使命編
天使失格
第17話
職場の空気が重くなり、天界人の「カワイイ」という囁きが聞こえ始め“おかしなこと”が起こり始めた最初の頃、私は生まれたての天使で、人々は私の前を通り過ぎる時、余分な荷物(病)が軽くなり、また荷を持たない人には荷が与えられるという、力を与えられ多くの人と出逢う事で、世界のバランスを取る役目を与えられたと感じていた。役目というより、今年は私がその当番に選ばれたという感覚ではあったが、その役目は、一日に200人を超える病を抱えた人々がやってくる、大学病院の内科外来という部署で働いている私には、“おかしなこと”が起こる前までやっていたとおり、当たり前の業務を行っていれば、おのずと果たせるものであるように感じた。ここで、働いているから選ばれた。そうも思えた。
しかし、私は役目が始まったばかりで、前線を離脱した。人と会う事が役目のはずが、仕事を休み家の中に閉じこもり、外界との接点はテレビだけ。
私は、テレビの前に座り、ニュースキャスターと対面する。キャスターは中立の立場であり、私の行動が良いとか悪いとかの判断はしないで、淡々と事実だけを報道していた。つまり、今年の天使役の当番は家にこもり、休養という名のもとに家事もせず、寝て起きて食べてまた寝るだけの生活をしていることが、視聴者に情報として筒抜けになっていると感じていた。
そうしている間に、世間では世論として「今は休養が必要な時期だ。」という容認派と、「何もしないでいるのは怠け病だ」という否定派に分かれ、意見が対立するようになっていったのだった。
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