16件目 夫婦みたいだと思わない?
「ふぅー、普段コンビニの弁当ばっかりだから、こういうの久しぶりです。ご馳走様でした!」
満腹になり、声を上げる。
こうやって誰かと食べるというのも久々で、なかなか楽しいものだった。
「料理はしないって言ってたものね。私のでよければ、いつでも食べに来てほしいな」
「ははは、それだったら毎日食べたいくらいですよ」
言い切ってから、自分の過ちに気がつく。
「あっ、別に変な意味じゃなくて!」
「ん、どういうこと?」
毎朝味噌汁を作ってくれ、みたいなやつだと思われるかもしれないと感じて慌てるが、里見さんは気づいていない様子だった。
告白しちゃったせいで、俺がそういうことに過剰に反応してしまっているのかもしれない。
「あっ、片付けは俺にもやらせてください。作るときは全く役に立たなかったので」
「そう?それじゃあ一緒にしよっか」
食器や鍋を運び、二人肩を並べる。
言葉を交わさずとも、二人でいるその瞬間が心地よく感じ、つい口を閉じてしまう。
そうやって食器を洗っていると、里見さんが言う。
「ねぇ、こうしてると、なんだか夫婦みたいだと思わない?」
「た、確かにそうですね」
まさか、里見さんからそんなことを言われるとは思ってもみなかった。
「……でも、好きな人いるのにそんなこと言ったらダメですよ」
「どうして…?」
「どうしてってそれは…なんて言えばいいのか…」
上手く説明できそうになく、言葉を詰まらせる。
「——私さ、恋愛経験っていうのが今まで一切なくてさ」
「そうだったんですか」
意外だと思った。けど、それ以上にどうして今そんな話を始めたのかが理解できそうになかった。
「それでね、そういう知識は偏ってるって言うか…。もしかしたら、間違ってるかもしれないんだけど、受け止めてくれる?」
洗っていた食器を優しく置き、里見さんはタオルで手を拭いた。
「ん、どうかしました?」
彼女と同じように食器を置き、手を拭いて目を合わせた途端、頬を両手で優しく挟まれる。
そして、その手で俺の顔をくいっと引き寄せた。
「えっ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます