第20話

奈月と坂口は何か談笑していたが、夢は向かいの席に着いたまま俯いていた。



本人はうつむいていることも気づかないほど心臓をバクバクさせていたのだ。



(大丈夫じゃないです…!その声で耳元で…全然大丈夫じゃないです…っ!)



「…小野寺先輩?顔真っ赤ですけど?」



奈月が覗き込むと夢はハッと我に返って軽く頭を左右に振った。



「初めまして、経理部の、お、小野寺夢です。それと、これ、木本くんのです…」



夢は坂口にお辞儀をした後、慌ててランチトートからお弁当箱を1つと、ビンに入ったサラダを取り出し奈月の前に置いた。



「お口に合うか解りませんが…それでは私はこれで」



「あーっ待って待って先輩!」



去ろうとする夢を奈月が引き止める。

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