 :この階層なら、動画で見たことある!

 :↑11階層くらいまでは動画になってるんだっけ?

 :初めてみたけど、結構リアルな感じだな

 :あの中心で動き回ってるのが魔石?

 :せやで


 スライムを見た大和は、歩きながらスライムに近づいて行った。


 「スライムくらいなら無視してもいいが、今回は倒しておくか!」


 —スーッ


 アイテムボックスから刀を取り出し、スライムの中心にある魔石を目掛けて突き刺し、そのまま魔石を体から取り出した。


—びちゃっ


 :おお、動き回ってた魔石を一発で突き刺した!

 :地味だけど刀の扱い方が上手い

 :綺麗なフォームだな

 :普通は体ごと叩き潰すんだけどな

 :あっけないな。スライムなら俺でも倒せそう

 :↑実際に誰でも倒せると思うけど、こんなに綺麗な倒し方はあんまり見たことない

 :初見です。ダンジョンでも配信って凄い時代になりましたね


 「スライムだと肩慣らしにもならないな。ゴブリンのいる所まで行くか。」


 『そうね。賛成よ。』


 「それじゃあ、それまではスライムは無視ですね。」




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 —ギャー!、ギャー!


 しばらく同じ階層を進んでいくと、3匹の非武装ゴブリンが現れた。


 :ゴブリンだ

 :お、初めて見たけど予想通りな形

 :まさにゴブリンって感じの見た目だなw

 :予想を裏切らないフォルム


 「やっと出てきたか。それじゃあ、頼んだぞ2人とも。」


 『もちろんよ。それじゃあ、私は右の2匹を担当させてもらうわね!』


 「了解です!」


 2人それぞれのターゲットを決めた後、最初に動いたのはカエデだった。


 片手剣を取り出し、ゴブリンに近づきながら上段からスキルを使用しながら剣を振り下ろす。



 《拡大》発動!


 カエデ専用の短い目の片手剣がゴブリンに振り下ろされる直前に巨大化し、ゴブリンを叩き潰すように切りつけた。


 :えぐ…

 :破壊力ハンパねえな…

 :カエデちゃんはパーティーのグロ担当かな…。

 :物理火力担当だろ!

 :こんなスキルあるんだ?

 :初めて見た


 —グギャ!グギャ!


 仲間が倒されたことに怒ったゴブリンは、一番背が低く弱そうに見えるルーシー目掛けて走り出した。


 『遅いわね。』



 《サンダー》

 

 ルーシーがゴブリンたちに手のひらを向けると、すぐに雷の魔法が発動し、直撃を受けたゴブリン2体はあまりの威力に黒焦げになり倒れた。


 :魔法の発動速度はやくね?

 :威力もオーバーキルすぎるて…

 :ゴブリンが消し炭に…

 :すげー

 :魔法って初めて見たけどこんな感じなんだ

 :※普通の探索者の魔法は、こんな感じじゃありません


 「2人も調子はよさそうだな。それじゃあ、どんどん進んでいこう!」


 

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