第17話 仲間探し
「シエルさん!」
ギルドマスター室から出たシエルに話しかける声があった。シエルは声の主に視線を向けた。そこにいたのは茶髪に茶目の素朴かつ物腰の柔らかい雰囲気の男だった。
「マキバさん」
自然、シエルの口からその男の名前が漏れた。シエルに話しかけた男の名は、マキバ。このギルドの職員であり、シエルの冒険者時代の顔なじみだった職員である。何度も世話になったため、マキバ相手にはシエルはつい敬語で話してしまう。
一方のマキバは名前を呼んだシエルの顔を見て、喜ばしそうな顔をした。マキバは昔から表情が豊かで、そういうところがシエルにとっても、大変話しかけやすく親しみやすいと感じるギルド職員の一人だった。
「そうだ、アニス」
「ん、何?」
シエルの呼びかけに反応するアニス。
「パーティーの仲間探しをマキバさんにお願いしないか?」
「え?」
「えぇ!? シエルさん、ダンジョン攻略に復帰なさるんですか!」
シエルの提案に首をかしげるアニス。
その一方で身体をのけぞらせ、全身を使って驚くマキバ。しかしその声は喜びの感情に満ちていて、手は興奮のためか、むすんでひらいてを繰り返している。
「いや、俺は復帰しないんですが。アニスがダンジョンに潜るって聞かないから」
「そんなぁ」
シエルの言葉に、肩を落として落胆するマキバ。見るからに残念そうに言葉を口にしている。
「え〜、シエルも一緒に潜ろうよ!」
懲りずにシエルを誘うアニス。
「何と言おうと、俺は潜らないからな」
しかし、アニスが何度言おうと、シエルの態度は変わらない。シエルはアニスの誘いを断った。
「とにかく、マキバさん。こいつのパーティーメンバー探し、お願いできますか」
「まあ、いいですよ。他ならぬ、シエルさんの頼みですから!」
任せてください、と胸を張るマキバ。その表情は、ワクワクと自信に満ちている。
「よかった。とりあえず、魔法使いは絶対頼みます。アニスは剣士なので」
「わかりました。では、こちらへ」
先導して石造りの階段を降りていくマキバ。そのままギルド本部の一階まで降りる。そして、ギルドの奥にある個人面談室まで向かった。
ギルドにある個人面談室は、主に高位冒険者の相談に使われる。この部屋に案内したのは、シエルがギルド内で好奇の視線に晒されないようにするための、マキバの気遣いだろう。
そうして、シエル、アニス、マキバの三人はギルドの個人面談室へ入っていった。
その様子を見ている影があることも知らずに。
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