第9話

あたしたちがエレベーターの中に入ると、香月さんは最上階のボタンを押した。



「あーあ。日付越えてる」



千秋は自分の腕時計をチラッと見て不満そうにそう呟いた。



「もう佑真帰って来てんのかな?駐車場にバイク無かったけど。」



「まだだろ。さっき運転中電話あったし、どっかで迎えを必要としてるんだと思う」



「アイツを甘やかすな!歩けってメールしとけ!」



「メールは面倒臭い。俺は電話しかしねぇ」



「今時メール出来ない若者なんていねぇぞ?!香月って本当にアナログな人間だな!」



「出来ねぇんじゃなくてしねぇんだよ糞餓鬼」



千秋さんと香月さんは、年は違うのにとっても仲が良いらしい。



最上階に着いてドアが開くと、二人は広い廊下をあたしを真ん中にして三列で歩き出した。



そしてたどり着いたのは一番奥のドア。



香月さんがカードキーでドアを開けて、千秋があたしの手を引っ張って家の中にズンズン入って行く。



「ただいまっ!…と」



玄関で靴を脱いで、電気を付けながら前に進んでく千秋。そしてたどり着いたのは広いリビング。



そこの真ん中に座らされたあたしは、グルリと部屋の中を見回した。

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