第2話 馴れ馴れしい男

智雄は発売前の車を購入したため現車を見ていない


なので、毎週末お店に来ては営業と打ち合わせをしている


毎週、珈琲を出していた

『失礼いたします、ごゆっくりどうぞ』

『ありがとう、いただきます』の繰り返し

さすがに、顔と名前と購入車種は覚えた


ごく普通の従業員とお客さんのやりとりだと私は思っていた


ある平日であった

電話が鳴る

ワンコールで取らないと怒られるので私は電話を取るのが早かった


『あー、岩井ですけど。よかった~電話に出てくれて』

『どうかされましたか?』

『ご飯食べに行こう!何が好き?』

『あ、すみません。今日は残業するのでちょっと・・・ごめんなさい』

『そっか、じゃあまた』


ん・・・?

なんだ、なんだ?

急に馴れ馴れしい

電話だからだったのか?

少しイヤな気分だった

そして引いていた


この仕事は、『合コンしようよ~』などと言われることがよくあった

しかし、それは面と向かってで

『土日は仕事なのでムリですよ~』と断り

撃沈した男性の顔を見ていた

あ、勇気を出して言ってくれてたのかな?

でも、本当に仕事だし・・・




私は後にも先にも合コンというものに行ったことがないのである

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