第14話 デートの申し出
なんか最近、休み時間のたびにイワンたちが、私の座ってる席の後ろに立つようになったんだけど。
「リーシャ、明日の休日は空いているかい?
一緒に出かけないか、リーシャが気に入りそうなスポットを見つけたんだ」
爽やかスマイルでイワンが言ってきて。
「イワン殿下!デートのお誘いでしたらデートと言わなければ、乙女というのは警戒感を持つのですわよ。
と、言うわけでリーシャさん!
このわたくしと、明日のお休みはデートしましょう。
ハアハア、わたくしの部屋でずっと一緒に過ごすのです」
邪なオーラ満々でソフィアが言ってきて。
「ずっと部屋ってつまんねえだろ。
リーシャ!明日の休みは俺とずっと走り込みするぞ!
人生は体力あってこそ色んなことができるんだぜ!」
脳筋変わってね〜って感じでボリスが言ってきて。
「フッ、貴重な休日は知識を身につけるために使うべきですよ。
というわけでリーシャ・リンベル、私と明日の休日は図書館に行きませんか?」
メガネをクイッとさせてフェリクスが言ってきて。
「んなことよりリーシャ!俺を鍛えてくれ!
魔獣の森で1日過ごそうぜ!」
腕白坊主のようにユリウスが言ってきて。
「皆さん、リーシャ嬢が困ってますよ。
大体、皆さんの提案はどれもリーシャ嬢の意見が入ってないではありませんか。
僕個人の意見で言えば、リーシャ嬢の行きたい場所に連れて行ってあげたいですね」
この面子に宣戦布告するかのように、ニコライが言ってきて。
「モテモテだねえ、リーシャ。
私との友情より恋人候補を優先させるのね、グスン」
演技だと誰でもわかる棒読みでカリーナが言ってきた。
うお、これがモテモテってやつか。
経験ないから脳がフリーズしていたよ。
みんなが私に好意を寄せてくれているのは嬉しい。
けど……この中に勇者がいるのだ。
もし、この中の誰かが私を騙しているとしたらと考えてしまう。
……でも、みんなのこの優しさは本物に感じる。
どう接していけば良いのだろうって考えちゃうよ。
他の生徒たちも、好奇の目で私たちを見つめている。
まるで、私たちだけの小さな世界が、この教室の中に出来上がったかのようだった。
「あはは、みんなありがとう。
お誘いは嬉しいけど、私の身体は1つだから叶えられるのは1人だけ、かな?
私はどれでも大丈夫だよ。
ファーストキスとかなしの、健全な1日にしてくれるならだけど」
するとみんなが、それは勿論と言ってくれたのであった。
う〜ん、みんな真摯な想いで私に接してくれてるのがわかるよ。
アンゼリカちゃんの勘違いで、この中に私の命を狙う勇者なんて存在しないんじゃないかと思っちゃうぐらいに。
「こらこら〜。リーシャが選ばないと、皆様困っちゃうだろ〜」
おっと、モテモテを満喫していたら、カリーナから冷静なツッコみが入ってしまった。
たしかに、イワンの爽やかな笑顔の裏に、僅かな焦りが見えた気がした。
ソフィアの目は普段以上に輝いていて、ボリスは無意識に拳を握りしめている。
フェリクスはメガネの奥で、計算高い目が光っているようだ。
ユリウスは落ち着きなく身体を揺らし、ニコライは冷静を装いながらも、その姿勢に緊張が見て取れる。
カリーナは一見冗談めかしているようだが、その目には鋭い観察の光が宿っていた。
彼女は状況を楽しむと同時に、何かを分析しているようにも見えてしまう。
「あ、じゃあさ、明日はみんなでお出かけしない?
行きたい場所があるんだ」
「行きたい場所?興味深いね。
僕は構わないよ。みんなもいいかい?」
イワンがにこやかに告げてきて。
「致し方ありませんですわ。
リーシャさんの言葉は、どんな御神託よりも尊いのですから」
ソフィアも満更でもなさそうに納得してきて。
「しゃあねえな。
走り込みより興味あるし、俺も構わんぜ」
ボリスも賛同してくれて。
「ふ、どんな本よりも興味深いリーシャ・リンベルの行きたい場所。
しっかりと脳裏に焼き付けなくてはなりません」
フェリクスも理解をしてくれて。
「リーシャが行きたいところって、魔獣の森以外見当もつかねえな。
アレか?もっと危険な場所があるのか?」
ユリウスも興味を抱いてくれて。
「リーシャ嬢、一体どちらへ?
殿下やソフィア様を含んでの集団行動です。
護衛が必要となりますので、事前に教えてくれるとありがたいのですが」
ニコライが現実的な意見を口にしてくれる。
「私も言っていいの〜」
「うん、カリーナも来て〜」
みんな、私がどこへ連れて行こうとしてるか気になってる様子。
はっきり言おう。ノープランである。
いや、だってしょうがないじゃん。
デートなんてしたことないし、カリーナはともかく他の面子と2人っきりって、勇者が誰かを警戒する以前に怖いっていうか、何を話せば1日持つかわかんないし。
みんなは私が行きたい場所に、とても興味津々な様子だ。
この中に勇者が潜んでるなんて、とても想像できない。
「来週で授業終わって夏季休暇が始まるんだ。
みんな、僕からの提案だが、夏季休暇を利用して1人1日ずつリーシャと2人っきりにならないかい?
無論、リーシャの気持ちが最優先だけどね」
は?何を言いだしやがるイワンめ。
「殿下に賛成しますわ。
ではくじ引きで順番を決めましょう」
こらこらソフィア、話を進めるな。
「いいぜ!そこでアピールして、本気でリーシャを愛してるってのを見せつければいいんだな!」
うお、ボリスめ、直球だなあ。
「フッ、では明日がリーシャ・リンベルが何をパートナーに求めているかを知る、絶好の機会というわけですね。
私も賛成します」
メガネをクイッとしてるけど、フェリクスさあ、ズレないメガネ作ったほうがよくない?
「そうだよなあ!まずは敵情視察が大事ってわけだ!
敵を知り、己を知れば百戦危うからずってな!」
それだと、私はよくわからない謎の敵ってならないか?ユリウスよ。
「了解しました。
そこで僕も、リーシャ嬢をエスコートできる男だと証明してみせましょう」
律儀にニコライが言うけど、そこまで肩肘張らないでくれ〜。
「リーシャは夏季休暇中は実家帰るんだっけ?
私は女子寮残るから、いつでもウエルカムだぜ〜」
まあ帰るのは数日だけだろうけど。
つーかカリーナは帰らなくていいのか?
「わかった。夏季休暇の間にみんなに1日ずつね。
どうせ暇だし、それでいいよ。
じゃあ明日は、校門前で待ち合わせでいいかな?」
みんなの期待に応えたい気持ちと、少しでも真実に近づけるかもしれないという希望を抱き、提案を受け入れることにした。
その場を離れながら、私の頭の中は計画で溢れていた。
明日をどう過ごすか、そしてこの夏季休暇をどう乗り切るか。
勇者の正体を探りつつ、みんなとの関係も大切にしなければならない。
その難しさに、私は深いため息をついた。
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